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5月14日 その①

 

 明朝。


 俺は、いつも通り5時半に目が覚めて布団から出る。デスゲームがある日に、大きな出来事が集中しすぎているので、デスゲームがない1週間の前半は、ほとんど語るべきものがない。

 クラスで授業が行われれば授業風景などを駄弁して、なんとか間をもたせることもできたかもしれないが、悲しいことにこの学校で、通常の授業は行われない。


 通学の時間は、好きな実験をやったり図書室で勉強したり───だとかなのだ。

 俺は、智恵と一緒に勉強等をしているが、そんなイチャイチャに興味がある人はいないだろう。俺も、正直言って恥ずかしいから自慢するかのように伝えようとは思わない。


 ───と、どこか主観のようなものが混ざり込んでしまった。


 兎にも角にも、本日5月14日は第5ゲーム予戦『投球困窮四面楚歌』及び本戦『キャッチ・ザ・リスク』が行われることになる。

 今のところ、過去の生徒会の介入の予兆は感じられないが、今回は生徒同士での争いとなるのだろうか。


 もし、そうだとしたら第2ゲーム『スクールダウト』の本戦の間のように、裏で活躍されるようなことは無いことを願いたい。

 まぁ、そもそも『投球困窮四面楚歌』はどのようなゲームかわかっていない。マスコット先生が、俺達のことを4チームに分けていたが、情報はそれ以外にはない。


 球技大会だし「投球」と言われているから、少なくともボールが使うのは間違いないだろう。だが「困窮」と「四面楚歌」もわからない。


 いや、意味自体はわかっているのだが何が「困窮」してどう「四面楚歌」のような状態に陥るのだろうかは予想できない。

 そんなことを思いつつ、俺は少し身支度をして外に出た。もちろん、智恵に会うためである。


 俺が、家を出るとそこには智恵がいた。

「あ、栄。おはよう!」

「智恵、おはよう」

 俺は、玄関の扉を後ろ手で閉めて智恵の方へ歩みを進める。


「今日は一緒に、頑張ろうね!」

「あぁ、もちろんだ。頑張ろうな」

 俺は、智恵と同じチームだから共闘することが可能なのだ。今回、生徒同士の試合であるならば、敵には森宮皇斗だったり、康太だったりがいる。

 他にも、運動神経がいい人が多くいるのはわかっているから、油断は禁物だ。


 いや、そもそもデスゲームで油断はしてはいけない。それに、予戦と本戦で分かれているからと言って、予戦では「絶対に死なない」という確証はどこにも存在していない。


「そうだ。話してなかったんだけど...」

「───なんだ?」

 俺は、智恵から靫蔓に連れ攫われていた時の話を聞いた。


 どうやら、靫蔓は智恵を誘拐した後に、智恵の身柄を深海ケ原牡丹(しんかいがはらぼたん)という「トン」と「ツー」の、モールス信号で会話をしている女性に任せられたらしかった。


 そして、柊紫陽花(ひいらぎあじさい)という少しだけ我儘が緩和した森愛香のような性格の女性と一緒にいたようだった。その他に、九条撫子(くじょうなでしこ)という女性の名前も出てきてはいたらしいが、その姿は見ていないようだった。


「それで、えっと、私が連れて行かれたところは、なんというか、現実っぽく無かったんだ。連れて行かれる時に、ワープみたいなのをしてきたみたいにさ、なんか異空間って言えるようなところで」

「異空間───か」


 俺が思い出すのは、第4ゲーム2回戦の途中での、細田歌穂のセリフであった。

 {なんか、水晶から覗くみたいな...地図を見てるときのようなそんな感じで。3次元の映像が見えたよ}


 これもまた、智恵の言う「異空間」に関連するのだろうか。もしするのだとしたら、少し大きな一歩になりそうだ。

「問題は、その異空間がどこにあるか、だよな...」


 俺達がいるこの場所は、宿のすぐ後ろにはもう「道」がなく奈落になっている。俺達は、まるで雲の上にある断絶された土地に住んでいるかのようだった。

 こんな場所を用意することなんて、少なくとも地球ではできない。


 いや、全人類が───いや、正確には俺の父さん以外の人類がこの場所を見つけられなければ、地球でデスゲームを行うことも可能だろう。

 だが、父さんが見つけられて他の人類がこの何万年もの続いた人類史で見つけられないわけ無いだろう。


 それに、これだけ高いのであれば目立つはずだった。ならば───


「───このデスゲーム会場は、異世界───とまでは言わなくても、異空間にあるんじゃないかな」

 俺は、それを「冗談」ではなく「事実」だと思い込みながらそう述べた。実際に、ここが異空間でも、マスコット先生の、GMの持つハイテクな何かであれば納得がいく。


 もしかしたら、VRのような空間なのかもしれない。俺達は、コールドスリープをしていて意識だけはあり、それにより体を上手く動かせている───みたいな。

 どこか、SFのような世界観になってしまうだろうか。


「ここも異空間かぁ...でも、日本じゃないのは確かだよね。こんなに高い場所はなさそうだもん」

「そうだね」


 ───まだ、村田智恵が行ったところが四次元であるということを池本栄は知らないし、想像もしないだろう。


 彼は、「三次元」に貼り付けられているのだから。彼は自分の人生が小説や漫画などの物語ではなく、「現実」だと認識しているのだから。

俺達が生きているこの現実も何かの物語なのかもしれない。

皆には理解してもらえないこの考え。理解してくれる人はいるのでしょうか。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
[良い点] 成る程、四次元か。 それなら流石の栄も気付きませんよね。 でもどういう仕組みなのかは気になります。
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