4月23日 その①
───帝国大学附属高校を照らすのは、いつもと代わり映えしない太陽。
太陽は約50億年前にでき、それからずっと光り輝いている。
───だが、いつだって輝き続けていた太陽にだって寿命はある。
太陽の寿命は100億年と言われているので、今太陽は人生の半分を過ぎたところだろう。
今大切なのは、輝いている太陽にも終わりがあるということだ。
全てのものには、終焉というものが確実にあり無限というものはあり得ない。
無限ループとされるものでも、人為的か恣意的なものかはわからないがいつしか終わるきっかけとなるものがやってくる。
───それは、今行われているデスゲームにも適用される。
今日4月23日が第3ゲーム『パートナーガター』の最終日であるのだ。
もう既に、第3ゲーム『パートナーガター』から脱出しクリアしたものは15人いる。
彼ら彼女らに5万コインが配布されるのは死なない限り確実なのだ。
「今日で終わりだから、頑張らないと...殺す人の算段はついてる...でも、また失敗しちゃうかも...」
生徒会の紅一点である彼女はそう呟く。そして、彼女は「生徒会」と縦に書かれている被り物を被った。
その呟きは、早朝の静寂に包まれて消えていった。
***
「はぁぁ...よく寝た...って、体が痛い...」
ベッドで寝ずに教室の机を並べてその上で寝ていたからか健吾の体の節々が小さな悲鳴を上げていた。
「ようやく起きたか、寝坊助め」
「ははは、悪い悪い」
そう言って、この空き教室の入り口に壁によりかかりながら立っているのは健吾と共に行動していた森宮皇斗であった。
「───にしても、昨日の夜は凄いのを見ちまったな」
「男女の関係をあまり深掘りしない方がいい...」
「それもそうだな、そうしておくよ」
昨日、健吾と皇斗が見たのは拓人と美沙の行為であった。鬼から身を隠すためにたまたま覗き込んだ部屋で行われていてすぐに逃げてきたのだ。幸い、相手が気付いている様子はなかったので大丈夫だ。
「これは、オレら2人の内緒だな」
「行った2人も知っているのだから4人の秘密であろう」
「はは、それもそっか」
健吾はそう言って笑った。
「んじゃ、この空き教室を出るか」
「───待て」
健吾が欠伸をしてA棟2階にある空き教室から出ようとしたら、皇斗がそれを制止した。
「───何故」
「隠れておけ」
「わ、わかった」
健吾と皇斗は、教室の外から見えないようにしゃがんで隠れた。すると───
”タッタッタッ”
小さな足音が聞こえてくる。これは、階段を下っている音だろう。
「誰だろう...」
階段から降りてきたのは、一人の人物。
包丁を持ち、顔には「生徒会」と書かれた被り物をした人物であった。
「鬼とは初対面...だな」
皇斗はそう言うと、チラリと健吾の方を見た。
「バレるかな...」
「大丈夫だ、静かにしていればバレはしない」
鬼は、そのままB棟の方へ向かっていった。
「昨日までは鬼なんかいなかったのに...」
「わかっていることだったが、生徒会に女もいるのか...」
皇斗はそう呟く。チラッと見ただけで、鬼が女子だと把握したのだ。まぁ、身長を見れば一目瞭然だろうが。
「しばらくは、動かないほうがいいだろうか...」
「それもそうだな。少し様子見をしつつ、慎重に行動したほうが良さそうだ」
以外にも、待機の選択を取った皇斗。彼の目には、もう鬼が誰かわかったかのような目つきをしていた。
***
───健吾達が鬼を見つけてから数十分後。
「あ、梨花ちゃん!いたいたー!」
「あ、美沙じゃん!」
純介と共に行動していた秋元梨花と、拓人と熱い夜を過ごした佐倉美沙が学校のA棟の4階の廊下で邂逅する。
同じ寮で生活している2人が合流できたのはいいことだろう。
「ぼ、僕はお邪魔かな?」
「あ、純介君いたんだー。ミサとさー、楽しいことしなーい?」
美沙は、昨日の夜にあれだけ激しいことをしたのにも関わらず純介を誘惑する。
純介の手を掴み、自らの胸を触らせるのは常套手段であった。
「え、あ、僕は...」
「ミサ、上手いってよく褒められるんだぁー!純介君もきっと気に入るよー!」
ミサは、純介の後ろから抱きつく。陰キャ純介、逃げ場なし。
「ほら、純介君って女子とあんまり喋らなさそうだしさー、きっとド・ウ・テ・イさんでしょ?」
美沙は純介の耳元でそう甘い息を吹きかけながら囁く。
「ミサが、筆おろししてあげるしさぁー?一緒にアソぼ?」
「で、でも...」
「昨日も、拓人君としてさぁー、上手いって褒められたんだよー?あんなにイケメンな拓人君に褒められたんだしー、絶対した方がいいってー!」
「ぼ、僕は...」
「ねぇ、美沙。拓人君とシたって本当?」
「え、あ、うん。そうだけど...」
美沙と拓人が行為をしたという情報を聞いて、苦笑いをしていた梨花の表情が変わる。
「美沙、アナタは知ってたよね?アタシが拓人君のこと気になってるってこと!」
「───ぁ」
美沙の口から、思い出したかのような「ぁ」が出る。彼女は本当に、今思い出したのだ。
「アンタ、色んな男と遊んでるビッチだと思ってたけど、友達の好きな人も奪っちゃうような最低クズ女だったんだ!もう、二度と顔も見たくない!早く野垂れ死んで!」
好きな人を奪われたことに激昂する梨花からの罵倒で、美沙の顔は徐々に青くなっていく。
───純介も気付いていた。
───昨日、秋元梨花が言っていた「この人と結婚したいなぁ───って人と出会えたんだ」に当てはまる人が柏木拓人だと言うことに。
梨花が拓人のことを気にしている描写が少なかったですね。
少し反省。
梨花が激昂するのはわかってあげてください。