5月6日 その⑬
第4ゲーム『分離戦択』のルール
1.チームは生徒会側・挑戦者側の2つに分かれる。
2.生徒会側は5人・挑戦者側10人の参加者とする。
3.ゲームは最大で5ゲーム行うこととする。
4.1ゲームにつき生徒会側が1人、挑戦者側が2人出場する。
5.有事でゲームに参加できなかった場合、補欠として新たな参加者を用意する。
6.先に3勝したチームの勝ち。
7.ゲームの内容は、ゲーム開始前に挑戦者側が指定する。
8.負けたチームは全員死亡する。
9.挑戦者側が勝利したら、参加者に5万コインを配布する。
10.生徒会側が勝利しても、賞金に値するものはない。
11.挑戦者側が敗北したら人質も死亡する。
俺達の目の前にあるのは、巨大な将棋盤であった。1マス1m四方の正方形だから、全体としては9m×9mの巨大な正方形だ。
俺達が立っているところは、コンクリートでできており、地平線が見えるほどまでにそれが続いている。
「───で、靫蔓。2回戦『パラジクロロ間欠泉』のルールを説明してくれ!」
「あぁ、わかった。その前に、今回ゲームに参加するトウトバンダーと、山田稜・細田歌穂の3人は先に乗っちゃってくれ」
「あ?あぁ、わかった」
「了解した」
「わかったわ」
3人は、そう言うと少し高くなっていた巨大な将棋盤の上に乗る。すると───
”ゴゴゴゴゴゴ”
巨大な壁が地面から生えてくるような音がして、巨大な将棋盤は上空に持ち上げられる。
「うおっ、上にあがってる!」
「まるで演劇の迫りのようね」
「上げて何をするんだ」
俺も、将棋であることはわかったが特に詳しいルールは何もピンとこなかった。人間将棋をするにしても、人数が少なすぎるだろうし。
そして、3人をあげたのは将棋盤を上昇するためだったのか。
「それじゃ、説明しようじゃないか!『パラジクロロ間欠泉』のルールを!」
靫蔓がそう大きな声を出して発表しようとする。周りも先程までざわめいていたが、その声を聞くと皆黙り込んだ。
「へぼ将棋玉より飛車を可愛がり───という言葉があるのはご存知だろう?」
もちろんだ。初心者は、取られてはいけない王 (または玉)よりも強い飛車を取られないようにしてしまう状況のことを言い表している言葉だ。
「この言葉にある通り、飛車は強い例として挙げられてんだ。じゃあ...こうは思わないか?飛車よりも強い駒なんて、本当に無いのか?って!」
まぁ、ないだろう。序盤は飛車より角という言葉もあるが、それはやはり序盤の話だし。
「───ということでルールを発表する!」
そして、壁のように数メートルほど高くなった将棋盤に浮かび上がった『パラジクロロ間欠泉』のルール。
2回戦『パラジクロロ間欠泉』のルール
1.生徒会側は歩兵・香車・桂馬・銀将・金将・王将の全てを合わせた動きをすることが可能。
2.挑戦者側の片方は角行と同じ動きを、もう片方は飛車と同じ動きをすることが可能。
3.相手チームのいる駒に行けば相手を退場させることが可能。
4.相手チームを全滅させたほうを勝ちとする。
5.退場になった人物は、試合に戻ることは不可能。
6.1ターンに動けるのは1チーム1回のみ。
7.3ターンに一度、ランダムなマスに1個から5個の「間欠泉」が現れる。間欠泉は、3ターンで消える。
8.「間欠泉」が現れたマスには留まることができない。
ルールだけ見ても、どっちが有利か判断できないようなゲームであった。単体では、角行や飛車の動きには勝てないが、角行と飛車以外の全てを融合すれば別だった。
生徒会側───神戸トウトバンダーは、前方には無制限に動けて、前以外の7方も1歩ずつ自由に動けて桂馬飛びもできる。そんな動きが可能であった。
かなり、奇怪な駒だろう。だが、それでも飛車や角行と同じくらいの強さになったと考えている自分がいる。
「じゃ、俺のは決まったから、今は待ちか」
重要かどうかはわからないが、どっちが角行でどっちが飛車を担当するのかを決めなければならない。
「稜はどっちがいい?」
「俺?べつにどちらでもいいけど」
「どっちでもいいは困るのだけれど...じゃあ、アタシが飛車にするわ!」
「了解。じゃ、俺が角行をやるよ。頑張ろうな」
「もちろんよ。負けたりなんかしたら赦さないからね」
「わかってるわかってる。俺も本気を出すよ」
「そう、ならいいわよ」
「んじゃ、3人共将棋での位置に移動してくれ。あ、トウトバンダーは王将の位置な」
靫蔓がそう声をかけると、3人は移動する。
稜が8八・歌穂が2八・神戸トウトバンダーが5一であった。将棋の基礎配置だから、これ以上の表現の使用はないだろう。
将棋初心者のために説明しておくと、1一が一番右上で、9一が左上になっている。要するに、英数字が小さければ小さいほど右側で、漢数字が小さければ小さいほど上だ。
「───んじゃ、先攻後攻はじゃんけんで決めてくれ。俺はルール説明が終わったし、傍観に徹するからな」
「了解しました」
「それで、じゃんけんするわよ」
「じゃんけんだね」
「|最初はグー!じゃんけん、ぽん!」
声だけがするが、俺達の高さからは何も見えない。どっちが勝ったのだろうか。
「よし、じゃあ先攻が私達ね。決定よ」
「負けてしまったか」
どうやら、じゃんけんはこっちが勝ったようだ。ゲーム内容がじゃんけんならば、これでこっちの2勝だったのだが、まぁそんなに甘い訳では無いし問題ないだろう。
「下の皆さんは、楽しくないでしょうしこちらは御覧ください」
マスコット先生が、どこからか持ってきた巨大なテレビ。そこには、上空からの将棋盤が映し出されていた。
「じゃ、早速勝負しましょう!」
そう言って、歌穂は稜との相談もなしに勝手に動き出してしまう。飛車の動きができる歌穂は、直進できる所まで進んでいった。
1ターン目挑戦者側 歌穂(飛車)2八