5月7日 その⑤
4回戦『限界ババ抜き』のルール
1.このゲームはトランプを2組 (54枚×2)を使用する。
2.最初に、ジョーカーを4枚取り出して裏面でシャッフルをして1枚を抜き取る。抜き取った一枚は、参加者に見えないように伏せておく。
3.引かれたジョーカー以外の、残りの3枚を、数字と模様が書かれたカード104枚に含め、シャッフルを行う。
4.最後までババ (ジョーカー)が残ったら負け。
5.ペアが揃ったら捨てることも可能。
6.同じ数字且つ同じ模様でないとカードをペアとして捨てることができない。
7.他のルールはババ抜きに準ずる。
[手札]
健吾 赤のジョーカー・♧2・♡8・♤8・♤6・♧9・♡10・♡4・♡7・♧1・♤K・黒のジョーカー・♡5・・◇4・・♤Q・♤10・◇J・◇Q・♡3・♤9・♧8・◇7・◇K・♧7・♧3・♧5・♡K・◇9
純介 ◇K・♧K・♡3・♡2・♤9・♤Q・♡1・◇J・♤2・◇9・♧1・♡6・♤3・♤J・♧J・♤7・◇3・♡8・・赤のジョーカー・◇Q・♧7・♡7・♤1・♡K・♧2・♤3・♤J・◇8
松阪マリン ♤6・♤1・♤8・♧K・♤10・♡6・♧J・♧3・♧5・♤2・◇7・♤7・♡2・♡10・♡1・♧8・◇8・♡5・◇4・♡4・♧9・♤K・◇3
『限界ババ抜き』も、ルールを覗くとババ抜きとほとんど大差ない。ただ、ジョーカーがわからなかったりカードが揃いにくいだけなのだ。
それ故に、2人である挑戦者側よりも1人である生徒会側の方が───健吾や純介よりも松阪マリンの方が有利の方なのだ。
「誰から始めるかは、じゃんけんで決めてください。そこから時計回りで始めます」
マスコット先生の指示に従い、ゲームに参加する3人は指を出した。そして───
「最初はグー!じゃんけんぽん!」
グー。パー。パー。
勝ったのは、健吾と純介の2人であった。
「健吾、パーを出してくれ。ここの順番は正直どうでもいいからさ」
「あぁ、わかった」
そして、純介がチョキ、健吾がパーを出した。そして、ターンが純介が始まることに決定する。
純介が松阪マリンのを引いて、健吾が純介のを引いて、松阪マリンが健吾のを引く───ということの繰り返しになるだろう。
「まず、僕が松阪マリンのを引けばいいんだよね」
そして、画面に映り込むのは松阪マリンの手元。そして、純介は◇7を取って引いた。
「それで、健吾に僕のを引いてもらう」
そして、純介は健吾の方に手札を向ける。そして───
「健吾、あるものがあったらあるって言ってくれ。まずは、1vs1に持っていくことにしようと思う」
「あぁ、わかった。了解だ」
「◇K」
「えっと...ある」
「オッケー。じゃあ、一番右のを引いてくれ」
純介は、一番右にある◇Kを健吾に引かせる。そして、健吾は◇Kを揃ったので捨てた。
「ちょ、ちょ、そんなのありなの?手札言うの、ズルじゃないの?」
「ズルじゃないよ。僕は好き好んで手札を晒しているんだ。それに、マスコット先生が止めたいってことはしてもいいってことだろう」
「そ、それは...」
デスゲームのルールに書かれていないは、良くも悪くもマスコット先生が中心だった。そして、手札を晒すという本来ならば、自らマイナスに陥るという行為をマスコット先生は止めなかった。
───よって、純介のその行為は正当化されるのであった。
「よし、このまま行けば一方的に減らせそうだな」
「まぁ、僕の中にその手札が無いかもしれないけどね...」
純介がいくら手札を晒そうとも、健吾には一切マイナスが無いし、それどころか松阪マリンにプラスは全くないのだ。何故なら、ババ抜きなのだから、揃った手札は全て捨てられるだろうし、自分の手札に無ければ健吾の手札にあり、自分の手札にあれば健吾の手札にはないのだから。
「純介、考えたな...」
───と、俺の後ろでそう呟くのは康太だった。
「でも、純介の作戦はあくまでタイマンに持っていくための作戦だ。だから、タイマンになった後でも勝てるような作戦を考えないと」
「それは...そうだな...」
そのためには、何かが必要だろう。どうにかして、ジョーカーを松阪マリンの手に渡らせなければならない。
───そして、今回のゲームのジョーカーを現在持っているのは健吾であった。
健吾の手には現在、赤のジョーカーと黒のジョーカーの両方があり、どちらかがジョーカーであるかはわかるが、どっちかがジョーカーかはわからない状態だった。
それ故に、変に行動ができなくなっている。そして、純介も自分の持つジョーカーが「本物のジョーカー」かもしれないという考えを持っているために容易にそのジョーカーの名前を出すことはできないだろう。
「とりあえず、今できるのはカードの排出だけみたいだな...」
「そうだね。カードを減らすのが最優先みたいだ」
俺達が、そのような話し合いをしている間にも、松阪マリンが健吾から♤Kを、純介が松阪マリンから♤2を引いて捨てていた。
「それじゃ、健吾。♧Kは?」
「ない」
「♡3」
「ある」
「じゃあ、右に持ってきたから」
「よし、ナイス」
そう言って、健吾は純介の一番右から引いて♡3を捨てた。
「そのやり方、随分とズルいわね...」
「2人合わせて、持ってる数は君の倍だよ」
「それはそうだけど...」
そして、松阪マリンが健吾から♡7を。そして、その♡7を純介が引いて捨てた。
そう、松阪マリンが揃わなかったということは必ず純介の手札にあるということだった。そして、純介が松阪マリンから引いたもので揃わなければ、確実に健吾が持っているということだった。この方法を使えば、こちらもかなりのスピードで手札を減らすことができる。
「♡2」
「ない」
「♤9」
「えっと、ある」
「はい、どうぞ」
「センキュー」
そう言って、純介は健吾に♤9を渡してポンポン捨てていく。この方法は、かなり有用だったようだ。
松阪マリンが健吾から◇Jを引き、それを純介が奪い取っていって捨てる。純介の取った方法では、このまま行けば必ず健吾は捨てられるので次第に松阪マリンが揃う可能性というのも低くなってくる。
「これ...かなりやりにくいわね...」
───そして、3ターンほど過ぎて。
健吾 赤のジョーカー・♧2・♤8・♤6・♧9・黒のジョーカー・♡5・◇4・♧8・◇7・♧5・♡K
純介 ♤1・♡K・♧2・♤3・♤J・◇8・◇7・♧K・♡2・♡1・♡6・♤3・♤J・♤7・◇3・赤のジョーカー
松阪マリン ♤6・♤1・♤8・♧K・♡6・♧5・♤7・♡2・♡1・♧8・◇8・♡5・◇4・♧9・◇3
戦況はここまで進んできていた。そして、次は松阪マリンが健吾から引く番だ。