5月6日 その④
第4ゲーム『分離戦択』のルール
1.チームは生徒会側・挑戦者側の2つに分かれる。
2.生徒会側は5人・挑戦者側10人の参加者とする。
3.ゲームは最大で5ゲーム行うこととする。
4.1ゲームにつき生徒会側が1人、挑戦者側が2人出場する。
5.有事でゲームに参加できなかった場合、補欠として新たな参加者を用意する。
6.先に3勝したチームの勝ち。
7.ゲームの内容は、ゲーム開始前に挑戦者側が指定する。
8.負けたチームは全員死亡する。
9.挑戦者側が勝利したら、参加者に5万コインを配布する。
10.生徒会側が勝利しても、賞金に値するものはない。
11.挑戦者側が敗北したら人質も死亡する。
靫蔓が、発表した第4ゲーム一回戦のゲームの名前は『リバーシブル・サッカー』であった。「リバーシブル」も「サッカー」も理解できる。でも、それを繋げると理解ができない。
「七」も「夕」も納得した読み方けど、「七夕」になると少し納得できないようなやつと同じだろうか。
前に由来を調べてみたが、あんまし納得はしなかった。昔の人ってよくわからん。
───と、今大事なのは『リバーシブル・サッカー』のルールだ。
「そんじゃ『リバーシブル・サッカー』のルールを説明する」
そう言うと、靫蔓は白板に何かを張り出した。そこに書いてあったのは───
第4ゲーム1回戦『リバーシブル・サッカー』のルール
1.ゴールをコートの両端に用意し、そのどちらかにボールを入れたら、ボールを入れたチームが一点を獲得する。
2.得点が入ったら、コートの中心に戻り、点数がはいっていない方のボールから始まる。
3.最終的にシュートした際の点数が多かった方のチームの勝利。
4.ボールは基本足で触れる。腕でボールを触った場合、どちらかのチームに点数が入った後に5分間ゲームの出場が停止される。
5.試合は1R45分。
『リバーシブル・サッカー』のルールが公開される。
ルールは普通のサッカーとほとんど同じ。だが、一番違う点はコートの両端にあるどちらのゴールにボールを入れても得点になるというところだ。
要するに、オウンゴールが存在しないということだ。本来のサッカーなら、オウンゴールしたら相手のチームの得点になるが、『リバーシブル・サッカー』ならばオウンゴールしても自分の得点になる。
「サッカーのゲームバランスが崩壊してる...」
「ちょっと待ってくれ、これはサッカーへの冒涜か?」
そう抗議の声を上げたのは、他の誰でもない康太であった。彼は、純粋無垢なサッカー少年であるから抗議したいのもわかる。
「サッカーへの冒涜じゃない。サッカーへの挑戦だ」
靫蔓はそう述べる。サッカーへの挑戦以外にも、こう言い換えることができるだろう
───サッカーへの革命、と。
ゲームバランスの崩壊。それが、本来のデスゲームの姿だろう。
「拓人、大丈夫。オレはこれで問題ないよ」
「オレもだ。古典的なスポーツだが、それは逆に革新的で前衛的だ」
拓人と鈴華は納得しているようだった。
「私も問題ない、と強がって言ってみるが、内心心臓がバクンバクンとなっていた。私は心理戦を得意としているから、サッカーなどのスポーツは苦手なのだ。負けてしまったら申し訳ない、と私は心の中で仲間に謝りながらも、1回戦に対して強気に望むことにした。」
「それじゃ、グラウンドに移動しようぜ」
拓人の声掛けによって、俺達はグラウンドに移動する。すると───
「用意させていただきました、サッカーグラウンドです!」
教室の窓からは見えなかったはずなのに、人工芝が敷かれたサッカーグラウンドが用意されていた。いつの間に用意していたのだろうか。
「今回はこちらのコートで行っていただきます!3人は...ユニフォームにチェンジ!」
そう言うと、プ◯キュアみたいな感じで拓人と鈴華・飛騨サンタマリアの体が光っている。
「うわっ、なんだこれ。モゾモゾする、くすぐったい」
どうやらくすぐったいようだった。プ◯キュア、毎週のようにくすぐったいのは少し大変そうだな。
───と、拓人のはともかく他2人の着替えをマジマジと見るのはやめておいたほうがいいので、俺は人工芝のコートの方を見た。
人工芝のコートの両端には、サッカーゴールが用意されていた。これのどちらかに入れれば得点になるのであろう。
「───と、着替えが終わったようですね!」
マスコット先生の声を聞いて、振り向くとそこにいたのはサッカーのユニフォームを着た拓人と鈴華・飛騨サンタマリアであった。もちろん、拓人達のユニフォームと飛騨サンタマリアのユニフォームは別の色だ。
「それでは、コートの真ん中に移動してください!最初は、挑戦者からのボールとなります!」
マスコット先生が、マイクを持ってそう述べる。俺達は、人工芝の外に用意されていたパイプ椅子の上に座る。
俺の右隣に座ったのが稜。左隣に座ったのが康太だった。
「康太は、サッカーが好きなんだっけ?」
「あぁ、そうだよ。だから、この『リバーシブル・サッカー』はあまり納得行ってない」
「どうして?どうしてって、こちらが圧倒的に有利すぎるんだよ」
「そうなのか?」
「あぁ、どっちのゴールにボールをシュートしても点が入るのなら、最初から相手のいる方向にツッコんでいくわけがない。だから、ほぼ確定で自分の後ろにあるゴールに───本来のサッカーなら自陣のゴールの方に移動していくはずなんだ。そしたら、試合はほとんどマンネリ化しちゃう。それに、こっちが2人いるなら相手の勝ち目はほとんどないはずなんだ」
「あぁ...そういうことか...」
数で有利だから、このまま何も無ければ勝利することができる。ならば、1回戦は安寧だろうか。
「───それでは、第4ゲーム『分離戦択』1回戦は『リバーシブル・サッカー』!最初で最後のラウンドを開始しようと思います!」
マスコット先生の声がグラウンドに響く。
”ピー”
笛が鳴り、試合が開始する。最初は、こっち側のボールだ。
最初にボールに触れたのは鈴華。
───鈴華は、ボールを手に取るとラグビーのような体勢になり、タックルで自分の目の前にあるゴール───通常のサッカーでシュートを狙う方のゴールに突っ込んでいった。