5月5日 その①
───こどもの日の早朝。
子供は起きていないような時間に、俺は目が覚めていた。
───いや、目が覚めていたという言葉は間違っているだろう。俺は、ここまで一睡もできていないのだ。
理由は明確であり明白で、智恵が靫蔓に攫われたからであった。
その場で助けられるような行動はできず、第4ゲームで勝利しなければ返ってこないことになってしまった。
───その為に、第4ゲームに参加する仲間を10人───正確には、俺を抜いた9人を集めなければならなくなってしまった。
「9人か...」
協力してくれる仲間は、何人も思い浮かぶけれどその仲間を命の危機に立たせてしまうと考えると少し誘うのに億劫になる。
「森宮皇斗は死なないと思うから協力を要請してもいいけれど...」
森宮皇斗を誘うとしても、残りは8人だ。
紬や梨央に美緒を危険な戦闘に出す訳にはいかない。稜や健吾は手伝ってくれるだろう。
「───でも、智恵を救うためには声をかけるしかない...」
俺は、そう決める。それが、徹夜して考えた答えだった。いつ始まるかは靫蔓は教えてくれなかった。
「誘う人を決めないと...」
俺は、誰なら手伝ってくれるか。そして、勝率が高いかを考える。
───そんなことを考えていると、結局一睡もできずに朝になってしまった。
「えっと...まずは...」
俺は、一階のリビングに移動する。
「あ、おはよう。栄」
「おはよ」
「おはよう、稜、純介。健吾は?」
「まだ寝てるよ」
「あ、そう。なら、2人には先に話しておく」
「な、何?」
「大事な話か?」
「あぁ、命に関わる程の話だ」
「───わかった」
「智恵が、靫蔓に攫われた。次のデスゲームで俺達が勝たないと殺されちまう」
「「───」」
2人は、俺の言葉を聞いて黙り込んでしまう。
靫蔓が誰かは、保健室で初めて邂逅した後に話していたから、どんな立ち位置の人物かはわかっている。それに、靫蔓なんて名前の人物、一度聞いたら忘れないだろう。
「それで、第4ゲームに出れるのは10人だけなんだ。協力してくれ」
俺は、2人に頭を下げる。命をかけてもらうんだ。そのくらいのことをして当然だろう。
「栄」
「な...に?」
「第4ゲーム、10人しか参加しないんだろう?他の24人は───いや、智恵は誘拐されたから23人か?まぁ、どっちでもいい。三十何人は参加しないの?」
「あぁ...そう言うことだ...」
純介は、俺にそんな質問をした。断られてしまうのかも───
「それなら、是非とも僕で良ければ協力させてくれ」
「───純介...いいのか?」
「もちろん」
「死ぬ可能性が...あるんだよ?」
「智恵が死んだら、栄も紬も悲しむだろ?やらず後悔するよりやって後悔したほうがマシだ」
「純介...」
「もちろん、俺も協力させてもらうぜ?」
「いいのか、稜!」
「あぁ、もちろんだ!智恵が危険な目にあってるのに、俺達が助けに行かなくて誰が行くんだ?」
「稜!」
「話は聞かせてもらった!オレも協力させてくれ!」
「健吾!いいのか?」
「あぁ、オレも仲間に入れてくれ!」
「ありがとう、皆!」
チームCの皆は、協力してくれるようだった。
「───それで、ちなみにどこから話を聞いてたの?」
「あ、えっと...智恵が危険な目に〜〜って、ところかな?」
「全然話聞いてないじゃんか!」
稜の質問に健吾が答えて、純介がツッコむ。でも確かに、「話は聞かせてもらった」と言うほど話を聞いていない。
「僕達合わせて4人だけど...後の6人はどうするの?」
「協力してくれそうで、尚且つ勝ち目がありそうなメンバーは選考してあるよ」
「そっか、じゃあメンバー収集は栄に任せることにするよ」
「あぁ、任せてくれ」
───俺はそう言った後、朝の諸々の準備を終わらせた。
そして、午前10時ほど。俺は家の外に出た。
「んじゃ、招集してくるよ」
「オッケー。頑張ってね」
「あぁ」
俺は、仲間集めを開始する───前に、チームFの寮に向かう。
「おーい」
俺は、家の外から玄関の扉を少し開けて声を出す。
「はいはーい!あ、栄...」
俺のところにやってきて、少し気まずそうな声を出したのは、美緒であった。
「聞いてくれ、智恵が靫蔓に攫われた」
「───!」
美緒は、何かに気付いたような顔をした。そして、その場に膝から崩れ落ちる。
「連れてかれちゃった...の?」
「あぁ、俺のところにわざわざやってきたんだ」
「よかった...いや、よくないけど...家出のようにどこかに行っちゃったから...どこにいるかだけでもわかってよかった...」
最初、扉を開けた時に気まずそうな顔をしたのは智恵が部屋から出てこないことに───部屋にいないことに気付いていたからだろう。
「それで、智恵は連れ攫われたの?
「あぁ。攫われた」
美緒達にも同じく靫蔓のことは話していたから一々説明することは必要ない。
俺は、美緒に第4ゲームのことを説明する。
「それに勝てれば...いいのね?それで、10人って...」
「美緒や梨央・紬のことは危ない目に合わせることはできない...愛香とか鈴華とかなら協力を要請しても大丈夫そうだけどね...」
「はは、ごめんね。私は弱くて。今回も、足手まといになるのは避けたいから10人には入らないことにするよ」
もしかしたら、美緒は第3ゲーム『パートナーガター』で梨央が無数の刃物に刺されたことを自分のせいと思っているのかもしれない。
刺された梨央のことは、ある程度フォローしたつもりだったが、美緒までは手が回っていなかった。
「美緒は足手まといじゃないよ。美緒がいなければ、第3ゲームで死んでいたのは廣井兄弟じゃなくて俺達だったかもしれない」
「───そう。そう言ってくれたら嬉しいわ」
美緒はそう言うと、微笑みかけた。
「それじゃ、梨央と紬には私から話しておくから。栄は10人の───いや、残り6人を探すのを頑張って」
「あぁ、わかった。ありがとう」
俺はそう言うと、仲間の第一候補───いや、稜達を含めると第二候補に会いに行く。
新キャラと絡みを入れたい。