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5月2日 その②

 

 ***


「───しょ、勝者は、森宮皇斗ォォォォ!」

 グラウンドに響くのは、マスコット先生の声。マイクを通して、グラウンド全体に聞こえるようにしている。


「───」

 俺は、開いた口が塞がらなかった。何が起こったのか。


 森宮皇斗と田中・コロッセオ・太郎の勝負は一瞬で終わったのだ。マスコット先生が言った通り、森宮皇斗の勝利で。


「今...何が起こったの?」

 勝負が一瞬で終わり、その内容が理解できていないのは、俺の隣に座った智恵であった。


「ごめん...俺にも何が起こったのかさっぱり...」

 まるで、悪魔のように森宮皇斗は田中・コロッセオ・太郎から命を奪ったのだ。まるで死神のように、森宮皇斗は田中・コロッセオ・太郎から魂を吸い上げたのだ。


「───悪魔か...なにかかよ...」

 そんな感想を口に出す。本当に、恐ろしかった。


 人の命を摘み取るのがそんなに簡単な行為だと言うのか。多分、裕翔をボコボコにした時だって、皇斗はかなり手加減していたのだろう。

 殺めないように気をつけながら殴っていたのだろう。


「これで終わりか?思ったよりも軟弱だったな。第3ゲームの臨時教師は、栄達を苦戦に追い込んだらしいから、相当の実力だったのだろう?それならば、ソイツを生き返らせてくれ」

「───それは...できません...」


 マスコット先生は、少し考えつつもそう答えた。

「それに、別に蘇生してるわけではございませんし」


「そうか───ならば、マスコット先生。アナタが相手してくれ」

「───それは...」


「相手、してくれ」

「───」

 マスコット先生も、かなり困っているご様子だ。


「お断り───」


 ”ダッ”


 その刹那、森宮皇斗が動いた。リングを飛び越えて、そのままイベント用テントの下で実況席に座っていたマスコット先生に向かって。


「はぁ...しょうがないですねぇ...」

 マスコット先生が、ため息をついたようにして立ち上がる。その直後───







 ───マスコット先生は消えた。


「───」

 予想通りかと言うように、森宮皇斗はその場に着地する。


「今、ここに来ている皆に質問だ。相手がどこから来ても対処できる人物と、未来が見える人物が戦った時ってどうなるかわかるか?」

「未来を見て、対処できないところを探す?」


「対処できないところが無いとしたら、だ」

「未来が見える人物の勝ち目はないから...逃げるを選択する?」

「そうだな」

 康太が皇斗の質問に答え、皇斗がそれに賛同する。


「それが、どうしたって───」

「マスコット先生は逃げた。一縷の望みなんかに賭けるような人ではないしな」

 皇斗は、淡々とそう答える。


「皆は、帰った方がいい。それが今日のところは安全だ」

 皇斗の言葉に従うように、俺達は帰ることを選択した。智恵を送るためにチームFの寮まで行った。


「なんだか、今日は夜更かししたのによくわからなかったなぁ...」

 一瞬のこと過ぎて、智恵は田中・コロッセオ・太郎が死んだことにさえ気付いていないようだった。


 実際、皇斗は田中・コロッセオ・太郎に一度触れる程度で勝利したのだから、殺されたと言っても納得できないだろう。


「玄関まででいいかな?」

「うん、いいよ」

 智恵が小さく頷いた。


「それじゃ、また...明日?また後で?」

「そうか、0時を過ぎているからわからないのか」

 そのまま、智恵は家の中に入っていく。


「ただいまー」

「あ、智恵。おかえりー」

 智恵が寮の中に入っていく。中からは梨央の声が聞こえた。どうやら、皇斗vs田中・コロッセオ・太郎の試合を梨央は見に来ていなかったようだ。


 ───と、思ったけど梨央はまだ怪我が完治してはいないからあまり出歩かない方がいいので正しい判断であっただろう。


 そのまま、俺は自分の寮に戻った。

「ただいま」

「あ、おかえり」


 皇斗vs田中・コロッセオ・太郎の試合を、別の場所で見ていた稜達3人はもう帰っていたようだ。

 別の場所で見ていたと言っても、別に嫌っているわけではなく俺と智恵が2人になれるような気遣いのようなものだった。


「なーんか、面白くなかったな」

「まぁ、一瞬だったからね」

「皇斗は危険だよ...」

 三者三様の言葉を並べている。発言した順番は健吾・稜・純介だ。


「皇斗は危険か...俺はそう思わないけどね」

「栄は...まぁ、皇斗から気に入られてるみたいだしね」

「それはそうだね。でも、皇斗は前は手加減をしていただろうし、大丈夫だと思うよ?」


 俺はそんなことを言った。

「うーん、そうだといいけれど...」



 ───俺はこの時知らなかった。


 ───あまりに強大な力は、集団行動には却って足手まといになることを。





 5月2日は、その後何も起こることなく終わった。


 ───いや、何も起こることが無かったと言うと嘘になるだろう。


 それが、5月3日の出来事と言えばいいのか、5月2日の出来事と言えばいいのかわからないが、それが起こった要因が5月2日であるから、5月2日の出来事と言うことにしておこうか。


 ───と、勿体ぶった前置きをしてしまったような気がする。何が起こったのか、明記しておこう。







 ───健吾の名前を書いておいた夜の騎士(ナイト・オブ・ナイツ)が破れていたのだ。

夜の騎士 (ナイト・オブ・ナイツ) この紙の裏に購入者以外に守りたい者の名前を書くと、一度だけ禁止行為を行っても守られる。禁止行為を行った場合、夜の騎士はその日の終わりにビリビリに破れる。この紙が破れる前に、二度目の禁止行為を行った場合、騎士に守られた人も死ぬ。この紙を複数枚購入し、名前を書いても一日に守られるのは一度のみ。燃やす、破るなどを行うと効果がなくなる。

お値段5万コイン





田中・コロッセオ・太郎、セリフ無し!

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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