智恵の過去 その①
村田智恵───私の、昔話をするのであればどこから始めればいいのだろうか。
私の全てを話すのであれば、これまで生きてきた18年と同じ時間が───いや、それ以上の時間がかかるだろう。
もちろん、そんなことをしていたら1日どころかデスゲームを終えて学校を卒業してしまっているのでそんなことはできない。
それなので、できるのは過去を抜粋した話になる。やはり、話し始めるのは全ての悲しみが───私の人生が大きくマイナスに傾いた高校の話をしたらいいだろうか。
───と、言うことで高校の話をしようと思う。
だけど、それでもその高校へ通うことになった経緯は話しておいた方がいいと思ったから、今から少しだけ高校に通うまでの過去を話しておくことにする。
私は、今から18年前に山梨のとある病院で生まれた。そこから、一度も引っ越すことはなかった。
栄はもう知ってるけど、私は皆より1歳年上だ。
もちろん、留年した理由は後でしっかりと───その留年した理由が栄の聴きたいことの大部分を占めているだろうから伝えられるだけのことを伝えようと思う。
でも、今は時系列を合わせるためにも少しだけ待っていただきたい。
本来、私は人生が順調に行っていれば今年は大学1年生だった。
でも、どうして今も高3をやっているのかと聞かれると留年したのであった。
高校2年生の時に、とある理由があって一度。この学校に入ったのも、2度目の留年を避けるためであった。
話は戻して。私は、生まれたから中学校に入るまでは順風満帆な人生だった。
何かの問題に巻き込まれることはなく、学校でも友達を作って学生生活を心から楽しめるようなそんな健全な人間だった。
別に自慢ではないが、両親だって私に溺愛していた。
この頃までは、友達から除け者にされていじめられていたわけでもないし、両親からDVが行われたこともなかった。それに、彼氏なんてのもできなかった。
───って、これから話す話は栄の前の彼氏が登場するから少し不快にさせちゃうかもしれない。
でも、それでも必要な話だから我慢して聴いてほしい。栄から望んだことだし、それくらいの覚悟はできてるだろうし。
私が問題の高校───「甲府美咲高校」───略して「甲美」に入学した経緯をお話する。
───と、言っても別にそんな大それた理由があったわけではない。
栄も御存知の通り、私はハッキリ言って馬鹿だから、志望している高校は私立などではなく公立だった。
あ、栄も叔父さんのことを遠慮して公立高校だったんだっけ?
そうだったね。じゃあ、別にそこまで公立である事実を否定的に悲観的に捉える必要は無いってわけか。
あ、また話がズレちゃったね。
私は、馬鹿なのに少し家から遠い高校を受験した。偏差値は、まあ...39とかです。
見栄を張って40弱って言ってたんだけどね。もしかしたら、40弱って言っていれば41くらいって、勘違いしてくれる人もいたかもしれない。そんな理由で40弱って言ってた。
もちろん、家に近い学校も受験してたんだけど、そこは恥ずかしいことに合格ができなかったから私は少し遠い「甲府美咲高校」に入学することになったの。
家から遠い───まぁ、言っても山梨なんてそんな広いところじゃないから登校には電車で8駅乗って行ってたよ。だから、別に言うほど遠い訳じゃないかな。
大体、1時間もあれば登校できた距離に学校はあったよ。電車に乗ってる時間は少ないけど、家から駅までと駅から学校までが遠くてね。
家から少し遠い学校に通うことになった私と同じ学校に、仲のいい人はいなかった。別に、コミュ力はあったから孤立しないだろう───って思ったけど、割と同じ中学からの人が多かったみたいで。
私は、会話には入れてもらえるけど、一緒に遊びに行く───みたいなことはできなかったんだよね。
別に、同情してもらうために言っている訳じゃないよ。
───と、ここらへんで登場させておこうかな。
別に、小学校や中学校でも恋をしていたから、それが初恋って訳じゃないんだけれど、高校1年生でも心惹かれた男性がいました。
まぁ、その男性は驚くほどのクズだったんだから、私の男を見る目がないんだろうね。
あ、あ、栄が悪い男って言ってるわけじゃないからね。栄は、私のとっての特別で大事な人なんだから。
で、その心惹かれた男性の名前は橋本隆貴って名前だった。
別に、そこまで勿体ぶる必要もないから、もう少し飛ばして結論を言ってしまいます。
紆余曲折があり、私は橋本隆貴君と付き合うことになりました。
告白したのは、私から。理由は、まぁ...一目惚れって奴?
人の顔ってのは、ベクトルが違うから一概にどっちがいいとか優劣を付けられるものではないのだけれど、私にとってはその時は世界一のイケメンのように見えた。
今となっては、顔も見たくないような顔も合わせたくないような人間になっちゃったんだけどね。
まぁ、一先ず私の感想はおいておいて。
私は、橋本隆貴君と付き合い始めました。少し、隆貴君の説明をした方がいいかな。