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5月6日 その㉖

 

「蓮也、俺は次にナイフを投げる。だから、蓮也はスイングしろ」

「───え?」


 康太の、ナイフを投げるという宣言。それにより、蓮也は驚いたような声を上げていた。

 でも、それはそうだろう。攻撃側の際に、勝てる時はナイフを「ダブルスイング」に当てるときだけ。


 なのに、それを放棄したというのだ。


「なんで...」

「俺は、人を殺す勝負がしたいんじゃない。人を生かす勝負がしたいんだ」

「───」


 そう、康太がデスゲームに参加してくれたのは誰かを殺すためじゃない。智恵を助けるために参加してくれているのだ。


「智恵を助けるために蓮也───君を殺すなんて絶対に間違ってる。だから、俺は智恵も蓮也も両方救いたいんだ。まぁ、勝負に負ける気はないけどね」

「───」


 蓮也は、まだ疑いのような目で見ているようだった。それも、仕方がないことだろうか。教室では中立かもしれないが、今このデスゲームの中では康太は蓮也にとって敵なのだ。


 ───その言葉を、無闇に信じるのは命取りだ。


「別に、俺がナイフを騙ってボールを投げてもスイングならば塁が進むだけだ。それならば、問題ないだろう?5球目にナイフとボールの2択になるが、それでも5割の確率の運ゲーなんだ。いや、ナイフにダブルスイングの2つの確率といては1/4だから25%か?」


 もし康太の宣言が嘘で4球目に「ボール」を投げた場合の5球目は

 ボールースイング ボールーダブルスイング ナイフースイング ナイフーダブルスイング

 の4つの可能性があるので単純計算で25%になる。


「俺を信じられないのなら、信じなければいい。でも、俺は皆で生きていたい───この言葉は嘘じゃない」

「───僕は...」


 蓮也は、口元を歪める。蓮也も、靫蔓に強制的にデスゲームに参加させられて辛いのだろう。

 脅されデスゲームに参加させられた後じゃ、味方すらも信じられないのかもしれない。そんな状態で敵の言葉なんか信じられるだろうか。


「俺は、ナイフを投げるからな」

 そう言って、康太はピッチングマシンに1つの球を込める。康太は、蓮也にも俺達にも球に書かれた「ナイフ」という文字を見えるようにピッチングマシンに詰めた。


 そして、蓮也も首を振って何かを払拭したような動きをした後タブレットを押して選択する。


「運命の、4球目」

 マスコット先生が、これまでとは違い「運命の」という言葉を付けた。蓮也が選択したのは───


 ピッチングマシンから宣言通り放たれるナイフ。そのナイフは、1球目と同じように霊のように現れた自動で動くバットにぶつかり地面に音を立てて落下した。


「ほら、俺は嘘を付かなかった。信じてくれて、ありがとな」

「───あ、あ...」


 これで、1回表で蓮也が死ぬ可能性は無くなった。1点を獲得することは、蓮也はできないので、もう1回表は紹介試合だ。


 5球目・6球目と康太は余った「ボール」だけを投げて、蓮也は「スイング」と「ダブルスイング」の療法を使用してマスコット先生を3塁まで進めたが、本塁にまでは戻せなかったので無得点で1回表が終了した。



 1回表:得点

 挑戦者側 0

 生徒会側 0


 1回表で、点を取らせずに乗り越えることができた。そして、攻守交代が行われて康太と奈緒が守備───バッター側で、蓮也がピッチャーになった。


「それで、どうする?」

 康太のこの疑問は、どっちがバッターとして立つかというものだろう。


 康太と奈緒のどちらかがバッターとして立ち、もう片方は駒として塁を移動する。駒は、ほとんど指標のような感じなのでゲームに対して影響を与えるのは「バッター」の方だろう。


「どうする?2回の時に両方奈緒がでるのか、それとも交互にするのか」

「ボクはどちらでもいいよ。バッターとして出ろと言うのなら出るし。危険なバッターを引き受けるよ、と言うのならお願いするよ」

「───了解した。じゃあ、俺がバッターを務めるよ」


「わかった。じゃあ、ボクはまだ活躍しなくていいかな」

 そう言って、1回裏は康太がバッター・奈緒が駒になることに決定した。


 2回裏は、その逆で奈緒がバッターに、康太が駒になるだろう。


 ───と、ここで俺は康太が奈緒より一回多くバッターをやることに気が付いた。


 自分を犠牲にして、奈緒を守ろうとしているのか───そう、俺は納得した。


 康太にも、女性を守ろうとする気持ちがあったのだなと感心した───って、この言い方だと康太が女性を守ろうとしない冷酷非道な奴みたいな言い方になってしまう。


 康太は、誰にでも優しい真のヒーローのような存在の人物だった。靫蔓に言わせると俺が主人公らしいが、俺に言わせれば、主人公はクラスの中心であり輝いている康太になるだろう。


「タブレットに映し出されてたのか」

 そんな言葉を口にする康太。そして、康太はすぐに選択をした。


「1回裏、1球目」

 マスコット先生が、それを口にしたということは蓮也も選択を終えたことの裏付けであった。


 そして、ピッチングマシンから放たれたのは───



 ボール。


 そのボールは、康太の方へ迫り。そして、康太の背後から現れた腕に持たれたバッドにぶつかりボールは反対方向に飛んでいった。


 蓮也は「ボール」を康太は「スイング」を使用した。

裏話

1回表が終わった後、スイングとダブルスイングで飛ばされたボールは全てマスコット先生が走って集めました。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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