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4月1日 その⑬

クエスチョンジェンガのルール

1.ブロックタワーの中から、ブロックを抜き取る。

2.抜き取ったブロックは、手元に残しておく。

3.倒さずにブロックが抜き取れなくなるまで(パーフェクトジェンガ)になったら、終了。

4.質問に嘘で答えて死亡したら負け。

5.赤いジェンガを抜き取って死亡しても負け。

6.一人、負けが決まったらゲームは終了する。

7.参加拒否及び、パスすることは不可能。

 

 俺の4周目。


 目の前にあるジェンガは、震えを止められていない。

「これは...もう、倒れちゃうだろ」

「やっぱ、栄を助けるためにも俺が赤いのを引いていたら...」

 そんなことを、稜がいう。


「稜、自分の命は大切にしてくれ」

 そう、言いつつも俺が引ける場所はもうほとんどない。


 一番下から2段目の右側と、4段目の左右。6段目の左側と9段目の真ん中、10段目の右・そして12段目の左だ。


 選択肢は、ある。だけど、どれかを引き抜けばもうすぐにでも倒れそうだ。


「───」

 そう、これはデスゲームだったのだ。


{これは運ゲーではありません、心理戦です!}

{再三再四言っておきますが、心理戦です。敵を、見誤らないでくださいね?}


 マスコット先生も言っていた。これは、心理戦だったのだ。

 自らを保身するゲームだったのだ。


 今思えば、純介は14段目や15段目などの安全な位置からしか取っていなかった。

 これが、デスゲームであることに気付かないままここまで来てしまった。


 毒入りのケーキを気付かずに食べて、作用が出てから毒に気付くようなそんな感覚。もう、毒に体は蝕まれていて対策もできないような状態。


 これは、お遊びなんかじゃなかったのだ。俺は、周りを見回す。まだ、騒ぎは起こっていないので誰も死んでいないのだろう。ここまで、繋げたのだ。皆はこれが、他人を死という絶望の深淵に叩き落とすゲームだと気付いているのだろうか。


 それとも、協力してパーフェクトジェンガを目指すゲームだと思っているのだろうか。


「栄、どこにするんだ?」

 健吾に、急かされる。命知らずな面を見せていた健吾。崩れそうで崩れないギリギリを毎度攻めていた。


「一番安全なのは、12段目の左だけど...抜けないんだよな」

 健吾がくれるアドバイス。それに、耳を傾けつつ思考を止めない。


 どこが、一番安全か。パーフェクトジェンガの道は、まだ途絶えてはいない。

 このまま、奇跡的に崩れなければ続けられるのだ。


 ───体中に毒が回ったこの状況でも生き延びることができるのだ。


「ここにするよ」

 俺が、触れたのは9段目の真ん中。


 ”スッ”


「───ッ!」

 ここは、駄目だ。10段目が動いてしまった。


「あぁ、揺れが!」

 ジェンガタワーは、揺れる。揺れる。揺れる。


「そこは、やめといた方がいいな」

 健吾が、そう言う。健吾の頬にも、冷や汗があった。純介は目を見開き、稜は顔を覆い隠している。


「もっと、安全なところにしよう」

「そうだね」

「パーフェクトジェンガにすれば、皆死なないんだし」


 3人からの忠告。では、どこが正しいのだろうか。


 2段目───を、引き抜いてしまったらバランスを崩して倒れてしまいそうだ。4段目は、まだ3つ残っているが引き抜く勇気はない。5段目に、引いたら死んでしまう赤いジェンガがあるのだから。


「どこが最適解だ?」

 脳みそを回す。候補は7つ。ここを乗り越えても、パーフェクトジェンガを達成するには最低でも後1回は俺にターンが回ってくるだろう。


「やっぱり、9段目...かな」

 俺は、9段目の真ん中に手を伸ばす。上手く行けば、10段目を揺らさずに取ることができ───


 ”ガタッ”


