5月6日 その㉞
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第4ゲーム『分離戦択』3回戦『バッターナイフ』が、奈緒の死をもってして終わり、それにより康太と蓮也が言い争いをして、蓮也が寮に帰ってしまったことをトリガーに、皆寮に戻ってもいいような雰囲気になってしまい、マスコット先生もそれを見て今日はその場で解散にした時のことだった。
俺は、浮かび上がった疑問を解消するために、その答えを持つ人物───森宮皇斗の元へ向かっていた。
幸い、森宮皇斗は奈緒の死を悲しみこそしなかったものの、3回戦『バッターナイフ』の見物はしっかりしていたようだし、話はすぐつきそうであった。
「───皇斗、話がある」
「───なんだ?4回戦並びに5回戦の協力はしないぞ?」
「わかってるよ。でも、疑問があるからここに来た」
「───なんだ?」
きっと、皇斗は俺が質問する内容はわかっているはずだろう。洞察力や考察力の高い彼だ。今この状況で、俺に何を問われるかくらい予想はつくはずだった。それでなお、何を質問されるのか聞いてくる。
だが、いい。口に出して質問したほうが話している内容が確定するだろう。
「───皇斗、奈緒が死ぬことはわかっていたのか?」
「奈緒が───などと確定するところまではできていなかったが、誰が死ぬかは予想できたって疑問についてはイェスだ」
「───じゃあ」
「どうして、止めなかった、言わなかっただろう?逆に問わせてもらうが、俺が止めて栄は止まったか?」
「それは───」
───止まらなかった。
智恵を助けるためなら、俺はなんだってする。自分を犠牲にすることだって厭わない。それに、誰か死ぬかもしれない───などと言われても、「誰も死なないよう上手く動く」なんて言い返していただろう。
「止まらなかったからこそ、言わなかった。言っても無駄だっただろうしな」
「───本当かよ...」
そして、思い出すのは東堂真胡ではなく睦月奈緒を提案したことだった。もしかしたら───
「もう一つ質問させてくれ。どうして、東堂真胡ではなく睦月奈緒をチームのメンバーにいれた?もしかして...」
「そのもしかして、だ。余は命の取捨選択をした。今後使えるか使えないかの、人選をしたんだ」
「なんで...」
「なんでもなにもわかっているだろう?このデスゲームで優位に立つため。他の誰でもない、栄がだ」
皇斗はそう述べる。俺が今後デスゲームで融通を利かせるように、上手く調整してくれているようだった。
上手く、動きやすくしてくれているようだった。
「もちろん、その取捨選択も余に問題がない程度だけどな」
───そして、皇斗はどうして奈緒を味方に選んだのか説明してくれた。
まず、俺が皇斗に声をかけていた山田稜・安倍健吾・西森純介と、奥田美緒・菊池梨央・斉藤紬の合計6人は取捨選択の対象外になる。
もちろん、俺と智恵・皇斗の3人も除外される。
そして、俺が声をかけようとしていた西村誠・中村康太・渡邊裕翔・東堂真胡・森愛香の5人のうち断ると予想できた裕翔と愛香の2人も結果的に除外される。
今後、寮でのチーム戦が起こる可能性もあったから皇斗は同じ班である岩田時尚・橘川陽斗・津田信夫の3人をゲームに参加させるわけにはいかなかったようだ。
デスゲーム自体にお願いしても参加してくれなさそうな人物も除外される。
佐倉美沙は男性恐怖症で、橋本遥は人間恐怖症故に、栄が誘っても参加してくれないだろうと踏み。
宇佐見蒼・園田茉裕・田口真紀の3人頼んでも断るだろうと、踏んだのだった。
実際、第3ゲームで田口真紀は俺達の協力を拒否したので断る可能性が大きかっただろう。
そして、残ったメンバーがデスゲームに参加してくれるであろうと踏んだメンバーのようだった。
余ったのは、俺があまり関わったことがないような人物と、クラスの中心にいるような人物ばかりであった。
ここで、結果的に自分の主張でデスゲームに参加した安土鈴華・細田歌穂も除外する。
すると余ったのは、秋元梨花・柏木拓人・杉田雷人・竹原美玲・成瀬蓮也・三橋明里・睦月奈緒・山本慶太・結城奏汰・綿野沙紀の10人であった。
そこから、何をしだすかわからない山本慶太と運動神経がいいとは言えない成瀬蓮也・三橋明里・綿野沙紀の合計4人が抜かれる。
最終的に秋元梨花・柏木拓人・杉田雷人・竹原美玲・睦月奈緒・結城奏汰の6人に絞られて、栄の交流の幅を広げると考えると睦月奈緒───ということになったようだった。
「東堂真胡でもよかったが、彼は今後も使えそうだったからな。ここで死んでもらうには惜しかった」
となると、俺が選んだ残りの8人───いや、同じ寮である3人はもう既に誘っていたので5人は死んでもいいみたいな言い方に聴こえてしまう。
「西村誠・中村康太・渡邊裕翔・東堂真胡・森愛香の5人は死んでもよかったのかよ?」
「だから、2人は断るだろうと予想したと言っただろう。そして、西村誠と中村康太は余にとってはどうでもいい相手だった。死のうが余には関係ない」
「───そうかよ...」
───そして、俺は睦月奈緒ではなく柏木拓人までも推薦で選ばれたことを気付く。
今思えば、最終選抜の6人の中にも拓人はいた。
「まさか、拓人まで...」
「あぁ、余にはどうでもいい相手だ」
「逆に、どうでもよくない相手は誰がいるんだよ!」
「池本栄・東堂真胡・西森純介・村田智恵・結城奏汰の4人だな」
「理由は?」
「言わん。それは、奈緒の死には関係ないからな」
皇斗は、それ以上何も答えなかった。そのまま、皇斗は去ろうと校門の方へ歩いていった。
先の質問と同じく答えてくれないかもしれないが、俺は皇斗の背中を見ながら問を続ける。
「皇斗、お前...どこまで先が見えてるんだよ」
俺の質問を聞き、皇斗はチラリと俺の方を見る。そして、こう答えた。
「───余が死ぬまでだ」