表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

205/746

5月6日 その⑮

 

 ───第4ゲーム『分離戦択(ぶんりせんたく)』の2回戦『パラジクロロ間欠泉』は、挑戦者(こちら)側が不利な状況で場が進んでいた。


 いや、2人だったのが1人に減って相手と同じ人数になったからトントンにまで持ち込まれたのかもしれないが、最初の状態から考えれば相対的に不利だということは間違いない。


 稜は、これまでに一度も動いていないので、角行の初期位置である8八で止まっていた。

 対する、神戸トウトバンダーは3三にいる状態だった。


 今は挑戦者(こちら)側の───稜が動くターンなのだが、マスコット先生が仕組んだのかどうかわからないが、4四に間欠泉が現れて、王手が無くなってしまった。


 この状況、どっちが優勢かどうかわからない。

 いや、斜めにしか動けない稜と、上下左右斜め好きな所に確実に1マスずつ動ける神戸トウトバンダーであれば、後者のほうが絶対的に有利だろう。


 この状況で、勝利するにはそれこそ間欠泉を利用するしかないだろう。


「ったく、歌穂がいなくなっちまって俺とトウトバンダーとのタイマンになっちまった...」

 稜の目には、未だ光は消えていなかった。まだ、勝てる未来が見えるというのか。流石は稜。頼りにしているだけある。


「灯台下暗し───ってのとは少し違うけどよ。こういうのは近付いたほうが有利になる方が多いんだよ」

 そう言って、稜は神戸トウトバンダーの方へ進んでいく。止まった所は、5五であった。


 4ターン目挑戦者側 稜(角行)5五


挿絵(By みてみん)


 間欠泉を挟んで、対面している状態。

 だが、この状態でのこの行動は悪手だと俺は捉えた。だって───


勝利へと更に1歩(仲間が消えて焦った)近付いた(のか?)

 神戸トウトバンダーは、桂馬飛びで、稜の隣まで一気に迫ってくる。尚且つ、そこは角行である稜が行けない場所であった。


挿絵(By みてみん)


 4ターン目生徒会側 トウトバンダー4五


「おいおい、忘れてたよ...桂馬飛びなんて...」

 以外にも、盲点になりやすい桂馬飛び。まぁ、チェスのナイトとは違い8方向ではなく2方向であるために変則的な動きで前に進む程度にしか利用しないだろうから抜けてても当然だ。


 俺は、覚えていたけどね。


「───って、稜もトウトバンダーの横に?!」

 試合から退場になった歌穂が俺達のところに戻ってきた。こっちに帰ってくるのに少し時間がかかったようだ。


「間欠泉のことは驚かないの?」

「ここに戻ってくるまでも試合の状況は見えてたから。なんか、水晶から覗くみたいな...地図を見てるときのようなそんな感じで。3次元の映像が見えたよ」

「───そうなのか...」


 マスコット先生達デスゲーム運営が、高度な技術を持っているからと言ってもうほとんど驚かない。時間を飛ばしたり巨大な施設を急に作り出したり俺達を転移させたり、美術室に本物の絵画が飾られていたり。


 漫画とかでも、デスゲームを行っているのはお金持ちの見世物───とかだったりするし、デスゲームのGMもお金がないとできないのだろう。


 ───と、神戸トウトバンダーに隣に来られてしまった稜はどう動くのだろうか。


 稜は、上手く動かないとならない。間欠泉があるのでこれ以上右上に進むことはできない。動くとしたら、右下か左上。そして、戻ることにはなるが左下だろう。


「しょうがない...動くとするか」

 稜は、そう言って左斜め上にまで動く。


 5ターン目挑戦者側 稜(角行)7三


挿絵(By みてみん)


 稜は、間欠泉で止められるまで進んだ。だが、いい決断だったと言えるだろう。


 後ろに下がる───ということは、神戸トウトバンダーを進軍させるということと同義だ。

 神戸トウトバンダーは、香車や桂馬の動きができるから、かなり前に進ませることが可能なのだ。


 だが、後ろを下がる術はほとんどないに等しい。どの方向にも下がれるが、下がれるのは1歩ずつであった。


 後ろに下がる性能というのは、稜の方が高いと言えるだろう。だから、そこを上手く利用して勝利しようとしているのだ。


「───って、言うか駒が1つずつの将棋とかほとんど勝負つかねぇだろ!」

 稜のツッコミ。それは、酷く正しいものであった。この後、5ターン以上お互いに動いても文字通り一進一退の攻防で勝負がつかなかった。


 5ターン目生徒会側 トウトバンダー5四


 6ターン目挑戦者側 稜(角行)9五


 6ターン目生徒会側 トウトバンダー6六


 間欠泉が2一・7三・3六・8七に出現


 7ターン目挑戦者側 稜(角行)8四(王手)


 7ターン目生徒会側 トウトバンダー7六


 8ターン目挑戦者側 稜(角行)9五


 8ターン目生徒会側 トウトバンダー8五(王手)


 9ターン目挑戦者側 稜(角行)5九


 稜が後ろにまで下がったのは、前方に出ようとしても無理だったからだ。7三に間欠泉があるため、稜がいた9五から前に進むのは8四───これは、神戸トウトバンダーの真後ろになり、次ターンで負けることになるのでそれができなかったのだ。


 故に、稜は一番うしろのところにまで下がったのであった。


 9ターン目生徒会側 トウトバンダー7六


 間欠泉が4三・7七に出現


 10ターン目挑戦者側 稜(角行)2六


 10ターン目生徒会側 トウトバンダー6五


 11ターン目挑戦者側 稜(角行)4四


 11ターン目生徒会側 トウトバンダー5四


 ───このターンで、再度神戸トウトバンダーと稜が並んだのだ。4ターン目とは逆の立ち位置で並んだのであった。


挿絵(By みてみん)

5〜11ターン目は自分の目で確認してください。

これだけの量を作るとなるとかなり時間がかかる...

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨城蝶尾様が作ってくださいました。
hpx9a4r797mubp5h8ts3s8sdlk8_18vk_tn_go_1gqpt.gif
― 新着の感想 ―
[良い点] この戦いは想像以上に頭使いますね。 図表入りだから読者的には理解しやすいけど、 書き手としては色々大変ですね^-^; 間欠泉が厄介ですね。 というかこの勝負一対一で勝てるのか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