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5月8日 その④

 

 俺は、父親であるマスコット先生こと、本名池本朗と対面する。父さんは、従来通りマスコット先生の被り物をしていた。


「父さん、俺と2人きりなのであればその被り物を外してくれないか?もう、正体はバレているんだし」

「いえ、それは...」


「こちらは顔を晒しているのに、そっちは被り物をしているのは、かなり()()()()とは思わないのか?デスゲームが理不尽なのはわかっているが、親子で話し合う時に不平等や理不尽があっていいのか?」

「別に、言い返せるのですが...まぁ、いいでしょう。そこまで言うのなら外しますよ」


 そう言って、被り物を外すマスコット先生。そこには、デスゲームが始まって2度か3度見たことのある顔があった。


 これが、自分の父親かと言われれば、納得できるよなできないような、独特な感情があった。


「どうしました?私の顔をそんなにジロジロ見て。村田智恵さんに浮気だって、怒られたりしませんか?」

「ほぼ初対面の父親の顔をしっかり見れる時が来たら、それはジロジロ見るだろうよ!」

 なんだか、言葉の使い方がマスコット先生と同じなので、自分の父親だと言われてもあまりすんなり受け入れてくれない。


 目の前にいるマスコット先生と、浩一おじさんが血が繋がっているとは考えられなかった。

 浩一おじさんは、おふざけをしない性格だった。まぁ、少し抜けているところはあったのだけれど。


 マスコット先生こと、俺の父親はジョークを言ったりおふざけが過ぎているのは「抜けている」や「天然」でまとめられない何かがあった。

 そして、俺もこんなにふざけている人物が父親だとは、正直思えなかった。もしかしたら、嘘をついているのかもしれない。


「なんですか、その顔は?───って、心を読ませて頂きます。ふむふむ、お父さんがこんなにイケメンだったなんて!って、考えて───」

「───考えていませんよ!そのふざけた性格で、本当に浩一おじさんや俺と血が繋がっているかどうか考えていたんです!」


「あぁ...そういうことですか。確かに、私はおふざけが過ぎますね。それでも、私は池本栄君の父親ですよ」

 本能的に家族だとわかる───とか、言動が似ているなどという共通点は見受けられなかったが、マスコット先生のことを信じるのであれば、ライバルであった靫蔓のことを信じるのであれば、マスコット先生は俺の父親なのだ。


 死の間際に、靫蔓がくだらない嘘をつく可能性はないし、「マスコット先生は俺の父親」などと言った刹那、マスコット先生が靫蔓を銃殺したことも、俺の父親がマスコット先生で無ければ説明がつかない。


 嘘なら、笑ってそのまま放置していればいいのだ。いや、マスコット先生だからあえて早めに殺害して()()()()()()()()()可能性もあるが、疑い続けてしまっていては、終わりがなくなってしまう。


「私はアナタの父親。信じられないなら、池本栄君しか知らないことを当ててみます。何か説明してみてくださいよ」

「それは、未来から来た自分を当てる方法では?」

「いいから、質問してみてください」


「じゃあ、俺の中学生の頃の好きな人」

「知りません」

「知らないのかよ!疑いが深まった一方ですよ?」


「ですが、言ったところでどこで調べたんだとか疑いますよね?」

「それはそうですけど...どうせ、知らないでしょう?」

「はい、知りませんし興味もございません」

「質問しろと言ったのはそっちでしょうよ...」


 なんだか、こんな会話をしているとマスコット先生が、実は実の親じゃないのではないかと疑うのも馬鹿馬鹿しくなってきた。

 もう、マスコット先生は自分の父親だと信じてしまってもいいような気がしてきた。


「表情が柔らかくなってきましたね。別に、私がアナタの父親だからって、緊張しなくても大丈夫ですよ。幼い頃から、合わなかった両親と再会するのは、かなり緊張することですから」

 どうやら、マスコット先生の───父さんの口ぶりを考えると、俺が緊張しているだろうから、ボケて少し場を和らげようとしてくれていたようだった。


「マスコット先生、そこまで...」

 正直、何も考えずに会話をしていたのだと思っていたから、俺は心のなかで父さんに謝っていた。

 どうやら、父さんは父さんとして受け入れてもらえないように、気をつけてくれていたようだった。


「あ、えっと...お気遣いありがとうございます。浩一おじさんとはずっと敬語で話していたので、父さんに話しかけるのも敬語なのは仕方ないと思ってください。それに、一応担任の先生でもありますしね」

 緊張していないことを伝えようとすると、これまで以上に緊張していそうに捉えられてしまうような話し方になってしまった。

 こんなに堅い話し方をしてしまい、俺もビックリしている。


「そうですか。それで、聞きたいことはいくつあるんですか?」

「数は制限しない。初めての一家団欒なんだ。長く話せたほうがいいだろう?」

「こちらは忙しいのですが...まぁ、時間はいくらでもあるのでいいでしょう。それで、何の話からしましょうか?」


 ()()()()()()()に聴きたいこともあったが、それよりも先に、俺は()()()()()()()に聴きたいこともあった。

 俺は、父さんに向かって、こう言葉を投げかけた。



「───どうして、俺を残して失踪したんだ?」

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
[良い点] 無理もないですが、 ちぐはぐな会話ですね。 でもある意味マスコット先生らしい。 次回に失踪した理由が分かりそうですね。
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