5月14日 その⑤
ルール説明回その②です。
「それでは、外野も決まりましたしそろそろゲームを───」
「先生、あの...ごめんなさい。ゲームのルールを把握できてません...」
そう言って、恥ずかしそうに手を挙げるのは俺と同じチームである智恵であった。
「ルールが理解できていない?皆は、できていますよね?」
マスコット先生が周りを見渡すも、自信有りげに頷くような人物はいなかった。
もちろん、森宮皇斗などは完璧に理解しているのだろうけれど、細かいルール説明を期待しているのか、頷きはしていないようだった。どうやら、他の理解しているであろう人物も同様の企みがありそうだった。
「皆、理解してないんですか?それじゃ、困りますねぇ...しょうがない。1から10まで実践しつつ説明しましょう!まぁ、ルールは15までですけれど」
どうやら、マスコット先生直々に解説してくれるようだった。これは、俺にとってもありがたい。
「まず、ルール1:このゲームを行う際は、4チームに分かれる───は、大丈夫ですね?皆さん、前日に分かれていただきました。ルール2:ゲームは、『田』の形となるような4つの正方形が組み合わさり大きな正方形となるような形のコートとする───も、大丈夫だと思います。このコートは上から見たら田んぼの田のような形をしていますからね」
上から見たら、こうなっているだろう。実際は、黒線ではなく石灰で書かれたであろう白線なのだが。
「そしてルール3:ゲームの時間は25分で1ゲームのみ行われる───は、今回のゲームの時間制限です。まぁ、スポーツと同じく時間制だと思ってくださいね。ルール4:小さな正方形の中にいる人物を『内野』と、外にいる人物を『外野』と呼称する───というのは、内野と外野の定義になっています。まぁ、ドッジボールを一度でもやったことがあれば、わかる名称ですね」
マスコット先生は、どんど説明をしてくれる。
「ルール5:『内野』にいる人物が敵チームの『内野』及び『外野』にいる人物にボールを当てられるとその人物を『外野』に移動することになる。尚、当たるの定義は、ボールが地面に付かない間に、人物に接触したこととする。故に、一度バウンドしたボールに接触したり、ボールに当たった後に別の人物がキャッチした場合は『外野』に移動しなくてもよい───というのは、要するに自分以外のチームが投げたボールに当たっちゃ駄目だよってことです。ちょっと、池本栄君お手伝いを」
イエローチームの陣地にいるマスコット先生が、俺を呼び寄せる。
「私と池本栄君が別々のチームだとします。池本栄君、避けないでくださいね」
「はい」
直後、マスコット先生が軽くボールを投げる。俺の体に当たってコロコロと転がる。
「この場合は、もちろんアウトです。私が外野にいても同じですね。でも、私もブルーチーム───要するに、池本栄君と同じチームであれば池本栄君はアウトにはなりません。要するに、仲間討ちはできないってことです。他にも、アウトにならない場合もあります。池本栄君、ボールを」
俺は、マスコット先生に向けてボールを投げる。マスコット先生は、それを片手でキャッチした。そして───
「まず、この場合はアウトになりません」
その直後、マスコット先生は強く地面に叩きつけた。そして、そのボールが俺の体に当たる。別に、痛くはなかった。
「バウンドしているのでセーフです。次は、バウンドせずに当てるので、誰かキャッチしてあげてください」
俺は、マスコット先生にボールを投げ返す。マスコット先生はキャッチしたボールを、再度俺の方へ投げてきた。俺の体に当たった後に、それを稜がキャッチする。
「チームの誰かがキャッチした場合でもセーフになります」
まぁ、ここらへんはドッジボールと一緒だろう。正直、詳しい説明は不必要だ。
「さて、次はルール6:『外野』にいる人物は、『内野』以外の場所は好きなように移動することができる───というものです。これは、外野はどこでも動けるってことだけですね。ドッジボールなら、自分のチームの後ろにはいけませんが、このゲームはどこでも動けます。そしてルール7:『外野』にいる人物が敵チームにボールを当てれば、自分のチームの『内野』に復帰することができる───というのはドッジボールと同じルールですね」
相手を外野に引きずり込めば、自分は内野に戻ることができる。大体は、そういうことだろう。
「今回のゲームの醍醐味はここ、ルール8:1つのチームのメンバーが全員『外野』に移動した場合、その人物の正方形は『外野』が侵入することが可能となる。メンバー全員が『外野』に移動した場合は、『内野』の人物を当てたとしても『内野』に戻ることは不可能となる───でしょう。要するに、内野がいなくなったチームの陣地は、もう外野に飲み込まれてしまいます。例えば、イエローチームの内野がいなくなれば、こうなるのです」
要するに、そのチームの内野がいなくなれば、外野の侵食できるところが増える───ということだろう。そうすれば、かなり作戦の幅も増える。
「ルール9:勝利条件は、チームの誰かが『内野』でいること───が、基本的な勝利条件です。第5ゲーム予戦『投球困窮四面楚歌』は個人戦ではなく、協力戦ですね。しかし、ルール10:もし、全チーム『内野』が一人でも存在していた場合は、『外野』にいた人物全員が敗北となる───がありますので、必ずしも『内野』がいれば安心───というわけではございません。どこか別のチームを潰せば安心でしょうけれどね」
このゲームの問題はこの勝利条件だろう。ここが肝になる。一つのチームが潰されれば、作戦も変動するだろう。まぁ、今はマスコット先生の解説に集中しよう。
「続いてルール11:敗北したら、第5ゲーム本戦への参加が決定する。これは、前々から言っていましたし。特にありません。そしてルール12:試合開始時に、『外野』は最低1人・『内野』は最低4人必要───も、今決めていただきましたから語りませんよ」
ここらへんは、もう既に行ったり説明されたものが多い。だから、気にしなくてもいいだろう。
「今回のゲームを難解にしているであろうルール12:『内野』がボールを取る際、自分の領土より外に触れた後にボールに触れた場合はボールの所有権を無くすが、ボールに触れた後に自分の領土の外に触れた時はボールの所有権を有することとする───は、ほとんど気にしなくていいです。ボール取る時に、自分の領土の外に触れてからボールを取ったら駄目だよっていう意味です。まぁ、線引してあるので気をつけてくださいね」
ここは、ハンドボールとかとも一緒だろう。ハンドボールでは、ゴールエリア内に入るとラインクロスという反則になってしまう。ボールを投げてから侵入はいいけど、侵入してからボールを投げる───みたいな感じだろう。今回は、その「投げる」を「キャッチする」と言い換えればいいはずだった。
要するに、ボールをキャッチしてから侵入はいいけど、侵入してからボールをキャッチするのは駄目ということだ。
「ルール14:ボールは、最初に触れた人が30秒以内に必ず投げることとする。30秒以上故意に保有していた場合は、死亡とする───は、ボールを触れた人が投げるというルールです。タイマーはこちらで測っておきますので気をつけてくださいね。最後のルール15:顔面に当たった場合は例外的に『外野』への移動はしなくていいこととする───ってのは、要するに顔面セーフというやつです。顔を狙っても意味はありません」
そんなこんなで、マスコット先生のルールの振り返りを終えた。
「村田智恵さん、理解できましたか?」
「は、はい。時間を取っていただいてありがとうございます」
「平等で無くなるのは嫌なのでね。それでは、そろそろゲームを始めましょう」
───こうして、ルールの説明の補足を終えた。数十秒もすれば、ゲームが開始するだろう。
わからなければ、感想で聞いてください。解説します。