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5月6日 その㉚

 

 スイング。


「───やった!」

 俺は、思わず声を出してしまう。蓮也が投げたナイフに当たったのはスイングだった。


「ふぅ...怖かった。よかったよ、俺が選択した後で何か変わるようなことが無くて」

 康太は、蓮也の心を読んだのだろうか。いや、そんなことはできないはずだ。康太は、安堵したのかその場にへたり込んだ。


「どうして...」

「靫蔓の方を見ても、何も反応を貰えていなかっただろう?だから、俺はこう考えた。自分の考えていた作戦には戻さず、2連続でナイフを投げてくるかもしれない───って」


 脅してくる靫蔓に指示を仰いだ蓮也。だが、靫蔓は何も言葉を発することはなかった。

 故に、そのまま攻撃する───という作戦は続行されるのと蓮也は考えたのだろう。


「俺が球を選んでからの数分間、靫蔓が俺の思考に気付いて言葉を発さないかすごく怖かったよ」

 康太は、そう伝えた。


 ───そして、蓮也はナイフを全て使い切ったために6球目に投げられるのはボールしかない。


 そして、康太は最後の最後まで残したダブルスイングを使用することしかできない。


 6球目は、何事もないかのように進められた。ボールに、ダブルスイングが当たり挑戦者側は2塁進ませる。

 既に2塁にいた奈緒は、そのまま本塁まで戻り得点を更に1つ手に入れた。


 1回裏:得点

 挑戦者側 2

 生徒会側 0


 ───そして、2回表が始まる。今度の攻撃側は挑戦者(こちら)側の奈緒であった。


 もちろん、守備側は生徒会側の蓮也しかいない。


 ───と、奈緒も蓮也を殺さずに勝利するという考えに賛成したのか奈緒は「3球目はナイフを投げない」という約束を、蓮也と交わした。


 3球目にダブルスイングを投げれば、他は安心できる───という状態を作り上げたのであった。


 そんなこんなで、第4ゲーム『分離戦択』の3回戦『バッターナイフ』は7回裏まで進んだ。


 7回裏:得点

 挑戦者側 14

 生徒会側 8


「ついに8回表か...」

 今のところ、順調に勝ってきている。1回裏を超えるような危機は、それ以降起こっていなかった。


 このまま行けば、十分に勝利ができる。

「───だけど、油断は禁物。最後まで気をつけないと」

 そう言いながら、マウンドに立つ奈緒。彼女がピッチャー及びバッターになるのはこの8回で最後だった。


 9回は、康太が担当する。奈緒が『バッターナイフ』を行うのはほとんどこれで最後と言っていいだろう。

 それ故に、油断は禁物なのだ。


 死んでしまうかもしれないし、殺してしまうのかもしれないから。

 それに、見物客の雰囲気だってデスゲームが行われているような状況じゃない。ところどころで、雑談している声が聴こえている。誰も、このゲームでは死なないと思っているのだろうか。


「俺は最後まで見届けないとな」

 2人にデスゲームにお願いして出てもらっている以上、ここでお喋りにかまけてる時間はない。俺は、デスゲームに全身全霊で集中しなければ。


「8回表」

 マスコット先生の声がする。8回表が開幕したことの報告だ。


「蓮也、今回もボクは3球目にはナイフを投げない」

「う、うん...わかったよ」


 奈緒がそう宣言している。彼女は、スポーツマンシップに準じているので嘘をつくような行為はしない。

 故に、心理戦が起こることはなかったのだ。


 それ故、2回4回6回はこれまでも安心して見ることができた。

「1球目」


 放たれるボール。放たれるスイング。


 マスコット先生が1塁に進む。


「2球目」

 放たれるボール。使用されるバリア。


「3球目」

 宣言通り、投げられるボール。そして、放たれるダブルスイング。


 マスコット先生が3塁にまで進む。


「4球目」

 放たれるナイフ。使用されるボール。


「5球目」

 放たれるボール。使用されるスイング。


 マスコット先生が本塁まで戻ってくる。生徒会側にプラス1点。


「6球目」

 放たれるナイフ。使用されるバリア。


 バリアでナイフを守ったために、更に生徒会側に1点。


 8回表:得点

 挑戦者側 14

 生徒会側 10


「───」

 差は、残り4点。9回表で蓮也が、その回で取れる最高得点を取っても、13点なのでもう挑戦者側に勝つことはできない。だが、ゲームは9回裏まで行われる。こちらで死者が出れば生徒会側が勝利になるからだ。


「───さて、8回裏か」

 そして、そのまま奈緒がバッターに移動する。すれ違うようにして、蓮也もピッチングマシンの後ろに入った。


 放たれたボールを拾いに行っているマスコット先生が戻ってくるまで数分ほど待機だ。


「ここまで、順調だと逆に不安だな...」

 俺は、そんなことを呟いた。1回裏から、流れるようにして8回裏までやってきてしまった。


 このゲーム、もっと白熱した心理戦が行われるはずだったのだが、敵が先代の生徒会ではなく蓮也だったからか、ある程度の協力体制を取ることができたのだった。

 もし相手が蓮也ではなく、飛騨サンタマリアや神戸トウトバンダーだったりしたら、相手のダブルスイングを読み合うもっと高度な心理戦が繰り広げられていただろう。


「はい、すいません。ボールを回収し終えました」

 マスコット先生が戻ってくる。そして、ナイフとボールを関係なしに6つの球に変えた後ピッチングマシンの玉置き台に置いた。


「───」

 そして、8回裏が始まる。折角試合にでてくれた奈緒が可哀想なので、ここから試合終了まではノーカットでお送りしようと思う。

まぁ、あからさまに死ぬかもって思わせる展開で俺がキャラを殺すわけないですよね。

そして、『バッターナイフ』の心理戦感が唐突にお遊びのように...

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
[良い点] ううむ。 意外と淡々と進んでますな。 まあ本気で描写したらページ数が とんでもない事になりますからね。 面白いゲームだけど、演出の仕方が大切ですよね。
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