5月2日 その①
閑話が思いつかなかったのでパス。
───5月2日午前0時。
一日の始まりと共に、グラウンドに現れたのはボクシングが行われそうなリングが用意されていた。
これは、七不思議其の壱のエキシビションマッチとして行われることになった「森宮皇斗vs先代生徒会」の勝負場所であった。
そこに集まっているのは、その試合を見届けんとする野次馬達であった。
もちろん、そこに俺の姿はあった。
───ていうか、七不思議 其の壱に参加した人物は、見物を強制された。
「予定開始時間だから、もうすぐ始まるみたいだね」
少し眠たそうな目を擦りながら俺の腕に頭を預けているのは俺の彼女である智恵であった。
「そうだね」
七不思議に参加していない人たちは、先程の「帝国大学附属高校」のチャット機能で任意で呼び出された。
まぁ、深夜であるから眠い人もいるだろう。
「───それでは、選手出場です!」
リング近くに、イベント用テントの下で「実況解説」と書かれた札の前にマイクを持って座っていたのがマスコット先生であった。
───そして、リングの上に現れたのは第5回参加者の中で誰に言わせようと一番の天才であろう森宮皇斗であった。
彼は、ボクサーのような青いトランクス一枚だけで立っていた。筋骨隆々であり、且つ肌は白く綺麗であった。
「元がイケメンで、運動も勉強もできて...もう、勝つべき部分がない...」
「栄には私がいるでしょう?」
「そうか、皇斗には彼女がいなかったか。俺の勝ちだな」
「おい、栄。聞こえてるからな?」
「う」
どうやら、皇斗に聞こえていたようだった。
「七不思議其の壱をほんの数時間でクリアし、今回のバトルの権利を掴みこんだ、天才の中の天才!森宮皇斗!!そして、対戦相手は〜〜!」
そして、現れたのは平凡な少年。
イケメンでなければ、ものすごくブサイクでもない。背が驚くほど高くなければ、背がビックリするほど低いほどでもない。太っているわけでもガリガリなわけでもない。全てが平凡そうな人間であった。
かと言って、キャラクター人気ランキングなどでは最下位ではなくしたから俺は7番目とかいうネタにもされないような立ち位置の人物であろう。
「前回の───第4回デスゲームにて生徒会で生き残った凡才中の凡才!田中太郎!」
その平凡な人間は、名前でさえ驚くほど平凡だった。
「───と、いけないいけない!ミドルネームを忘れていました!」
マスコット先生が訂正を入れる。
「田中太郎───いや、彼の名は!!!田中・コロッセオ・太郎!!!!」
田中・コロッセオ・太郎。
それが、森宮皇斗の対戦相手の名前だった。
「田中・コロッセオ・太郎...すごい名前ね」
「そうだね、コロッセオなんて名前で中々聞かないし」
小学生並みの感想を、俺は智恵と言い合っている。田中太郎っていうネーミングセンスも小学校の教科書並だった。
「───それでは、両者が揃いましたので、再度ルールの確認です!」
マスコット先生が、声を張って話し始める。2人は、リングに立ってお互いを見合っていた。
「ルールはたった一つだけ!相手を殺した方が勝利です!」
「先生、降参は無いんですか?」
「あるとお思いですか?」
「───」
康太の説明に、マスコット先生は煽るような感じを含めて返答する。
───降参できないと言うことは、田中・コロッセオ・太郎は随分の実力者のようだった。
「───それでは、ルールも振り返ることができましたので、早速試合を始めようと思います!コングがなれば、勝負は開始します!それでは、スタート!」
”カーン”
マスコット先生が手元にあったコングを鳴らして、勝負が始まった。
***
とある空間。
その部屋で、2人の男女で話していた。
この二人の正体を先に話しておくとすると、2人は田中・コロッセオ・太郎の同期であり仲間である第4回デスゲームの生徒会であった生き残りであった。
「それにしてもマスコット先生も人が悪い。対戦相手は可哀想だな」
「そうだね、と私は口に出す。そして、同情したような目でこう付け加えた。でも、対戦相手が自分を高く見積もりすぎたのだから、当然の罰だよ、と。」
前者が神戸トウトバンダーであり、後者が飛騨サンタマリアであった。
神戸トウトバンダーが男であり、彼は綺麗なブロンズ髪をしていた。口は一つしか無いはずなのに、2つのことが重なって聞こえる。
そして、飛騨サンタマリアは女であり、本来は腰まである銀髪を首の後ろで綺麗に結んでいた。小説の地の文のような喋り方を彼女をしていた。
「何々?私は仲間はずれなの?」
そこに入ってきたのは金髪の少女───第5回デスゲームの最初でチュートリアル的に殺された───否、殺す演技をした松阪真凛こと松阪マリンであった。
「呼ぼうとしたのだが見つからなかった。気分を害してしまったのなら謝る。すまなかった」
「ここに入ってきたのは、マリンであった。彼女は、少し怒ったかのように頬を膨らませると私の隣に座った。私は、彼女の機嫌を良くするかのようにこう述べる。ごめんなさい、と。」
「全く、心理描写までもを口に出しちゃ、あんまり反省してるのが伝わらないじゃない...まぁ、マリアちゃんのことはわかってるから別に何も言わないけどねぇ」
「そう言いながら、マリンは私の頭を幼子を慰めるかのように、猫に触れるかのようにして優しく撫でる。」
───第4回デスゲームの生徒会もこれで全員集合した。
だが、彼ら彼女らは全員田中・コロッセオ・太郎よりも単純な戦闘力では下回る。皇斗は、田中・コロッセオ・太郎に勝てるのだろうか。
生徒会、やはりキャラが濃い...