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5月14日 その⑰

 

 俺達が所属するブルーチームが第5ゲーム予戦『投球困窮四面楚歌』に敗退した現在、俺達はボールを持って、誰かをアウトにする意味なんかないので、ただ少し離れたところからボールの投げ合いを見ているだけだった。


 第5ゲーム本戦の参加が確定してしまった今、俺が最優先にするべきことは両方の掌が火傷したかのようになっているところだろう。球技大会なのならば、ほぼ確実にボールを使うはずだった。

 こんな手で、球技ができるとは思えなかった。サッカーであればまだ戦えるかもしれないけれど『キャッチ・ザ・リスク』という名前から、ボールを蹴って行うサッカーは連想できなかった。


「栄。手、大丈夫?」

「───んぁ、って、母さん?」

 そこにいたのは、マス美先生───俺の本当の母さんだった。


「あら、痛そう...消毒しちゃうからちょっと待っててね」

「う、うん。ありがとう...」

「マス美先生、どうしてここにいるんですか?」

 美緒は、マス美先生にそんな質問をする。


「自分の息子が怪我してるのに、駆けつけない親がいるものですか!」

「え...えぇぇぇぇぇぇぇ?!?!?!」


 第5ゲーム予戦中に響く美緒の驚きの声。俺は、ブルーチームだった7人に俺の両親のことを説明した。

「栄のお母さん、まさか保健室にいたとは...」

「すごいねー!」

「栄、よかったね。両親が見つかって」

 健吾・紬・智恵が口々に物を言う。


「アナタが智恵さんね?いつも息子がお世話になってますー」

「母さん...」

 マス美先生こと、俺の母さんは、マスコット先生と同じく被り物をつけているので顔は見えない。でも俺の母さんは、俺を智恵ではなく、両親が森グループの社長であり尚且つデスゲームの運営として関係している森愛香と付き合わせようとしているので、智恵のことは睨んでいるだろう。


 母さんが、俺と愛香をくっつけようとしているのは、お金のことやデスゲームのことが当てはまるだろう。デスゲームの運営に関連するを一つの家系にしようとでもしているのだろうか。

 まぁ、そんな策謀に俺が加担させられる必要はない。俺の恋人は智恵だし、俺は智恵と結婚するつもりだった。


 まぁ、死亡フラグになってしまいそうなので結婚云々の話を口に出したことは無いのだけれど。


「───って、母さん。どうしてここに?」

「あ、そうそう。栄の手の治療だったわね。忘れてた忘れてた」

「一番大事なところじゃないか...」

 ポンコツ───いや、きっとポンコツなふりをしているだけであろう母さんのことを、若干呆れたような目で見ながら両手の治療を受ける。


「第5ゲームもあるから、動きやすい方がいいわよね」

 第3ゲームの廣井兄弟との戦いの後もそうだったように、最新鋭の精密機器は揃っていても、最終的には自然治癒に任されているのだ。デスゲームの運営をしていようと、ファンタジーにある魔法のような回復だったりは起こり得ないのであった。


 いや、俺も漫画の読みすぎて魔法を信じている───なんて訳では無かったけれど、デスゲームの運営が、マスコット先生が持つ非現実的な力を見ていると、途端に回復するのもおかしくないように思えてくるのだ。


 なんでもできるようで、制限のあるデスゲーム運営の持つ技術力のことを考えつつ、俺は治療を受けていた。

「あ、イエローチームが」

 もちろん、俺達は敗退しようと第5ゲームの予戦は続行している。


 残っているレッドチームとイエローチームが、戦い合っていたようだった。ボールを故意に30秒以上持っていけないというルールがある以上、試合を時間制限まで続行しなければならない彼らは、少し大変そうだった。


 俺が、イエローチーム内野の方を見てみると、そこに残っていたのは皇斗一人だけだった。レッドチームの外野───秋元梨花・宇佐見蒼・柏木拓人・佐倉美沙・杉田雷人・中村康太・渡邊裕翔の7人───要するに、レッドチームの内野にいる結城奏汰以外の全員が、イエローチームの四方を囲んでボールを投げていたのであった。


「レッドチームも、賭けに出たなぁ...」

 皇斗を潰すために、レッドチームの全員を外野に排出させた。これで、レッドチームの外野がボールを当てなければ、試合終了まで、奏汰だけがレッドチームの内野となってしまうこととなる。


 要するに、皇斗がアウトになった後も時間は続くのだから、道連れということでボールを投げられてしまう可能性がある───ということだった。


 故意に30秒以上ボールを保持することも不可能なので、ボールがコート内を動くためにかなり面倒なことになりそうだった。

 俺達ブルーチームや、ホワイトチームは別に他のチームを道連れにしようとは思っていなかったので、ただ試合を傍観しているだけなのである。


 まだ、俺達だって第5ゲームの予戦には参加している状態なのであった。


 ───と、話を戻すが皇斗はイエローチームの内野で一人だけ残っていた。


 レッドチームの外野が皇斗にボールを当てようとボールを何回も投げているが、どれもこれも皇斗に避けられてしまっていた。


 そして───




「試合終了です!!!」

 マスコット先生の声が響く。結果として、皇斗は3分以上も一人でレッドチームの猛攻を耐え凌ぐことに成功して、レッドチーム及びイエローチームのメンバーは、第5ゲーム本戦へ参加することは無くなったのであった。


 ───もうすぐ、第5ゲーム本戦が開始する。これは、確定事項だった。




 第5ゲーム本戦『キャッチ・ザ・リスク』参加者

 安土鈴華・安倍健吾・池本栄・奥田美緒・菊池梨央・斉藤紬・園田茉裕・田口真紀・竹原美玲・西森純介・橋本遥・細田歌穂・三橋明里・村田智恵・山田稜・綿野沙紀

第5ゲーム予戦『投球困窮四面楚歌』終了!!!


皇斗が凄いのはもうご存知の通りだと思うので、ボールを避けるのは全カットです。

ちなみに、皇斗は3分間で約150回の投球を避けきりました。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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