5月7日 その⑧
マスコット先生の提案により、第4ゲーム+αの『限界ポーカー』が開始される。
+αに関係のない健吾は、ゲームが行われている会場の隣にやってきた。
「ポーカーなら、多分4箱まで使ってルールを変えられるのでしょうけれど、今回は追加で2箱も用意するのは面倒なので2箱で行います」
「わかったわ」
「わかりました。それと、マスコット先生」
「なんです?」
「このゲーム、僕が勝っても松阪マリンさんが死ぬってのは無しでいいですか?」
「ほう、それは何故?」
「今回この『限界ポーカー』が行われることになったのは、僕がイカサマ紛いのことをしたからです。だから、今回非が───いや、挑戦者側に正式にポイントが入っているから非と表現するほど非でもマイナスでも無いんでしょうけど、どっちが悪いかって言われたら僕です。だから、死亡ペナルティは僕だけでいいです」
「それでいいんですか?」
「はい。負ける気はないので」
「そうですか...では、そうしましょう。では、明確なルールを作るので少しお待ちを」
そうして、マスコット先生はどこからかパソコンを取り出してそれにタイプして何かを作っていた。
そして、すぐにそのルールは俺達がいる空き教室の黒板と、ゲームが行われる会場である『3-Α』に映し出されることとなった。
第4ゲーム『分離戦択』4回戦+α『限界ポーカー』のルール
1.このゲームで、挑戦者側が敗北した場合のみ死亡する。生徒会側が敗北しても、ペナルティはない。
2.このゲームは、2箱のトランプを使用して行う。
3.トランプの役は従来のポーカーに追加したものとする。(別の表を用意する)
4.ジョーカーは、任意のカードに変更することができる。
5.カードの役が同程度の強さならば引き分け。強さに差が出たら、その時点で勝負は終了する。
6.カードの交換は1回のみ4枚まで。
「ポーカーの役も一応確認しておきますか?」
「お願いします。追加されるものもあるし、そこは大切だろうし」
「わかりました」
そして、用意されるポーカーの役の強さ表。それは以下のとおりであった。
『限界ポーカー』の役表(番号が小さい程強い)
1.ロイヤルストレートフラッシュ 10,J,Q,K,1 スートは問わない
2.ストレートフラッシュ スートの同じ連続する数字5つ 例:1,2,3,4,5
3.ツートンファイブカード 5枚の同じ数字でそのうちの4枚が同じ色 例:♡1,♡1,◇1,◇1,♤1
4.ファイブカード 5枚の同じ数字 例:1,1,1,1,1
5.ワンカラーフォーカード 4枚の同じ色と数字+4枚と同じ色のカード 例:♡1,♡1,◇1,◇1,♡2
6.フォーカード 4枚の同じ数字 例:♡1,♤1,◇1,♧1,♤2
7.フラッシュ 全て同じ色 例:♡1,◇1,♡2,◇2,♡3
8.ストレート 連続する数字5つ 例:♡1,♧2,♤3,◇4,◇5
9.ワンカラースリーカード 3枚の同じ色と同じ数字+1枚同じ色のカード 例:♡1,♡1,◇1,♡5,♤1
10.スリーカード 3枚の同じ色と同じ数字 例:♡1,♡1,◇1,♤2,♧4
11.ツートンツーペア 同色同数字同マークのペアが2つ 例:♡1,♡1,◇3,◇3,♤5
12.ワンカラーツーペア 同色同数字のペアが2つ 例:♡1,◇1,♧4,♤4,◇J
13.ツートンワンペア 同色同数字同マークのペアが1つ 例:♡1,♡1,♤5,◇9,♧K
14.ブタ 無し
「こんな感じですかね。まぁ、抜けがあるかもしれませんがその時は、試合をやってる時に探しましょう」
「わかったわ」
「了解です」
「それでは、早速。ディーラーは私が行いますね。命がかかっているのでズルはしませんよ」
ここからは、完全に運ゲーだった。このポーカーは何回戦とかではなく、1発で勝負が決まるので、こちらがブタで、相手がツートンワンペアでも敗北してしまうのだ。
「1回勝負だってのが、厳しいよな...」
お互いにブタならば問題ないが、そう簡単には行かないだろう。
お互いに、自分の命を賭けているから慎重になっているだろう。イカサマをしないと宣言した純介だが、大丈夫だろうか。
「───じゅんじゅん、大丈夫かな?」
このクラスで「じゅんじゅん」と純介を呼ぶのはクラスで一人だけだ。そう、紬だった。
紬も純介のことが心配なのか、最前列までやってきていた。俺の2つ隣に座っていた森宮皇斗は紬に席を取られたらしい。
「では、カードを配ります」
そして、108枚のカードから5枚ずつ配られる。ジョーカーはどんなカードにでも変えられるというゲームで追加されているのだ。
「えっと...2枚交換で」
そう言って、松阪マリンは2枚交換に出す。そのカードは、◇9と♤6であった。
その後、マスコット先生にカードを2枚貰って、笑みを浮かべた。
「西森純介君はどうしますか?」
「そうだなぁ...じゃあ、これを交換してくれ」
そう言って、純介は♤2を一枚捨てた。そして、1枚新しいカードを貰った。
「───それでは、どちらから?」
「それじゃ、私から行くわ。純介君、ごめんね。アナタだけが死ぬ可能性があるなら負けてあげようとも考えたけど、勝負ってのは本気でやらなくちゃつまらないものね。
そう言って、松阪マリンが出したのは♡9,♡10,♡J,♡Q,♡Kの5枚───ストレートフラッシュであった。
「あなたは、ここでロイヤルストレートフラッシュを出さないと勝てないわよ」
「そうか...残念だ...ごめんよ、僕が持っているのはフォーカードなんだ...」
そう言って、純介が悲しそうな顔をする。そして、手札を5枚その場に露顕させた。
「───んなっ...」
純介が出した5枚のカード。それは───
「───フォーカードって言っても、僕が持っているのは4枚のジョーカーのフォーカードと♤1なんだけどね。僕の勝ちだよ、ロイヤルストレートフラッシュ」