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5月1日 その④

七不思議其の壱『20cmの高揚感』のルール

1.ゲーム参加者は全員、用意された階段に移動する。

2.階段に乗った者は、全員階段の頂上を目指して階段を登っていく。

3.最下層まで降りてきてしまったゲーム参加者は死亡する。

4.誰か一人が頂上にたどり着いたらゲーム終了。ゲーム参加者は全員、学校に戻ってくる。

 

 俺達の目の前に広がるのは、巨大な階段であった。

 階段の横幅は、非常に長く20mはあると思われる。一段20cmほどで何段あるかは数えられなかった。


 数えられないどころか、この階段の終わりが見えない。

 階段は、神社の階段のような石ではなく、学校のような階段であった。学生の俺達には、歩き慣れた階段だった。


「はいはい!皆さん注目!」

 声がした方向を見ると、そこにいたのはマスコット先生であった。まぁ、声でわかっていたんだけどね。

 彼は、気球に乗っていた。そして、俺達のことをその双眸で見ていた。


 双眸で───なんて言ったけど、マスコット先生は被り物をしているからこちらではその双眸は確認できないのだけれど。被り物が向いている方向から、こっちを見ていると判断つけたってわけだ。


「とりあえず、一番最初からの参加者が現れました!今、皆さんがいるのがこの階段の最下層になっております!ですので、一度階段に登ってしまったら、その足場には戻ってこれませんので!忘れ物をしたら駄目ですよ?」


 忘れ物をするも何も、手ぶらで来ているから忘れ物などの問題はないだろう。


「一番最初に頂上まで登った人の所属するチームが勝ち!ただ、それだけのゲームです!それでは、頑張ってくださいねー!」

 マスコット先生は、そうルールを確認した。


「では、3...2...1...スタートです!」


 ”パンッ”


 マスコット先生が、スターターピストルを放つ。これにて、勝負が始まった。


「よし、行くか!」

「そうだね」

 俺達は、ダッシュすることなく1歩ずつ着実に進んでいった。俺達以外のチームの人も進んでいるようだった。


 ───ここで、参加している人物とチームを確認していこうと思う。


 まず、俺と健吾・純介に稜のチーム。

 そして、岩田時尚に津田信夫のチーム。

 女子の竹原美玲や安土鈴華・園田茉裕がいるチームもある。

 先程話した宇佐見蒼や中村康太・渡邊裕翔がいるチーム。

 そして、森宮皇斗が個人で参加している。


 ───いるのは、このくらいだろうか。


 合計13人が七不思議其の壱には参加している。


「───まぁ、ゆっくり行きますか!」

 俺達はそう言うと、階段を一歩ずつあがっていく。これから先、何段もあるから走る必要はないだろうと感じたのだ。ていうか、最初の方で体力を使い切る方が頭が悪いような気がする。


「───あ、栄きゅんもゆっくり行くんだピョン?」

 そう言って、俺に絡んできたのは宇佐見蒼であった。なんだか、今日はかなり絡んでくるような気がする。


「あぁ、別にここで急いでもあまり意味はないしな。あれ、康太と裕翔は?」

「裕翔がろくに話も聞かずに突っ走っていったから康太がそれを追いかけて行ったピョン」

「追いかけなくていいのか?」

「チームの誰かが頂上にたどり着けばいいんだピョン。なら、ボクはゆっくり登っていくピョン!」

 言われてみれば、それも賢い登り方だろう。


 このまま、裕翔と康太が走って頂点まで登っていけば蒼もそのままポイントを手に入れることができる。

「ズル賢いな、お前」

「ボクは賢いって言われるより可愛いって言われる方が嬉しいピョン」

「ズル賢いな、お前」

 俺は、蒼の話をスルーした。


「───んで、計画的に体力を残していく人と、走って行く人でわかれたな」

「あぁ、そうだな」

 健吾が、俺と蒼の会話の間に無理やり話題をねじ込んでくる。


 周りを見ると、安土鈴華・園田茉裕も階段を歩いて来ていた。後ろを振り向くと、先程まで乗っていたはずのスタート地点の足場は消えていた。


「歩いているのが、あそこの2人だとするなら...美玲とかは走っていったのか?」

 走っていったであろう人物は、蒼が言っていた康太と裕翔。そして、岩田時尚に津田信夫に竹原美玲。後は、森宮皇斗であろう。


「オレらは、ゆっくり話しながら行こうぜ。もしかしたら、皆昼寝してるかもしれないし」

「ウサギとカメじゃあるまいし...それに、今は夜だから昼寝じゃなくて本寝(ほんね)だよ!」

本寝(ほんね)ってなんだよってツッコみたいが、ツッコむのは無粋だからやめておくよ」

本寝(ほんね)ってなんだピョン?変な造語作るとか頭悪そうだピョン。普通の睡眠とかでいいと思うピョン!そんじゃ、バイバイピョーン!」


 俺の造語である本寝(ほんね)は宇佐見蒼の全否定された。夜寝とか、使ったほうがよかっただろうか。


 ───と、そんなことはどうでもよく。


「宇佐見蒼も結局は走って言っちまったな」

「そうだね...」

 純介がちょっと引いたような目で見ていた。何か言いたそうだ。


「どうしたの?」

「いや、男なのに語尾がピョンで痛いっていうか...ちょっと狂ってるなって...」

「人のキャラ付けを否定してあげないでくれ」

「てか、宇佐見(うさみ)って名前だからウサギってかなり安直だよ...動物が名前に入れば、語尾はその鳴き声になるの?」

 純介に色々と悪口を言われてしまう宇佐見蒼。少し可哀想であったが、口には何も出さなかった。



 そして、しばらく階段を登っていくと───。


「現在1位は森宮皇斗君!開始から1時間32分で50%まで到達しました!」

 マスコット先生の、そんな声が聞こえてきた。どうやら、皇斗はもう半分を通り過ぎていったらしい。


 そして───


「一人が半分を突破したので、エレベーター機能をオンにします!」





 ───マスコット先生の言葉と共に、俺達が乗っている階段は、下りのエスカレーターのように下へ下へ下がっていく。



 ───これが、七不思議其の壱の真の姿なのであった。

普通の階段ではなく下りのエスカレーターでした。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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