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5月14日 その②

 

 村田智恵も所属しているチームFのとある個室。その部屋にて、ため息をついているのは一人の少女だった。


「今日は球技かぁ...前から苦手なんだよなぁ...」

 そう言って、その少女は手をグーパーしていた。彼女の、ほとんど力の入らない手は、ボールを握ることさえも制限されるような───嘘偽り無く、文字通りの意味で箸より重いものは握れないような非力なものだった。


 その彼女の名は───。


 ***


 ───俺は、智恵と楽しいお話を終えた後に、朝の身支度を終えて定刻通り3人と一緒に学校に向かう。


 もう1ヶ月と半分も過ぎていれば慣れてしまった。

 皆、1ヶ月以上禁止行為を犯さずに行動しているのはかなり素晴らしいことだろう。


 何がトリガーで死亡するかもわからないのに、その禁止行為を犯さずに生きているのだから褒められてもいいことだろう。


 ───と、こんな前置きをしたようじゃあ、今日誰かが禁止行為で死亡してしまいそうな、フラグになってしまいそうだった。


 俺達は、教室に入る。教室にいたのは、体操服を着た康太達だった。この高校の体操服なんて初めて見た。

 俺は、こんな体操服買った覚えはない。今着ている制服は、無料で家まで郵送されたものだった。

「あ、栄。おはよう」

「おはよう。体操服なんて、あったの?」


「さっき教室にマスコット先生が着て、俺達に渡してくれたんだ。梨花さんとかは今、女子トイレで体操服に着替えているよ。栄達のは...マスコット先生がまだ持ってるんじゃないかな。教室に来るまで待っていれば?」

「あぁ、そうだな」


 めちゃくちゃ説明口調で康太が話してくれた。教室で、他に体操服を着ていたのは宇佐見蒼や柏木拓人に加えて、杉田雷人と結城奏汰、そして渡邊裕翔であった。

 どうやら、レッドチームのメンバーはもう集まっていたようだった。ルールはわかっていないが、作戦会議でもしていたのだろうか。


 ───と、その後に皆やって来た。


 もう津田信夫などは黄色いハチマキを付けて学校に来ていた。俺達は、青いハチマキをブレザーのポケットに入れていた。まぁ、早く付けているからっていいものはないからね。


 そして───


「押忍!!!!」

 そう言って、教室に入ってきたのは黒い学ランを着て頭に真っ黒いハチマキを巻いているマスコット先生であった。マスコット先生の瞳は、炎が靡いているという特別仕様でできていた。


 挨拶といい、格好と言い「熱血」という印象が強かった。


「皆さん!!!元気ですか!!!!」

 ビックリマークが多いし、かなり声も大きい。熱血キャラってのは、声がでかいってのはステレオタイプ過ぎではないか、などと思いつつマスコット先生のことを見る。これが実の父親だとは思いたくない。


「皆さん!!!元気ですか!!!!」

 俺達がマスコット先生を無視していると、もう一度聞いてくる。

「「「げ、元気でーす」」」


「元気が足りなーーーーーい!!!!もう一回だ!!!!皆さん!!!元気ですか!!!!」

「「「元気でーす!!」」」


「ハーハッハッハッハッ!!!元気ならばそれでいい!!!元気であることこそが一番だ!!!本日は、第5ゲーム『投球困窮四面楚歌』だ!!!お前らぁ!!!覚悟、できてんのかぁ!!!!」

「「「お、応!!!」」」


 マスコット先生は、かなりうるさい。まぁ、どうせ何を言っても聞きやしないから静かに従っておこう。

「はい。もう飽きました。普通に戻りますね」


 そう言って、瞳の炎を手でパンパンと叩いて消すマスコット先生。これまでの茶番は一体全体何だったんだ。

「別に、暑苦しい性格でもよかったのですが、こっちも疲れますし。球技大会だからって、社会科の先生が体育科の先生になるわけじゃないですしね」

「それで、今日のデスゲームなんですけど...」

「あぁ、すみません。勿体ぶらずルールを説明しろって感じですよね。もう、このホームルームを終わらせ次第、デスゲームに入ろうと思うのです───が」


 マスコット先生が入れる逆接。


「中村康太君や宇佐見蒼君などを見てくれればわかるのですが、体操服を着ていますよね。球技大会なのだから、皆さんにも体操服位は配ろうと思い」

 そう言って、皆に体操服を配り始めるマスコット先生。


「サイズなどは、事前にこちらで把握していますので大丈夫です。男子はこの教室で。女子は隣の教室で着替えてもらえると嬉しいです」

 そんなことを言われて、配られた女子から順々に教室を出ていく。


 ───と、本当に今気付いたのだが、これまで学校を休んでいた佐倉美沙が学校に来ていた。


 まぁ、美沙は第3ゲームの裏で繰り広げられた『真の鬼ごっこ』での事件が理由に男性不信になってしまったので、俺は声にかけにいかないけれど。


 俺達は、女子が全員出た後に着替えを始めた。本当に、体操服が俺の丈にピッタリである。

 制服もそうだが、採寸していないのにピッタリのが届くのは普通におかしい。


 もしかしたら、寝ている間に測られたりしていたのかもしれない。そうなると、かなり怖いことになってしまうだろう。


 ───と、そんなこんなで俺達の服を制服から体操服にチェンジして、女子も教室に戻ってきたところで、ついに第5ゲームの予戦『投球困窮四面楚歌』のルールが発表されるのであった。

女子陣には、皆さんの頭に浮かぶ体操服を着せてあげてください。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
[良い点] 流石、マスコット先生。 飽きるのが早い。 それと体操着、球技大会っぽくなってきましたね!
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