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4月23日 その②

作中で、チームAの第1ゲームのクエスチョンジェンガが描かれます。

デスゲーム中に、別のデスゲームを描くことになり申し訳ないです。

 

「梨花ちゃん...ごめ...」

「恋心じゃなく出来心で告白して、彼氏じゃなくて既成事実を作っちゃうようなアンタの事を許すと思う?アタシはもう許さない!絶対に許さないんだから!」

 秋元梨花の目から、ポロポロと大粒の涙がこぼれ落ちる。


「アンタのことは信じてたのに...信じてたのに!」

「梨花ちゃ───」

 秋元梨花は、A棟4階の階段を下ってどこかに行ってしまう。


「梨花ちゃん、ごめん!ミサもわざとじゃないの!ミサも、梨花ちゃんのことを知っててやった訳じゃないの!ごめん、もう手は出さないから!ミサも梨花の恋路を応援するから!」

 美沙は、必死の形相───だが、純介()の前故に純情さを絶えさせない表情で梨花のことを引き止める。


 ───だが、純介の事を気にしている美沙の声など、梨花の耳に───いや、心に届くわけがないのだ。


「梨花ちゃん...ごめん...ごめん...」

 デスゲームの最中(さなか)で生まれた友情は、デスゲームの最中(さいちゅう)に崩壊した。


 ───脆弱な友情が、砕ける瞬間を純介は目の当たりにした。


「ごめんね...梨花ちゃん...」

「え..えっと...佐倉さん...」

「じゅ、純介君は...ミサの味方をしてくれるよね...」

「え、あ...うん。佐倉さんの味方をするよ」


 純介がそう言うと同時に、佐倉美沙の顔が先程とは違い本当に必死の形相になる。


 可愛い子ぶっていた人物の化けの皮を、純介は剥がしたのであった。

「佐倉さんの味方をするから、大丈夫だよ」

「い、いや。やっぱ、大丈夫。味方しなくて大丈夫だから」

「なんで?佐倉さんが提案したんじゃない」

「大丈夫。やっぱり、ミサが全体的に悪いし、ミサがちゃんと誠意を持って梨花ちゃんに謝るよ」


 美沙は唐突に純介を拒絶する。

「どうして、そんなに僕を拒絶するの?そんなに、僕がいちゃまずい?」

「気付いてないの...あなたには悪霊が取り憑いている!」

 美沙はそう言うと、へっぴり腰になりながら走り去っていった。


「悪霊が憑いている?失礼だなぁ...僕は佐倉さんを心配しているのに...」


 ***


 ───時は少し遡り。


 デスゲームが開始した4月1日に戻る。

 場は、アイスブレイクと称されて行われた第1ゲーム『クエスチョンジェンガ』が行われようとした時であった。


 チームAに属しているのは秋元梨花・佐倉美沙・橋本遥(はしもとはるか)睦月奈緒(むつきなお)の4人であった。


 マスコット先生が提示したクエスチョンジェンガのルールはこうだ。


 1.ブロックタワーの中から、ブロックを抜き取る。

 2.抜き取ったブロックは、手元に残しておく。

 3.倒さずにブロックが抜き取れなくなるまで(パーフェクトジェンガ)になったら、終了。

 4.質問に嘘で答えて死亡したら負け。

 5.赤いジェンガを抜き取って死亡しても負け。

 6.一人、負けが決まったらゲームは終了する。

 7.参加拒否及び、パスすることは不可能。


 赤いジェンガを引くか、嘘を付いたら死亡してしまい敗北する。そんなゲームであった。

 梨花達4人は、遥の机の周りに集まり、椅子で机の周りを囲んだ。机には、ジェンガタワーが積み立て上げられていて、勝負は直に始まるようだった。


「この赤いジェンガは引いちゃ駄目なのね」

 目の前に積み上げられた、15段───合計45個のジェンガ。赤いジェンガがあるのは、上から3段目───下から数えて13段目の真ん中であった。


「それじゃ、誰からやる?」

「アタシは何番でも」

「わ...私も...」

「じゃあ、ボクが最初でいいかな?」


 最初を志願したのは、男子と身長を勝負してもクラスの半分には勝てそうな身長を持つ褐色肌のボーイッシュ女子───睦月奈緒であった。


「じゃあ、奈緒ちゃんから時計回りね!」

「わかった、じゃあ順番としては奈緒(ボク)・美沙・遥・梨花になるね」

「そうなるのかな...」

 睦月奈緒の前に座り、少しオドオドしたような返事をするのは、自己紹介の時に橋本遥と名前しかあげなかった少女であった。キレイな黒髪をしており、白皙であった。


「それじゃ、パーフェクトジェンガを目指して頑張ろう。それじゃ、ボクからだ」

 そう言うと、睦月奈緒は下から6段目の真ん中を引いた。


「えっと...好きなキャラクターは?だって。ボクが好きなキャラクターは...なんだろう。タキシードサムとかかな?」

「あぁ、あのペンギンの?」

「そう、ペンギンの」


「それじゃ、次はミサの番だね!」

 佐倉美沙は、下から12段目の真ん中を引く。


「血液型はB型だよ!」

「じゃ...私だね...」

 橋本遥が引いたのは、下から3段目の右側。


「えっと...猫アレルギー...それと、花粉」

「あぁ...花粉症、大変だよね。わかるわー」

「あ、梨花ちゃんも花粉症なの?」

「うん、だからアタシは冬になると箱ティッシュで学校持って言ってた」

「ボクも花粉症持ちだから...このグループのメンバーは全員花粉症のようだね」


「それじゃ、アタシね」

 梨花が引くのは、9段目の左。

「えっと...靴のサイズ?今履いてる上履きは...24.5です。まぁ、普通くらい?」


「そうだね。そんな感じだ」


 クエスチョンジェンガで、良くも悪くも仲は深まっていく。


 それが、数週間後には簡単に崩壊してしまうことも知らずに───

下から数えています。

1段目 左・真ん中・右

2段目 左・真ん中・右

3段目 左・真ん中・

4段目 左・真ん中・右

5段目 左・真ん中・右

6段目 左・   ・右

7段目 左・真ん中・右

8段目 左・真ん中・右

9段目  ・真ん中・右

10段目 左・真ん中・右

11段目 左・真ん中・右

12段目 左・   ・右

13段目 左・真ん中(赤色)・右

14段目 左・真ん中・右

15段目 左・真ん中・右

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
[良い点] 美沙はマジでどうしようもないですね。 そしてここで過去回想の『クエスチョンジェンガ』。 今にして思えば懐かしいですね。 まあ男の友情も女の友情も異性が絡めば、 あっという間にぶっ壊れますよ…
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