5月6日 その㉟
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───第4ゲーム『分離戦択』も3回戦まで終わり、挑戦者側が1勝、生徒会側が2勝と栄達がもう後のない背水の陣に立たされた、5月6日の日の夜のことだった。
その日も、第5回デスゲームの生徒会メンバーは集会を行っていた。
本日は、生徒会メンバー全員が集まったようだった。
「いやぁ、第4ゲームはどれも熱戦だね」
「本当ね。しかも、今日は久々に生徒が死んだわ」
「本当だよ。栄や蓮也には感謝しないと」
「ははは、すごい皮肉だね」
「それにしても第4ゲームのいいところは、今の生徒会が動かなくても、生徒会として機能してくれてるってことだよな」
「そうだね。全会一致の敵として機能してくれているから、僕たちだって動きやすいよ」
「動きやすいって...何かしてたのかしら?」
「いいや、別に何も」
「それじゃあ、意味がないじゃない...」
「ははは、そうだね。でも、確かに奈緒が死んだのは嬉しいことだね」
「嬉しいことって...殺すのは奈緒しかいなかったじゃない。それとも、康太を殺すっていうの?」
「それは困るなぁ...」
「ま、いくら蓮也でも流石にそんなことはできなかったみたいだし、問題はないよ」
「僕は何も言わないよ。誰が死のうが無問題だし」
「はいはい...」
「それで、ここで挑戦者側が負けたら一気に10人───いや、11人が死亡するってこと?」
「まぁ、そういうことになるね」
「それじゃ、こっちもかなり動きやすくなるよな。このクラスの厄介な相手の一角である栄が死んでくれるんだし」
「死んでくれるって、これまで何度も利用してきただろう?まぁ、直接的に動かしたんじゃなく栄の正義感を勝手に利用してるだけなんだけどね」
「うーん、僕は栄と関わりがあるから正直死んでほしくはないかな...」
「俺もだ。なんだかんだでいいやつだし、手駒だからな」
「まぁ、栄が死んだところで愛香と皇斗が生きているんだもの。先にどちらかを片付けちゃった方がいいわよね」
「あぁ、それはそうだな」
「───って、そう言えば今日愛香と靫蔓───先輩の2人でマスコット先生を殺すとか言っていなかったか?」
「それなら、ここのどこかで3人が争っているかもしれないわね」
───第5回生徒会のメンバーは、聞こえもしない戦闘音を聞こうと耳を凝らす。
だが、生徒会メンバーのいるこの空間の遠くで、確かに靫蔓・愛香vsマスコット先生の戦いを繰り広げられていた。
***
───それは、現生徒会メンバーが話し合いを始める数刻前。
愛香の部屋に、一人の男性───第3回デスゲームで生徒会となり、デスゲームを生き延びた今現在生きている第3回デスゲーム生存者の中では唯一の男性である鬼龍院靫蔓がやってきた。
「やっと来たか、靫蔓。妾は待ちくたびれたぞ」
「へいへい、申し訳ねぇな。自分で自分を断罪すればいいか?」
「いや、いい。妾はマスコットをボコボコにし、情報を聞き出せるのであれば問題はない」
「狙うのはGMじゃないのか?」
「貴様が怒りを募らせているのはマスコットではないのか?」
「───あぁ、そっか。まぁ、いい。俺はどっちでもぶっ飛ばされば問題ないしな」
「隠し事があるようだが追及はしない。とっとと妾をマスコットのいるところに連れて行け。瞬間移動のような技があるのだろう?」
「全く、人遣いが荒いな...」
「貴様一人じゃ、マスコットに反乱の旗も見せれなかっただろう。文句を言うな、チキンが」
「チキンだか、負け犬だかはどうでもいい。行くぞ」
そう言って、靫蔓は愛香の手を握る。
「やめろ、握るな」
愛香は、靫蔓の握ってきた手を突発的に叩いて離した。
「おい、何故手を叩く。そっちこそビビってるのか?」
「は?そんな訳無いだろう。妾がふざけた面を付けた野郎にビビっていると思っているのか?」
「じゃあ、なんで手を叩くんだよ。体の一部に触れられないと移動できねぇんだよ」
「そんなの聞かされておらぬ。貴様の手は、獣のようだ。チキンでも負け犬でもなく、女を貪る獣なのではないか?」
「おまっ、失礼だな!てか、第2ゲームで栄に手を握ってもらっていた時はそんな態度じゃなかったじゃねぇか!」
「それは...」
途端、愛香の顔がみるみる紅潮していく。そして、自分の両手を庇うように撫でながら靫蔓から視線を外す。
「あの時は、仕方がなかったから...その...」
「おいおい、力強さが無くなってんぜ...しょうがねぇ女だな...」
そう言うと、靫蔓は自分の着ていた服の裾を伸ばして森愛香の肩に手を置く。
「これで我慢しろ」
「───」
直後、2人は愛香の部屋から───この次元から姿を消して、マスコット先生や第5回デスゲームの生徒会・捕らえられた智恵やもう既に出番を終えた第4回デスゲームの生徒会や、靫蔓と同じ第3回デスゲームの生徒会のメンバーがいる空間に移動していった。
───もう、お気づきの方もいるだろうから大々的に発表しよう。
靫蔓や愛香が移動した場所───それは、この三次元のどこを探しても見つかることはない。
その理由は簡単だ。
───マスコット先生や生徒会メンバーがいるところは、四次元なのだから。