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5月6日 その⑯

 

 稜と神戸トウトバンダーは、再度隣に並んだ。そして、一つの結論にたどり着く。


「───これ、結論つかなくね?」

 稜の正論であった。このままでは、決着がつかない。いや、正確には稜は勝つことができない。


 ───と、言うことであった。


「マスコット先生!これ、俺勝てないんですけど!」

「では、諦めて負けたらどうです?」

「「───」」


 稜も神戸トウトバンダーも黙り込んでしまう。角行の斜めの動きしかできない稜は、このまま敗北から逃げ惑うことしかできないし、神戸トウトバンダーも小賢しく稜を追うことしかできない。


 ───要するに、王手に持っていけないのだ。


 間欠泉が、相手の動きを封じるように───例えば、稜の斜めの4つを囲んだり、神戸トウトバンダーの8方位を囲む───くらいしか勝敗する方法がない。


 かつ、稜が勝つのは神戸トウトバンダーの8方位全てを囲まれ、桂馬飛びで行ける場所の1つ斜め下にいるしかない。

 だが、間欠泉は8個もでないので稜の勝ち目は神戸トウトバンダーを端っこに追いやっての間欠泉しかないのだ。


この試合いたち(つまらないな、)ごっこが続くだけ(勝つだけの試合なんて)

 神戸トウトバンダーは、そう呟く。


マスコット先生、(相手を飛車と角行)ハンデを与えてくれ。(の両方の動きを)いいだろう?(できるようしてくれ)

 神戸トウトバンダーの、舐めプのような言葉。俺達は、完全に馬鹿にされている。


 逆に、こちらに勝たせてくれようとしているのではないか。ひどく、不平等であった。


「そこまで言うのなら───」

「マスコット先生、俺は敵から塩なんか受け取らねぇ。だから、そんなハンデいらねぇ!」

 俺も、稜の言葉に納得だ。智恵を救いたいのは納得だ。だが、ここでハンデを貰ったのを弱みにつけこまれてしまう可能性だってある。

 2回戦で負けても、結果的にはプラスになる可能性が大きいのだ。


「───」


 そして、俺は気付く。心の中で、稜は負けてもいいと思ってしまったことに。


 突如として現れた葛藤。これまでもマスコット先生のせい───だとは思わない。これは、俺の心の弱さだった。仲間を信じられていない証拠だった。


「稜、勝て」

 俺は、そう呟く。


「もちろんだ、栄!」

「───ッ!」


 俺の呟きは、どうやら稜に届いたらしい。誰にも聞こえないような声で呟いたはずなのに。


「───って、堂々とカッコつけて偉そうなことを言ったけどこっから勝てる見込みがねぇんだよなぁ...」

 稜は、笑いながらにそう呟く。


 そして、稜は1歩右斜め上に動く。


挿絵(By みてみん)


 12ターン目挑戦者側 稜(角行)3三


挿絵(By みてみん)


 12ターン目生徒会側 トウトバンダー5三


「えぇっとですねぇ...ハンデとは言いませんが、ゲームは中々終わりそうにないですので、少しルールを変えることにしました!」


 そして、浮かびだされる『パラジクロロ間欠泉』のルール。


 2回戦『パラジクロロ間欠泉』のルール

 1.生徒会側は歩兵・香車・桂馬・銀将・金将・王将の全てを合わせた動きをすることが可能。

 2.挑戦者の片方は角行と同じ動きを、もう片方は飛車と同じ動きをすることが可能。

 3.相手チームのいる駒に行けば相手を退場させることが可能。

 4.相手チームを全滅させたほうを勝ちとする。

 5.退場になった人物は、試合に戻ることは不可能。

 6.1ターンに動けるのは1チーム1回のみ。

 7.3ターンに一度、ランダムなマスに1個から5個の「間欠泉」が現れる。間欠泉は、3ターンで消える。

 8.「間欠泉」が現れたマスには留まることができない。


 そして、マスコット先生はルール7を拡大した。


 7.3ターンに一度、ランダムなマスに1個から5個の「間欠泉」が現れる。間欠泉は、3ターンで消える。


「えぇ...このルールなんですが...少し数を変えます!」

 直後、マスコット先生は指パッチンを鳴らす。すると───


 7.3ターンに一度、ランダムなマスに1個から79個の「間欠泉」が現れる。間欠泉は、3ターンで消える。


「───んなっ!」

 間欠泉の数が、一気に5個から79個まで増えたのだ。


「───さぁて、設定も変えたことですし何個の間欠泉ができるか、楽しみですねぇ!」

 マスコット先生は、ノリノリで設定を変えた。靫蔓(うつぼかずら)の許可すら取らなかった。


 やはり、マスコット先生権限は強いようだ。


「おい、稜はハンデを望んで───」

「ハンデではありません。マンネリ化を解消するためです。これじゃ、見てる人だって楽しめませんから」


 マスコット先生はそう述べる。実際、少しマンネリ化してきてはいた。諦めて、勝負を早く付けるつもりなのだ。


「はぁ、全く。どうせ結果は見えているのに...くだらないですね...」


 直後、稜と神戸トウトバンダーのいる将棋盤が揺れ動く。そして、大量の間欠泉が飛び出ていった。



「嘘...だろ?」

「おいおい、マジかよ...」

「こんなにたくさん、信じられないわ!」


挿絵(By みてみん)


 現れたのは、数え切れないほどの間欠泉。左側の縦4列は、全て使い物にならなくなってしまった。


「さぁさぁ、もうすぐ決着がつきますよ!勝つも穿つもお好きなように!さぁ、新しい第2ゲーム『新生・パラジクロロ間欠泉』の開幕です!」


 マスコット先生のゴリ押しでルールが改変された『パラジクロロ間欠泉』この運営に振り回されるのもまた、デスゲームの醍醐味なのだろうか。

138手目までやったけど、決着がつかなかったので...

ルール改変大変申し訳ない!!許してくれ!!!俺を!!


ちなみに、1〜5個のときの間欠泉は乱数で決めてました。手動でやると、ゲーム性が減りますし。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
[良い点] うわぁ。 間欠泉が5個から79個だと!? でもこうでもしないと決着つかないか。 苦肉の策ですな。
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