閑話 松阪マリンの過去
【推奨】この話のみ、画面右上にある「表示調整」のブラックモードにすることをオススメします。
松阪マリン───私は、人の機微が読み取れた。
───なんて、始めても私とは「初めましてで、どなた様ですか?」なんて状態になってる人がいるかもしれない。一応、第5回デスゲームにおいての、私の仕事ぶりをザッと確認しておこう。
私は、4月1日から始まった第5回デスゲームのチュートリアルとして「死ぬ」役割を与えられた。
まぁ、実際は死にはせず死んだふりをする───という役割なのだけれど。
チュートリアル的に死んだ後に、私は第5回デスゲームの生徒会メンバーと一緒に、少しの時間だけだが共に行動したりしていた。まぁ、死んでいたので姿を見えないようにしてもらっていたのだが。
そして、時は1ヶ月ほど流れて第4ゲーム『分離戦択』の4回戦『限界ババ抜き』にて、純介と健吾の相手をして、見るも無惨に敗北したのがこの私、松阪マリンである。
まぁ、「純介にコテンパンにやられた人ね」って認識で間違っていない。
───と、私のデスゲームの活躍のお話はここらへんで終わりにして。
今から話そうと思っているのは、私の昔のお話───靫蔓先輩風に言うのであれば、過去回想であった。
別に、過去回想と言っていいほど私の昔は素晴らしい物語ではないのだけれど、靫蔓先輩が言うには、「昔の話をする時や、走馬灯を見るときってのは漫画の外枠が黒くなって、それは全部過去回想」らしいので、私のこれからする話は過去回想らしい。
ということで、過去回想だ。
私は、冒頭でも言った通り、人の機微を読み取れることができた。
まぁ、簡単に言うとするならば「人の感情が読み取れる」だろう。これを、これ以降は「能力」と呼ぶことにする。
人の表情・筋肉・癖や行動などから大体その人が今現在抱いている感情がわかったのであった。もっとも、読み取れないような人物もこれまで何人も出会ってきたことがあるが。
まぁ、難しいことは考えずに「松阪マリンは人の感情がわかる」と捉えてもらえさえすれば大丈夫だ。
にしても、この人の感情がわかる能力というのは、利点よりも欠点の方が多かったのだ。
何にせよ、相手が自分に持っている不満や嫉妬などがわかるのだから。わかってしまうのだから。
私のその能力は、絶対音感のようにオンオフができなかった。よって、どんなときでも相手はどんな感情を抱いていて、大体どんな思考をしている───などとわかってしまうのであった。
友達と話しているときだって、相手が私に嫉妬していたり何か悪いことを思っていたり隠していたりすることがわかってしまうのだ。
もちろん、そんなところに友情なんて芽生えないだろう。
また、学校で孤立しても皆から冷たい視線を向けられるのはわかっていたので、私は不登校気味になっていた。
怖かったのだ。人から蔑まれるのが。ならば、人には会いたくなかった。
───が、私に帝国大学附属高校の、デスゲームへの勧誘が来た高校2年生の秋。
私は、それに応募してみた。天才達ならば、私と似たような能力を持っている人がいるかもしれない。もしくは、私の能力を無くしてくれる人と出会えるかもしれない。能力を理解してくれる人がいるかもしれない。
私は、そんなことを考えて勇気を出して応募して、学校へ通うことになったのであった。
そこでは、私と同じく、生まれつき何かが優れている人物たちが多くいた。例を挙げるなら、飛騨サンタマリアや神戸トウトバンダーなどだ。
また、同じく生徒会であった田中・コロッセオ・太郎も外見からはわかりずらいが、能力があったようだった。
人の感情がわかる私は、生徒会にてかなり有用だった。誰が、誰に疑いをかけている───などが一目でわかったのだ。だから、私はその能力を利用して生徒会メンバー誰一人欠けることなく第4回デスゲームを生き延びた。
───まぁ、その後の第5回デスゲームにて全員が死亡という運命を辿るのだけれど。
後悔───というか、心残りがあるとするのならば、最後に戦った純介のことであった。
私には、彼の心が読めなかった。その腹の中で何を企んでいるのか、私にはわからなかった。
全く非科学的なことであり、根拠というものもまったくないのだけれど、私は純介に悪魔が取り憑いているのではないかと思えていた。
でなければ、ジョーカー4枚を手元に集めるという所業は「豪運」だけじゃ説明がつかない。
西森純介は、要注意人物だ。