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4月26日 その②

 

 ───智恵との、再会の時間を終えた後、俺はマスコット先生によく似た被り物をつけた女教師、マス美先生と出会った。


 そして、傷ついた腹や足りていない血など体の検査を行った。腹は、応急処置として縫ってあった糸を一週間後に抜くことを聞いた。

「───とりあえず、安静にしておけば大丈夫だから。もう、腹に刺さっていたナイフを抜いたりなんかしちゃダメよ?」

「わかってますよ」


 俺は、そう述べた。どこか、マス美先生の声は聞き覚えがあった。デスゲームが始まる以前にも、始まった後にも聞いたような気がする。

「それじゃ、後数日だけ保健室にいてちょうだい。入院───ではなく、入室かしらね?」

「わかりました。智恵、行こう」

 俺は、ほとんど必要ないが、智恵に触れていたいがためだけに、智恵の肩を借りて自分のベッドに戻る。


 すると───


「池本栄君に、村田智恵さんではないですか」

 そこに入ってきたのは、マスコット先生だった。マス美先生とは、違う。

「そんな偶然を装ったようにしていますけれど、ここは俺の病室───ではないか?俺のベッドですから、俺がいるのは当然でしょう?」

「それはそうですね。私も、わかっていてここに来ていますので」

「それで、何の用ですか?」


「少し考えればわかるでしょう。昏睡状態だった池本栄くんに、色々と話すことがあるんですよ」

「そ、そうですか...」

「あ、あの...私はいてもいいんですか?」

「はい、別にいてもらっても構いませんよ。それこそ、私がイチャラブしているところに乱入してきたんですから。あ、混ぜてもらえたりします?」

「断る」

「嫌」


 2人から、断られた。セクハラで訴えられてしまえ。


 ───と、このツッコミを冷静に考えると、デスゲームを行っている点は不起訴で、女子生徒にセクハラをしたことで警察に捕まるマスコット先生を考えるとかなりシュールであった。


 まずは、デスゲームを行っているところから起訴しよう。もっとも、今はできないけれどね。

「───それで、まずは第3ゲームの顛末でも話しましょうか」

 マスコット先生はそう言った。俺が知っているのは、全員が生き残っているということだけだった。


「まず、今回の第3ゲーム『パートナーガター』にて、5万コインを手に入れたのは、出席番号順に秋元梨花さん・安倍健吾君・岩田時尚君・宇佐美蒼君・柏木拓人君・佐倉美沙さん・園田茉裕さん・田口真紀さん・橘川陽斗君・津田信夫君・中村康太君・西村誠君・西森純介君・橋本遥さん・細田歌穂さん・睦月奈緒さん・森愛香さん・森宮皇斗君・山本慶太君・渡邊裕翔君・綿野沙紀さんの21人です」

「うへぇ...21人も...」

「そして、このゲームでも勝利を収めたことにより、現在のコイン保持数1位は森宮皇斗君となりました。2位は3人いて、宇佐見蒼君と津田信夫君と森愛香さんです」

「そうなんですか...」


「そして...」

「そして?」

 マスコット先生が何かを言うのを躊躇う。だが、すぐに笑みを浮かべてこう告げた。


廣井大和(ひろいやまと)君と廣井大和(ひろいひろかず)君が死亡しました」

「───え?」

 そう言うと、先生の両手に保持されていたのは、2人の生首であった。どちらも、首から下はバッサリと斬られており、額の中心で銃弾を撃ち込んだような痕が残っていた。


「嘘、なんで...」

「誰も死なずにクリアしたはずじゃ...」

「何を言っているんですか?私達が行っているのは()()()()()ですよ?」

 マスコット先生は、まるで死ぬのが当たり前のような顔でこちらを見ている。


「どうして...」

「簡単です。あなた方は、ゲームが終わるまで牢屋にいたら死亡するのと同じように、臨時教師である2人にも、ルールを課したのです」

 マスコット先生は、淡々と説明する。


「そのルールは、『ゲームが終わる際に、牢屋に逃げが誰もいなかったら死亡する』とね」

「それで...殺されたのか?」

「はい。平等に、死ぬ条件を付けていたのです。あ、彼らは───いや、廣井大和(ひろいやまと)君は、生徒会でしたが、弟の廣井大和(ひろいひろかず)君の方は、一般生徒でしたので、禁止行為と言うものを乗り越えて生存した───って、アチャー!」

 先生は、何かを思い出したかのように頭を抱える。


「いやー、思い出した思い出した!廣井大和(ひろいひろかず)君、一度死んでるんでしたね!兄である廣井大和(ひろいやまと)君と同じ生徒会の九条撫子(くじょうなでしこ)さんに!」

 廣井大和(ひろいひろかず)が戦いの最中、話していた人物の名が再度、登場する。


「お前は...人を生き返らせることができるのか?」

「生き返らせる?そんなこと、できるわけ無いじゃないですか!何があろうと、死んだことは変えられないんです!」

「じゃあ、なんで!」

「別の世界線から、肉体を持ってきて、死ぬ間際の廣井大和(ひろいひろかず)君の精神と入れ替えた。ただ、それだけの簡単なお話です。はい、この話はしゅーりょー!」

 マスコット先生は、2人の生首を床に置くと、拍手をして会話を終わらせた。


「あの...」

「あ、池本栄君。第4ゲームは、来週行うことになりました。第3ゲームで怪我人が出てしまい、見てる方としては面白くないですので。池本栄君は、この一週間怪我を治すのに専念してくださいね!」

 そう言うと、マスコット先生は立ち上がり、床に置いた廣井兄弟の生首を回収して、どこかに行こうとする。


 ───だが、また何かを思い出したかのように俺の方を向くと、こう告げた。


「廣井兄弟は、池本栄君が殺したことにしておきましたので。もしかしたら、廣井大和(ひろいやまと)君と同じ代である元・生徒会が仇討ちに来るかもしれません。まぁ、お元気で」

「ちょ...」

 そう言うと、今度こそマスコット先生はどこかに行ってしまった。


 俺の代わりに、智恵が率先してマスコット先生を引き留めようと行動に移したが、保健室を出たら、もうその姿は見えなくなっていたと言う。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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