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5月1日 その②

 

 俺が寮に戻ったのは午後3時30分程のことであった。


「あ、栄。手術は無事に成功したか?」

「失敗してたら俺はここにいないよ」

「ハハッ!それはそうだな」


 健吾にそんなことを聞かれたので、正論という名のツッコミで返した。

「全く、栄がお腹を怪我して帰ってきた時はびっくりしたよ...僕達は悲しいことに梨央救出隊に誘われなかったし...」

「ごめんごめん」


 俺は、ティーカップでハーブティーを飲んでいる純介に謝罪する。

「まぁ、でも僕がいても足手まといになってだろうし...」

「それはそうだな。純介は逃げてばっかで戦力にはならなさそうだ」

「ちょ、健吾!失礼だなぁ!」

 純介は、健吾に失礼なことを言われていた。


 ───なんだか、いつも通りの雰囲気に戻っていたような気がした。


「そうだ、アレのこと話せば?一応、誘うんだろ?」

「あぁ、うん。そうだった」

「アレって?」

「フッフッフッ!聞いて驚け見て驚け!栄、アナタには2つの選択肢を暮れてやる!今月の土日の夜に───」


「あぁ、七不思議とか言うやつ?なんか、やるみたいだね」

 俺は、ノリノリで七不思議の健吾を遮るようにして口を開く。セリフを取るってのはお約束だろうし。


「知らないと思ったのに知っていたか!クソォ!」

 健吾が、orzみたいな格好をしてうなだれている。


「んで、七不思議がどうしたの?」

「僕達で参加してみようかなぁ...って。デスゲームって言ってもどの程度かわからないじゃん?だから、参加して試してみようかなって」

「ふーん...危険だったらどうするの?」

「ヤバいね」


「ヤバいねって...解決策になってない!それに、第2ゲーム『スクールダウト』の本戦の時みたいに多分、辞退は赦されないぞ!それこそ、一人辞退したら、チームの全員が死亡する───みたいな、酷なルールに決まってる!」

 俺は、七不思議に参加したそうな健吾や純介にそう述べた。


「なら、栄は参加しなければいい。オレは興味本位で参加することにしたよ」

「んな...」

「僕も、少し賞金に目が眩んじゃってね...」

「稜は...」

「栄、お留守番よろしくな!大丈夫、智恵となにかしてたって、何も言わないから!」


 ───どうやら、俺以外の皆は全員七不思議に参加するようだった。


「えぇ...一人にしないでよ...俺も参加するよ!」

「お、本当か?さっきのじゃ、危ないからやめとけって言ってたのに」

「俺がいないところで、全員が死ぬのは困るから」

「そうか、可愛い奴め」

「くっ殺せ!」

「栄、残念ながらくっころさんは殺せないんだな!」


 変な会話だ。聞いてて恥ずかしい。ちょっと、ツンデレっぽいことを言っておくか。


「べ、別に皆が死んだら不安とかじゃないんだからね!お、俺も賞金が欲しいから!」

「そうか、森宮皇斗が、昨日の小テストでは5万コインを獲得してたからおねだりすればいくらかくれるはずだぜ?」

「人の友情と羞恥心を見くびったな!万死に値する!」


 やはり、変な会話だ。やはり、聞いてて恥ずかしい。


「んじゃ、チームはこの4人でいいか?美緒達を危険に曝すわけにはいかないだろうし...」

 健吾がそう言った。

「うん、それでいいと思うよ。僕も紬を危ないところに連れて行こうとは思わないからね」


「んだよ、お前ら...わかりやすいな...」

「うん、何が?」

「何のこと?」


 多分、健吾は美緒のことが好きだし、純介は紬のことが好きなようだった。稜は梨央のことが好きなのはもはや火を見るよりも明らかで、俺と智恵は付き合っている。


 そう考えると、チームCとチームFで上手くカップリングが成立する。チーム内で、奪い合いに発展することもないからグッド!


 ───と、チームの皆は天才なのにも関わらず、恋愛に関しては滅茶苦茶疎かった事が発覚した。


「それじゃ、七不思議に参加する際は18時に校門前でチームで集合───らしいから。17時50分位に出発しようぜ」

 健吾がそうまとめた。俺は、七不思議に参加するために色々準備した。


 まぁ、この一週間病室で過ごしていたから色々準備は必要なのだ。着替えとかしなくちゃいけないし、ちゃんとシャワーにも浴びなければ。




 ───と、色々準備をしていたらすぐに17時50分に。


 俺は、時間厳守なのでしっかり準備は終えていた。皆に迷惑かけられないし。


「それじゃ、行くか」

 そう言って、俺達は校門に向かった。そこには、数人の人影とマスコット先生の姿があった。


「あ、栄きゅんだピョン!」

 そこにいたのは、宇佐見蒼であった。その傍らには、中村康太と渡邊裕翔もいた。


 他にも、人を見てみると岩田時尚に津田信夫・竹原美玲や安土鈴華・園田茉裕なんかもいた。


「よぉ、蒼」

「怪我は大丈夫だピョン?栄きゅんの体はざぁこざぁこだから、お腹がパックリ割れて、中から臓物が飛び出て、黄色い脂肪をダラダラと垂らしながら、まるで亡者のような顔をして生き延びた───って聞いたんだけど」

「なんで、そんな生々しいんだよ!黄色い脂肪のところとか聞きたくなかった!」


 俺は、蒼とそんな会話をする。蒼と仲良くなったのも、なんだかんだで共に第2ゲーム『スクールダウト』を乗り越えたってのもあるのだろう。


「はい、皆さん注目!時間になりました!」

 そう言って、声をあげるのはマスコット先生であった。


「本日から、5月の終わりまで土日の夜にだけに開催される、デスゲーム!七不思議の其の壱です!」


 マスコット先生は、夕日に被り物を照らされながらそう述べる。


「七不思議其の壱のタイトルは───『20cmの高揚感』です!」


 マスコット先生の口から、七不思議のタイトルが発表される。


 ───これにて、七不思議其の壱『20cmの高揚感』は幕を開けた。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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