5月6日 その㉑
***
第4デスゲーム『分離戦択』の3回戦に向けて、出場するメンバーを決める。
「───2回戦で負けたから、4回戦まで確実に出るようになった。ここで、せめてしっかり勝てるようにしとかないと」
俺は、集まってくれた安倍健吾・中村康太・西村誠・西森純介・睦月奈緒5人にそう述べた。
「さっき決めたチームじゃ駄目なのか?」
健吾の質問に、俺は小さく首を振った。
2回戦の前に決めた誠と康太のペアは、2回戦に勝った想定だったから破綻してしまったからだ。
「もしかしたら、5回戦まで続くかもしれない。それなら、ここはしっかりチームを考えないと」
俺は、そう述べた。
「それと、最終勝負は俺と靫蔓の両方が出るはずだ」
俺は、そう予想を立てた。4回戦が最終勝負になろうと、5回戦が最終勝負になろうと、俺が出るときに靫蔓も出るはずだった。
「栄の予想は正しいと、俺も思うよ」
康太が、俺の仮説に同意してくれる。
「───じゃあ、最終勝負は栄と一緒に俺を出させてくれ」
「───誠?」
そう述べたのは、誠だった。誠も、最終戦に出るというのか。
「俺も、靫蔓とは因縁がある。それが理由にはならないか?」
「僕は別に構わないけど...」
「ボクも賛同するよ」
誠に同意するのは、純介と奈緒の2人だった。康太と健吾は何かを考えているのか無言を貫いている。
「残りの3人は反論は?」
おっと、俺も何も言っていなかった。
「俺も問題ないよ」
「あ、あぁ。俺もないよ」
「オレもだ」
「では、全員賛同ということで、俺は最終戦に栄と一緒に出る」
誠はそう宣言した。
「じゃあ、僕は健吾と一緒がいいかな...」
純介も小さく手を挙げて自分の意見を述べる。
「じゃあ、俺は奈緒と一緒か」
「よろしく頼むよ、康太」
「おう」
───と、こうして
栄・誠ペア、健吾・純介ペア、康太・奈緒ペアの3ペアが決定した。
「よし、じゃあ3回戦は誰が出ようか?」
俺は最終勝負じゃないと出れないらしいので、出れるのは実質的に健吾・純介ペアか康太・奈緒ペアの2択だった。
誰が出るか、数秒沈黙の時間がやってくる。そして───
「それじゃ、ボク達が出よう。それでいいよね、康太」
「───あぁ。問題ないよ」
奈緒が志願し、康太も了承する。俺たちもそれで構わなかったので、頷いた。
「───それじゃ、行こう」
2人は、教室の前方にある白板によりかかっている靫蔓の前に移動する。
飛騨サンタマリアと神戸トウトバンダーの2人がいつの間にか姿を消していたために、白板の前に立っていたのは被り物を外した靫蔓と、未だにマスコットと同じ被り物をしている人物がいた。その人物の体つきは女性だった。
───ならば、今度の相手は女性だろうか。
「「勝負をするなら公平に。公正に。平等に。上品に。品行方正に。ズルのないキレイなスポーツマンシップ溢れる勝負をしよう。俺は拒まない」」
心のキレイな2人が、これまでとはまた違った選手宣誓を行った。美しい宣戦布告。
「ボクの相手は誰だい?どんな相手だろうとボクは敗北なんかしないし、敗北する気もないよ。真っ向勝負で、相手を打ち負かすのが好きなんだ。その時の心臓の鼓動が快感だよね」
「勝負をしよう!クラスメートが連れ拐われているのなら、友達の恋人が連れ拐われているのなら、俺は居ても立っても居られない!皆みたいに上手いことは言えないけれど、俺は自分の気持ちを伝えるよ!」
敵の中堅として前に出たのは───
───靫蔓だった。
「───んなっ!」
「んや、違う違う。俺が相手じゃない。お前らの予想通り、俺は主人公とやり合いたいからな」
「じゃあ───」
「出てこいよ、おい!」
そう、靫蔓が怒鳴る。もしかして、最初からでここに来ていなかった5人目が登場するというのか。
「は...はい...」
靫蔓にドヤされ、渋々弱々しく立ち上がったのは、紫がかった髪をしていた小柄の少年───第5回デスゲーム参加者であり出席番号21番の少年───成瀬蓮也であった。
「───んなッ!」
靫蔓は、用意していた。第5回デスゲーム参加者に、伏兵を。
きっと、脅して仲間にしたのだろう。しかし、何故成瀬蓮也を?
「第4ゲーム3回戦に出場するのは、コイツだ」
そう言われて、成瀬蓮也は靫蔓に肩を抱かれる。成瀬蓮也は、ガタガタと震えていた。
───どうやら、この様子を見るに脅されていたのだろう。
「蓮也は震えている!靫蔓、脅したんだろう?卑怯だぞ!」
「いいや、卑怯じゃない。お互い同意の上だ。だから、全く問題はない」
「───マスコット先生、これはありなんですか?!」
「私は一向に構いませんよ。幸い、お互い同意の上らしいですしね」
絶対に、同意の上ではない。脅して頷かせただけだろう。でなければ、成瀬蓮也はこんなに震えたりしない。
「それに、挑戦者側はかなり優勢じゃないですか。それなのに、文句を言うんですか?」
「───それは...」
マスコット先生に助けを求めた康太だったが、マスコット先生も靫蔓側だったようだ。平等とは、よく言ったものだな。
「───ということで、3回戦は成瀬蓮也に出場させる。これは、決定事項だ」
───3回戦が康太・奈緒vs蓮也であることが発覚した。
───この時はまだ、俺達は知らなかった。生徒会側の思惑を。
成瀬蓮也、これまでちょくちょく出ていたけどスポットが当たるのは初。
それを言ったら睦月奈緒もですね。
ちゃんと、色々なキャラにスポットライトを当てたいと思っています。モブのまま殺したくないですし。