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智恵の過去 その⑤

 

 ───学校で、隆貴に初めて犯されてから数週間が経ち、その行為は()()()()()()()、日常に変わった。


 でも、それは決して加害者である隆貴だけの日常であり、私にとってはどれだけやっても慣れない行為であった。

「───ん、隆貴、やめ...」


 その日───9月を過ぎて夏の暑さを少し忘れられるようになた日の部活終わりも、同じように隆貴に私は犯されていた。数日前、「嫌だ」と言って抵抗したら隆貴は露骨に不機嫌になってしまったので、受け入れざるを得なかった。

 犯されるよりも、殴られる方が怖かったのだ。私は、抵抗できないことを知ってしまった。


 ───抵抗しても、意味を持たないことを知ってしまった。


 慣れないいつも通りに身を委ねつつ、私は隆貴の行為が終わるのを待つ。私は、今にもバレるのではないかという不安と焦燥感で「気持ちいい」と感じることができていなかった。


 と、私のその不安はその日杞憂から現実に変わった。

 その日、私の絶望の種がついに芽吹き、大きな絶望の花を咲かせる。


「忘れ物はどこか───って、隆貴?」

 部屋に入ってきたのは、準レギュラーである私と隆貴の先輩であった。私と隆貴の性行為が見られたのであった。


「───あ、先輩...」

「す、すまん!まさか、部室でそんなことしてるなんて...」

「え、隆貴...鍵...」

 先輩の胸には驚きが、私の胸には焦燥があった。この時、隆貴がどんな感情を抱いていたかはどうかは、わからなかった。


「やっべ、鍵...閉め忘れてたかも...」

「ちょ、私...」

 一番恐れていた事態になってしまった。先輩に、隆貴との性行為を見られる。一番避けたかった事態。それが、私にのさばってきていた。


「ど、ど、どどうしよう...」

 焦った時に出てしまう、吃りが出てしまう。先輩は、そんな私と隆貴を見て下衆な意味を浮かべた。そして───


「なぁ、隆貴。こんなことがコーチにバレたらどうなるかな?」

「どうなるって───ッ!先輩、言うつもりですか!」

 隆貴は、先輩の発言を聞いて何かを察したみたいだ。このくらいなら、私でも察することができる。


 隆貴は高1でレギュラー入りしており、私達の目の前にいるのは隆貴が出たせいで準レギュラーに落ちてしまった先輩。


 ───そう、このままでは隆貴はレギュラー落ちしてしまうのであった。


「俺がレギュラー落ち...」

「いや、そもそもレギュラー落ちじゃなくて退学かもしれないぜ?不純異性交遊なんて学校側からは認められないからなぁ?」

「───そんな...」


 先輩が現れた尚、私に密着したままの隆貴。隆貴からは、バクンバクンと高鳴っている鼓動を聞こえてきていた。きっと、レギュラー落ち───それどころか退学と聞いて緊張が高まっているのだろう。


「村田さんには悪いけど、俺のためにも退学を───」

「先輩、俺決めました」

「───んぇ?」


 隆貴の突発的な宣言に先輩は驚いてしまう。隆貴は、この状況を乗り越えてくれるいい条件を思いついたのだろうか。


「先輩も、智恵と自由にセックスしてもらって構いません」

「───え」

「本当か、それは!」


 隆貴が、私の許可もなしにそんなことを言い出す。私は、そんなの了承の「り」の字も言っていない。なのに、それなのに、どんどん話は進んでいってしまう。


「自由に智恵を使ってもらって構わないので、先生に言うのはやめにしてください。それが、賢明な判断だと思いませんか?」

「隆貴、私は───」


「智恵、智恵は退学になりたいのか?」

「それは───」


 私は、言い返せなくなってしまう。一番の理由としては、隆貴が私を睨んで拳を見せてきたからであった。このまま逆らっては、殴られてしまう。殴られた上で、私の意見は聞き入られなくなってしまう。


 それが怖かった。怖かったのだ。


「その、私は───」

「先輩、さささ。早速どうぞ。鍵はちゃんと閉めればバレませんので」

「お、おう!悪いな!」


 そう言うと隆貴は、私の上からどいて、逃げようとした私の両手を地面に抑えた。その力は、自分の彼女を押さえつけるとは思えないような力であった。

「い、嫌...嫌!」

「ごめんね、俺は悪くない。隆貴がやっていいっていったんだ」


 そう言うと、先輩は私の上にズボンとパンツを下げた状態で乗ってくる。私は、先程まで隆貴に犯されていたから何の準備も必要なかった。


 ───否、心の準備は最初から最後までできていない。そもそも、心の準備なんていつまで経ってもできっこなかった。


 直後、私は乱暴に犯される。もう、後戻りはできそうになかった。後先もないのに、どうするのだろうか。



 ───その日の出来事から、2週間ほどが経った。


 10月になり、そろそろ本格的に寒くなりそうになっている時のこと。


 私は、サッカー部の肉便器になっていた。



 毎日毎日、獣のように私を乱暴に抱きしめ乱暴に犯す男の相手を、抵抗する術もなく受け止めなければならなかった。1回200円と、恋人である隆貴は私でお金稼ぎを始めていたのであった。


 ───こうして、私は女としての尊厳を失い、無様な姿を晒しながら生きていくことを強いられたのであった。

智恵の絶望は、まだまだ続く。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
[良い点] うわあ、恐れていた自体が……。 でもこうなると智恵のヒロインの座も揺らぎますね。 こういうヒロインを正ヒロインのまま 最後まで書くのは難しいかも? まあでもそこは作者様の腕のみせどころでも…
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