4月23日 その⑨
第3ゲーム『パートナーガター』のルール
1.このゲームは、ペアで行う。必ず、最初は2人でゲームに参加する。ペアで、自分ではないもう一人の人物を「パートナー」と呼称する。
2.生徒は全員「逃げ」。先生は「鬼」となる。
3.ゲーム開始前に「牢屋」を決め、「鬼」に捕まった「逃げ」は「牢屋」の中で待機する。
4.「牢屋」の中にいる人物は、体及び衣服に触れることで「脱走」させることができる。
5.捕まった人物は、「パートナー」のみしか「脱走」させることはできない。
6.4月23日23時59分59秒に「牢屋」にいた人物は、死亡する。
7.自分と「パートナー」の両方が捕まった場合、先に捕まったほうが「自分を脱走させる」か「パートナーを脱走させる」か選ばせることが可能。
8.自分と「パートナー」が両方捕まった場合に「自分を脱走させる」を選択した場合は、6時間経たないと「パートナー」を「脱走」させることができない。
9.捕まった「逃げ」は、「脱走」できる状態でないのに、「牢屋」の外に出た場合死亡する。
10.ゲームの途中でランダムに2度、「出口」が出現する。
11.「出口」から脱出すると、ゲームクリアとなる。
12.4月22日丁度に、死亡及び「出口」から脱出して「パートナー」がいなくなった人物をかき集めて無作為に再度ペアを設定する。その際、候補者が奇数だった場合は一つだけ3人のトリオになる。トリオの際も、ルールは同じ。
13.優勝賞金は、ペアで捕まった回数が少ないチームに渡される。
「捕虜救出隊」と臨時教師との戦い。
一番の目標は、捕まった3人───菊池梨央・成瀬蓮也・三橋明里を救うことだ。
その為には、臨時教師を止める必要があるので、動きを止める。
───今回の戦いは、全て「牢屋」の中で行う。
そう、鬼である臨時教師を触れてしまうと「牢屋」に移動してしまうのだ。だが、「牢屋」にいる場合では鬼に触れたとて移動は起こらない。故に、「牢屋」の中で勝負を始めるのだ。
「牢屋」の大きさは大体半径10mほどの円形であった。故に、この外に出さずに耐えていれば勝利だ。
俺達は、臨時教師達のいる「牢屋」に向かう。美緒以外の動きは、ほとんど無視すると言うのが俺達の読みだ。だって臨時教師の狙いは梨央のなのだから。
───故に。
「オレらと喧嘩しようぜぇ!」
初撃。
それは、安土鈴華が担当することになった。彼女が喧嘩を強かったのもあったが、彼女が志願したことだったからであった。
全速力で、彼女は「牢屋」へと突っ走り、最速で臨時教師の背後に回る。まだ、安土鈴華以外に「牢屋」に到着している人はいなかった。
”ドゴンッ”
「牢屋」の中にいた臨時教師の頭蓋骨の後部に鈴華のパンチが直撃する。後ろからのクリーンヒットであった。
これで、安土鈴華は捕らえられてしまったのでもう「牢屋」の外からは出られない。
変わりに、先に捕まっていた三橋明里に「自分を脱走させる」か「パートナーを脱走させる」の2択が迫られる。
「自分を───」
「明里!まだ、使うな!この牢屋の中でコイツをぶっ潰す!」
「───ッチ。わかったわよ!助けに来なかったくせに!」
鈴華が、三橋明里が2択を答える前にそれを制する。三橋明里も、苛立ちを見せつつもそれを承諾する。
「んで、コイツは───ッ!」
直後、臨時教師の背後を取っていた鈴華が後ろにひとっ飛びする。そう、臨時教師が後ろに拳を振るったのだ。
「私は、あなた方には興味がないんですよ。私は、梨央さんの腕さえ手に入れれば問題はないのですから。ですが、あなた方が私から梨央さんの腕を奪うというのなら...許しませんよ?さて、何しに来たんですか?」
