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5月3日

 

 ───憲法記念日の午前9時。


 俺は、珍しくそんなに遅くまで眠っていた。いや、純介が扉を叩いて起こしてこなければまだまだ眠っていただろう。王子様のキスを待ち望んでいる白雪姫のような感じで。


 だが、別に俺は毒で眠っているわけでも呪いで眠っているわけでも魔法で眠っているわけでもないので扉を叩く音で目を覚ました。智恵のキスで目を覚ませるならそれより幸せなことは無いだろうけれどそんなのは俺の妄想の範疇を出ない。


「───おはよぉ...」

 俺が寝ぼけ眼を擦りながら返事を

「大変大変!健吾の名前が書かれた夜の騎士(ナイト・オブ・ナイツ)が破れたんだ!」


 状況描写も許されることなく、純介が伝えるべき内容を伝えてきた。せめて、状況の描写くらいはさせてくれ───などと思って


「だから、これは昨日健吾が禁止行為を何か起こしてしまったんだよ!」


 状況描写を放棄して、自分の感情を描写し始めたのは悪かったけど、せめて最後まで話させてく


「もしかしたら、健吾が禁止行為がわかるかも!」

「人のツッコミくらい最後までさせてくれ!」


 俺は思わず声が出てしまった。地の文を介入させたツッコミってのは俺が始めてかもしれない。

 うん?地の文ってなんだ?」


「ツッコミ?そんなのしてなかったじゃん。寝ぼけ眼を擦りながらおはようって返事した後、栄は一言も喋ってないよ?」

「そうか...言われてみればそうだよなぁ...なんか、靫蔓(うつぼかずら)に変な影響を受けたのかもしれないな...」

 そういう事で、地の文をボケに使用するのは終わりにした。


「───んで、夜の騎士(ナイト・オブ・ナイツ)ってどんなだっけ?」

 純介が4月2日にマスコット先生から貰って、4月3日の深夜に健吾の名前を書いた───ってことは覚えている。


「でも、なーんかマスターの説明が長ったらしくて忘れてしまったよ...」

「僕は覚えているからもう一回説明すればいい?」

「流石純介。浅識非才の俺にもわかるように説明してくれ」

「そんなこと言われても...僕もそんなに語彙力がないから急に言われて当意即妙に答えられるかわからないよ...」


 お互い天才なようだった。まぁ、真に語彙力がない奴は浅識非才も当意即妙も会話の中に出てこないだろう。

 ていうか、日常生活の中で「当意即妙」を使う高校生、かなりカッコいい。


 近所のおばちゃんに褒められる語彙力だね。やったー。


「───んじゃ、説明よろしく」

「わかった。夜の騎士(ナイト・オブ・ナイツ)の効果は、この紙に名前を書かれた人───今回の場合は健吾が、一度だけ禁止行為を行っても守られるんだ。その代わり、夜の騎士(ナイト・オブ・ナイツ)はビリビリに破れる───って感じかな?」


 夜の騎士(ナイト・オブ・ナイツ) この紙の裏に購入者以外に守りたい者の名前を書くと、一度だけ禁止行為を行っても守られる。禁止行為を行った場合、夜の騎士はその日の終わりにビリビリに破れる。この紙が破れる前に、二度目の禁止行為を行った場合、騎士に守られた人も死ぬ。この紙を複数枚購入し、名前を書いても一日に守られるのは一度のみ。燃やす、破るなどを行うと効果がなくなる。


「へぇ...そう言えばそんなんだったな...」

「それで、今日の朝確認したら破れてたから、昨日健吾は禁止行為を一度犯した───ってこと」


「そうか...夜の騎士(ナイト・オブ・ナイツ)は毎日確認してたの?」

「うん、もちろん。第3ゲームで別の場所に移動させられた時は確認できなかったけど、それ以外は朝起きたら破れているか確認するようにしておいたよ───って言うか、机に飾るようにして置いてあるから自然に目に入るって感じだけれどね」


 それなら、今日破れたってのはかなり信憑性が高いだろう。もちろん、純介が言うことは疑っていないけれどね。


「人の手で破られた───って、純介の部屋に置いてあったってことはそれもないか」

 昨日は訪問者なんか来ていないし、純介の部屋は普通、純介がいないと開けることはできない。ならば、破ったことは純介は気付くはずであった。


「それじゃ、昨日健吾は禁止行為を犯してた───ってことだな」

「そういうことになるね。まぁ、朝起きて最初にそう伝えたんだけど!」

「はは、すまんすまん...」


 どうでもいい会話と、同じことの確認でここまで時間を食ってしまったようだ。


「───んで、問題は昨日一日の間に健吾が何をしたかだよね」

「うん」

「破れたことは健吾に話したの?」

「もちろん。朝一に話したよ。少し緊迫感持った顔してたよ。紙だからほぼ守られてる気はなくても、無ければ死んでたんだからかなり驚いたんだろうね」


 そうだ。もし、夜の騎士(ナイト・オブ・ナイツ)が無ければ健吾は死んでいたのだ。


「問題は健吾が昨日何したかだよなぁ...」

 昨日は、森宮皇斗が田中・コロッセオ・太郎を瞬殺するのを見た後、そのまま普通に生活したつもりだった。


「言葉系なら、調べ上げるのは難しいだろうね」

「そうだね」


「まぁ...破れたよって言う報告だけでした」

「あ、はい。わかりました、了解です」

「リビングに戻るか」

「わかった。俺ももう起きるよ」




 ───憲法記念日は、健吾の夜の騎士(ナイト・オブ・ナイツ)が破れただけで、他は特に変わったことはなかった。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
[良い点] 皇斗、強いというか悪魔の領域!! でも確かに強すぎる個は、 集団生活じゃ足枷になりますよね~。 そして田中某、確かに台詞がない!
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