5月5日 その⑧
「奈緒のことを仲間にいれてんだからよぉ、第3ゲームで手伝ってやったオレのことを仲間にいれてくれないなんざ、言わないよな?」
そう言ってチームBの寮から出てきた安土鈴華。彼女の手には、金属バットがあった。
「俺は困らないどころか、仲間になってくれるのならありがたくなってもらうんだけど...デスゲームだぞ?」
「オレは、強いやつと喧嘩がしてぇだけだ。負けなきゃ死なねぇんだろ?なら、そんならデスゲームじゃなくて格闘ゲームじゃねぇか。オレは負けねぇから問題ねぇ」
実際、鈴華は第3ゲーム『パートナーガター』でも負けていなかった。廣井大和に勝利してから失神したし、廣井大和がやってきたのは失神した後だった。
「───んじゃ、オレは仲間に入れてもらおう。問題ねぇだろう?」
「あぁ、問題ない」
「よかったじゃないか。鈴華さんにも手伝ってもらえて」
「あぁ、そうだな」
「───って、鈴華はどうして第4ゲームのことを知ってたんだ?もしかして、盗み聞き?」
「あ?えっと...それはだな...まぁ、ピンときたからかな?」
「納得行かないんだが...」
まぁ、鈴華は4月16日のクイズ大会で未来視とも取れる謎の力で未来を当てたから、この程度驚くことはない。
俺は、鈴華と奈緒の2人の元を後にして、最後の一人を勧誘しに行く。正直言うと、決まっていなかったので東堂真胡のいるチームGに向かう。すると───
「栄、オレにも手伝わせてくれ!」
チームGの玄関の扉を開ける前に、出てきたのは柏木拓人だった。もしかして、拓人も未来を見えたりするのか?
「話は皇斗に聞いたんだ!智恵が昔の生徒会に誘拐されたって!」
どうやら、森宮皇斗が動いてくれていたらしい。そして、色々と納得した。
森宮皇斗が「アドバイス」でなく「手伝い」と言った理由。そして、睦月奈緒を自分の枠ではなく真胡の枠で推薦した理由がわかった。
皇斗は、拓人を仲間にするために説得に動いてくれていたようだった。俺が、愛香と話しているときにでも説得しに言ったのだろう。
皇斗が推薦したのは2人。睦月奈緒と柏木拓人。いや、柏木拓人は推薦じゃなく自分の代わりとしたのだから皇斗にも認められた逸材なのだろう。
「拓人も協力してくれるのなら、頼りになって嬉しいよ!」
俺は、拓人の手を握る。
「でも、デスゲームだけど大丈夫?」
「あぁ、友達の彼女を助けるのに、命が怖くて行動できるか!少しでも行動できるのならオレはするって決めたんだ!」
拓人の目はキラキラしていた。まるで、何かの贖罪かのような瞳。皇斗は、何を言って拓人を誘ったのだろうか。
───と、これで10人は揃った。
池本栄・山田稜・安倍健吾・西森純介・細田歌穂・西村誠・中村康太・睦月奈緒・安土鈴華・柏木拓人の10人。
───俺は、チームCの寮に戻った。
「ただいまー」
「おかえり、栄。どうだった?」
「しっかり10人集めてきたよ」
男子最強と女子最強は仲間にならなかったけど、かなり豪華なメンバーが揃った。このメンバーなら、靫蔓にも勝利できるだろうか。
俺は、稜達に仲間にした残りの6人のことを伝えた。
「へぇ、奈緒さんか...オレも話したこと無いな...」
「俺もだよ。栄、よく接点なんかあったね」
「いやいや、皇斗に話を勧誘しに言ったら余の代わりに...って」
「へぇ、そうだったんだ」
───こうして、仲間は集まった。智恵を助けるのに、後必要なのは勝利することだけだ。
「それで...栄。勝算はあるのか?」
「2vs1ってことだけしかわからないから、どんなゲームか予想できないんだよね...でも、負ける気はないよ。それは、皆一緒だと思う」
「そうか、そうだな」
───そして、俺達は明日に備えることにした。
全く、休まることのないゴールデンウィークとなってしまったようだ。
***
「おい、お前」
「───ひっ。え、ちょ、え」
一人の少年の部屋に現れたのは、第3回デスゲームの生き残り───靫蔓であった。
「お前、明日のデスゲーム。俺等の陣営として出てくれよ」
「え、え、ぼ、僕が?」
「あぁ、お前なら...わかってんだろ?」
「い、いや...ほ、ほら、僕。そ、そんな強くないし...そ、そ、それこそ、僕以外の誰かがいいかと...」
「いいや、お前だ。お前なんだ」
「───」
靫蔓も第5回目デスゲーム参加者から5人目の参加者を決定したようだった。
その人物の正体は───第4ゲームで勝負が始まるまで内緒にしておくことにしよう。
───と、これで第4ゲームの出場者は全て出揃った。
***
「第4ゲームの出場者も全員揃ったか...」
黒いスーツを着た人物───GMは、栄と靫蔓の行動を俯瞰視点のカメラのようなもので見ていた。
「どんな試合を見せてくれるのでしょう。楽しみで楽しみで仕方がない」
そうして、笑みを浮かべるGM。
「こちらも、勝負できるような場所を手配しておくか。靫蔓に、後でルールを聞いて置かなければならないな。さて、靫蔓はどんなゲームを思いついてくれただろうか...」
───第4ゲームが始まるのは、もうすぐのようだ。
今回、準備に少し時間をかけすぎたか?