5月14日 その⑱
「これにて、第5ゲーム予戦『投球困窮四面楚歌』は終了です!」
マスコット先生の、大きな声が転移されて来ていたこの広大なフィールドに響き渡る。
「よっしゃ、勝ったぞぉぉぉ!」
裕翔の喜びの声が聞こえる。
「ようやったなぁ、皇斗!感謝しかできへんわ!」
半ば涙目になりながら、皇斗に感謝する津田信夫。イエローチームは、皇斗が一人で内野に残っていたのだからずっと怖かったのだろう。皇斗は、3分以上の間ボールを避け続けて、遂に勝利したのであった。本当に驚きである。
「治療も終わったし、行ってきなさい」
「あ、ありがとう。母さん」
「母さんじゃなくて、マス美先生としての仕事よ。べ、別にアンタの為なんじゃないんだからね!」
「母親にツンデレ属性は不必要だよ...」
「皆さん、集まってくださーい!」
マスコット先生に招集されて、俺達は集合する。マスコット先生は、内野の中心であったところに立っている。
「第5ゲームの予戦『投球困窮四面楚歌』が終了しました。これにより、第5ゲーム本戦『キャッチ・ザ・リスク』に参加する人物が決定しました!」
『投球困窮四面楚歌』のルール9:勝利条件は、チームの誰かが「内野」でいること───が適用されるために、第5ゲーム本戦に参加するのは、今回ブルーチームとホワイトチームであった計16人であった。
橋本遥は、学校に来ていないので計15人と言ってもいいのだろう。だが、彼女の分もしっかりデスゲームの人数に組み込まれていた。
───と、計16人と言われても、誰だかわからないだろうから、名前を羅列しておこう。
安土鈴華・安倍健吾・池本栄・奥田美緒・菊池梨央・斉藤紬・園田茉裕・田口真紀・竹原美玲・西森純介・橋本遥・細田歌穂・三橋明里・村田智恵・山田稜・綿野沙紀
この16人が、第5ゲーム本戦に出場する人物だった。
「これで、俺達はもう終わりか?」
そう質問するのは、康太であった。
「はい、そうです。皆さんは本戦には出場せずに、デスゲームの傍観者として試合を見ていてもらいます。きっと、楽しめると思いますよ?」
「デスゲームを見ているのは、第4ゲームのこともあるし、一概に楽しいと言えないと思うのだが...まぁ、いい。しっかりと見届けることにします」
「是非ともそうしてください。そして、死なない───という安心感を、しっかりと味わってくださいね」
マスコット先生の、被り物の口角があがる。第5ゲーム本戦『キャッチ・ザ・リスク』はどんなゲームなのだろうか。
「とりあえず、ここから教室に戻りましょうか。本戦はグラウンドで行う予定ですし」
予戦で使用しなかったグラウンドは、本戦で使うつもりだったようだ。だから、予戦ではこの空間を使用したのか───などと、一人で勝手に納得していた。
「それでは、教室に戻りますよ!」
マスコット先生の掛け声と同時に、俺達は教室に転移して戻ってきた。
「いやぁ...勝ててよかったよ」
そう言って、髪を自分の手で翻すのは、雷人であった。彼は、レッドチームに所属してついに最後まで生き残ったのであった。
「はい、皆さん!勝利に浸るのは構いませんが、本戦に出場する人がいることも忘れずに!あまり、勝利を自慢していると後に刺されますよ!」
マスコット先生の忠告。皆、賢いのでその言葉に耳を傾けて静かにするのであった。
───いや、正確には全員じゃなかった。
「栄きゅん、聞いて欲しいピョン!僕、しっかり予選で生き残れたピョン!栄はどうだったピョン?」
腹黒クソウサギこと、宇佐見蒼は、俺に対して煽ってきた。まぁ、別に相手にする意味はない。
「あれれぇ〜?どうして無視するピョン?もしかして、ぐうの音も出ないピョン?まぁ、栄きゅんは負けちゃったから、しょうがないことピョンねぇ?」
そう言って、俺の後ろからジャンプして背中に乗ってくる蒼。俺は、蒼をおんぶするような態勢になっていた。
「栄きゅんは、第5ゲームで彼女と一緒に心中するのがオススメピョン!」
「───ッ!この、クソガキがッ!」
俺が、背中にいる蒼を取っ捕まえようとすると、俺の背中を踏み台にして蒼は避けていった。
「栄きゅん、残念だピョン!僕のことは捕まえられないピョーン!」
「鬱陶しいな...蒼め...」
「栄、相手にしちゃダメだよ」
「あぁ、わかってるよ。蒼が煽ってくるのは、いつものことだからな」
「ふんふふーん」
ムカつく鼻歌を歌っている蒼。アイツの煽りだけで、ライ◯スタンプが作れそうだった。しかも、無駄にビジュはいいから、実写のスタンプになりそうだ。
───って、よくわからない例えはおいておいて。
「はいはい!皆さん、静粛に!第5ゲーム本戦の会場にもなるグラウンドに行きますよ!」
マスコット先生の言葉に従って、俺達はグラウンドに向かった。
そのグラウンドの中央に、先程よりも一回りくらい大きな、今度は普通のドッジボールを行うとのと同じ形の───文字で表すなら「日」の形をしたコートが用意されていたのであった。