「お前をぶっ潰しに」
「ほう、面白い」
臨時教師が、振り向くと同時に鈴華に手刀が飛んでくる。鈴華は、それを横に飛ぶことでギリギリ躱し───
”ピュッ”
「───ッ!」
せていない。鈴華の頬に紅い横線が入る。そこから、鮮血が流れ始めたのだ。
「避けたつもりでいたんだがな...だが、面白れェ!潰しがいがあるってもんよ!」
鈴華の口角があがる。本人は、純粋に喧嘩を楽しんでいるようだった。
「それじゃ、僕も参戦するよ」
俺と稜・智恵の3人と杉田雷人・結城奏汰の2人も「牢屋」に到着する。
もう少しで美緒と紬・竹原美玲に東堂真胡も到着しそうであった。
「雷人。フォローを頼んだよ」
「オールライト」
奏汰は雷人にアピールをして戦闘に参加する。
「次から次へ。面倒だ...」
「軽口叩く時間はあるかな?重い攻撃が来るようだけど」
直後、奏汰から放たれる飛び蹴り。臨時教師の横腹を蹴り飛ばす。そして───
「ナイス誘導!」
”ボコォ”
鈴華のパンチが、飛び蹴りをくらって、よろけた臨時教師にぶち当たる。そして───
「僕の得意技はここからだ」
「───ッ!」
奏汰は殴られた臨時教師を抑え込み、そのまま柔道の寝技へと持っていく。
「───んなっ!」
『腕挫十字固』
奏汰が、臨時教師の右腕を掴み、そのまま、臨時教師を反らせて肘関節を極めている。
「───抜け出せ...」
「る訳ないだろう?僕にこの技を決められて、参ったと言わなかった人はいないんだ。だから───」
「ならば、腕を捨てるか」
「───ッ!」
”ブチブチッ”
人からなるような音ではない。何かが千切れるような音が、臨時教師の右肩からは鳴った。
「───ッ!」
「奏汰、逃げ───」
”ガンッ”
「───かはっ」
極めていた奏汰の腹を、極められていた臨時教師が殴る。奏汰は、腹の痛みからか思わず手を離してしまう。
「よくも...やってくれましたね。ですが、まだまだ命の危機と言うべきではない」
臨時教師の右腕は、ダラーンと力が入っていないように垂れていた。肩の部分を見ると、皮膚は引き裂けて、そこからは血が流れて、強張った筋肉だけで繋がっていた。
「皮膚を切り、筋肉が伸びる量を増やしただけ。だから、あなた方にでもできますよ。なので、何らおかしいことではない。なんら、不思議なことではない」
「奏汰、大丈夫か!」
腹を殴られ、息を吸えていない奏汰の近くに雷人が走り近付く。
「強気で攻めてきていたが、この程度か。私に勝てると思って、梨央を助けに来たのか...随分と健気で愚かなものだな」
臨時教師はそう述べる。美緒と紬・竹原美玲に東堂真胡の4人も「牢屋」の近くに到着している。
だが、奏汰の状況を見て迂闊に近付けるような状態ではなかった。極められて逃げれないからといって、すぐに右腕を捨てるような───正確には、まだ少しは使えるのだろうけど怪我をするようなクレイジーな戦い方に俺達は驚きを隠せなかったのだ。
「───どうすれば...」
「どうするもこうするも、殴る!倒す!勝つ!のたったの簡単3工程に決まってるだろッ!」
再度、臨時教師の後頭部を攻撃するのは鈴華であった。今回は、上段回し蹴りで臨時教師の後頭部に蹴りを入れた。
───俺らは、負けるわけにはいかないのだ。
補足
「ルール12」で美玲は、茉裕が「出口」から脱出して「パートナー」がいなくなったため、再度ペアを設定されました。
智恵・紬のペアに参戦でトリオになりました。