「おい、みんな聞いてくれ!」

 他の班から出された大声に、俺はびっくりする。


 ”グラッ”


「あ!」

「おい!」


「貴様、静かにしろ!妾は今集中しているのだ!貴様の首をたたっ斬るぞ!」

 森愛香に注意される大声を出した少年。それは、中村康太だった。


「皆、聞いてくれ!このゲームで全員が生きて生存する方法を思いついた!」


「な───」

「嘘」


 俺は、中村康太の言葉に耳を傾ける。

「静かにしろと言っているのがわからないのか!その装飾にもならない2つの耳を取り外してバンズに挟んで食わせてやろうか?!」

 森愛香の憤怒。教えてくれ、生存方法を。


「す...すまない...」

 森愛香の憤怒に、中村康太は萎縮してしまう。そして、何事もなかったかのように席に座った。


「森愛香さん、怒るのはお肌に悪いですよ?」

「集中力をかき乱される方が肌に悪いわ」


 ───おい、森愛香。生存法を教えてもらえるかもしれなかったのに中村康太が萎縮してしまったじゃないか。


 ヒントは、ないに等しかった。いや、与えてくれようとしたものを森愛香が無下にしただけか。


「───クソ、どうすれば」

 そう、俺は呟いた。このまま、どこかを引いてしまえば崩れるのは()()()







 ──────あ。



 俺は、白板を確認する。そこには、こう書かれてあった。


 クエスチョンジェンガのルール

 1.ブロックタワーの中から、ブロックを抜き取る。

 2.抜き取ったブロックは、手元に残しておく。

 3.倒さずにブロックが抜き取れなくなるまで(パーフェクトジェンガ)になったら、終了。

 4.質問に嘘で答えて死亡したら負け。

 5.赤いジェンガを抜き取って死亡しても負け。

 6.一人、負けが決まったらゲームは終了する。

 7.参加拒否及び、パスすることは不可能。


「───そういうことかよ。性格悪い...」

 俺も、気付くことができた。このゲームの生存方法に。


「毒を食らわば皿まで...って言うことか」

 もしかしたら、この方法は皆が生き残る「2つ目の道」では無いのかもしれない。


 皆が生き残るのは、パーフェクトジェンガ一択しか無いのかもしれない。


 ───だが、試してみる価値はある。


「なぁ、皆。このゲームのルールを見て、おかしいと感じたことはないか?」

「ルールにおかしいところ?ないと思うけど...」


「じゃあ、こうは思わないか?どうして、わざわざ{死亡したら負け}って言葉を変えているのかって」

「「「───ッ!」」」


 俺以外の3人も気付いたようだ。


「死亡したら負けなんて、わざわざ言い換える必要は無いはずなんだ。死亡したら負け。負けが決まったらゲームは終了。2度のスッテプなんて踏まずに、死者が出たらゲーム終了でもいいはずなんだよ」


 ───ならば、何故「負け」というクッションを挟んでいるのか。


 死→負け だが、負け=死 ではないということ。


「このゲームの勝ち方は、これだ」



 俺は、目の前のジェンガタワー目掛けて大きく手を振り払う。


 ”ガチャッ”


 無数のジェンガブロックが宙を舞う。



 俺は、()()()()()()()()()()()

倒したら負け。

負け=死亡。


と、考える人も多かったのではないでしょうか。

でも、倒したら負けだなんてどこにも書いてません。


赤いジェンガを引くか、質問に嘘で答えるかのどちらかでしか死にはしません。後は、禁止行為。


え、屁理屈だって?そもそもデスゲームに理屈なんてありませんよ。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
[一言] あ、これは思った。 倒したら負けっていうルールがないなって。
[良い点] なかなかスリリングな展開になってきた。 ジョジョ三部のダービー兄のコイン投入戦みたいな 緊張感がありますね。 そして後書きをみて納得。 全盛期のカイジの作者のような悪知恵。 こういう捻っ…
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