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4月1日 その⑳

 

 チームCのメンバーの4人のスマホにコンシェルジュの「コン」が現れたのと、多少の時間の差はあれど他8チームのメンバーのスマホにもコンシェルジュの「コン」はアップロードされた。


 コンがスマホに現れたのと同時に、wi-fiも勝手に接続した。だけど、free wi-fiでもなかった。

 不思議な現象。だが、これがGMの力であった。


 ***


「コンか...よろしくな」

『はい、よろしくお願いします』


 電子音で、コンは喋る。少し高い、男の声のような感じだろうか。

「勝手に追加されちゃったよ...」

 そんなことを、純介は言っている。


 俺は、顔認証でスマホのロックを解除する。

 背景は、いつもと同じだった。アプリも、いつもと同じ。だが、見知らぬアプリが一つだけ入っていた。


「───これは?」

 そのアプリのアイコンは、マスコット先生の顔と同じだった。こうして見ると、やはり5才児位の落書きのような安直な顔をしている。コンは、狐の姿でクリクリとした可愛い目を持っているのだが、マスコット先生は雑だ。きっと、コンの方がマスコット先生よりも制作費用がかかっている気がする。


「なんだ?このアプリ?」

 アプリ名は、「帝国大学附属高校」だった。俺たちが入学した高校の名前だ。

 俺は、思い切ってそのアプリを開いてみる。何事も挑戦だ。


 開くと画面の右側が青。左側が白色になる。画面の真ん中には横に並べられた3つの点が、同じテンポで動いている。

 その3つの点の下には、「ログイン中」の文字があった。


 そして、相変わらず画面内にはコンがうろうろしていた。誤タップをしてしまいそうだ。どこかに磔にできないだろうか。


「あ、ログイン出来たみたい」

 稜が、最初にログインできたようだ。すると───


『こんにちは、山田稜さん』

「うおっ!」

 突如、女性の声がスマホから出る。コンの声とは違う、穏やかな声であった。しかし、この女性の声。どこかで聞き覚えがあるような気が。


 ───と、考え込んでいると俺のアプリも「ログイン完了」と出ていた。


『こんにちは、池本栄さん』

 ログイン完了した。画面の背景は薄い水色だった。


 右上には、4月1日 (木)という今日の日にちが映されており、左上には「池本栄」という俺の名前が見えた。

 画面中央には、「クラスにログインする」という文字が丸い枠に囲まれてあった。


「クラスにログイン?どういうことだ?」

「わからない...押してみればどうだ?」

「じゃ、じゃあせーので押そう」

「わかった。せーの、せーで!」


 ”ポチッ”


 俺は、「クラスにログインする」をタップした。すると、「3年Α組 連絡用グループ」と書かれたグループに入っていた。


 俺と同時に入った稜も同じ画面を開いていた。


 マスコット先生「ここは、連絡用グループです。連絡やアンケートを送信します。一日一回は確認するようにしましょう」

 そのような連絡が送られてきた。


「なんだか、普通だな」

「そうだね」

 俺は、「戻る」ボタンである左矢印のボタンをタップする。


 すると、先程の画面にまで戻った。

 画面の下側には「ホーム」と書かれていた。他にも、2つの選択肢があり「チャット」と「ショップ」だった。


「とりあえず、チャットから見ていくか」

「チャット」を押すと、緑色の吹き出しのアイコンのような。青い鳥のDMのような名前が縦に並んだような図が出ていた。


 選択肢は、クラスメート全員分がある。本日死んでしまった金髪の少女────松阪真凛を除いた35名だ。


「全員、個人チャットができるようになっているのか」

 試しに、出席番号3番の健吾のチャットを開いてみる。トーク内容は、まだ何も送っていないし送られていないし無いのだけれど、黒く小さな文字で「個人チャットでの会話は匿名性が保たれています」という文字が出てきた。


 俺は、送信テストも兼ねて健吾に「あ」と送った。


 健吾のスマホから、通知音がなる。

「ん、栄。{あ}ってなんだよ」

「上の方にいたから送信テストを」

「俺を実験台に使うんじゃない!」

「あはは、ごめん。ごめん」

 そんな会話を繰り広げる。


 次に、俺は「ショップ」と書かれているものをタップして開いた。

「えーと...これは?」

 画面の真ん中には大きく検索エンジンが。そして、画面右上には金貨のマークと、「0」という数字がある。

 きっと、これは所持金額が0円であることを表しているのだろう。


 まぁ、アプリを入れたばっかりだし───いや、勝手に入ったのだが、そこは問題点ではない。アプリが入ったばかりだし0円なのは当たり前だろう。ゲームならば、金貨無料配布なんてのもあるだろうけどこれはゲームではないからそんなこともない。


「0円なら、何も買えないだろうな」

 まぁ、今のところは無くても困ることはない。何か、困ったらこの「ショップ」機能は使うことにしよう。


「って、これ。夕飯はどうやって作るんだ?」

 健吾がそんなことを呟く。そう思えば、そうだ。夜ご飯は誰かが作る必要がある。


「じゃあ、俺が作るよ」

「え、栄料理できるの?」

「あぁ、義父さんと2人暮らしだったから」


 俺は、キッチンに移動する。だけど、キッチンの冷蔵庫にも食材はなかった。


「ショップ」で「食材」と検索エンジンに入れたら「日替わりディナー」と言うものが無料で配信されていた。一日で、気付けたからよかったのだが運が悪ければ気付くことはないだろう。


 それこそ、冷凍庫の中で無限に出てくるアイスを食べて生活する人もいそうだ。


 ───と、スマホを見ていると「3年Α組 連絡用グループ」に「生徒会参加希望」のアンケートが出ていた。


 もちろん、俺は「希望しない」で送信した。


 ***






「んで、私はこれでよかったの?マスコットセンセー!」

「はい、ありがとうございました」


 死んだはずの金髪の少女は、誰もいなくなった教室でマスコット先生と2人会話を続ける。


「明日は、生徒会が決まります。さて、誰が立候補してくれるのでしょうか。ふふふ、楽しみですね」

本日17時に閑話も投稿。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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