4月22日 その②
第3ゲーム『パートナーガター』のルール
1.このゲームは、ペアで行う。必ず、最初は2人でゲームに参加する。ペアで、自分ではないもう一人の人物を「パートナー」と呼称する。
2.生徒は全員「逃げ」。先生は「鬼」となる。
3.ゲーム開始前に「牢屋」を決め、「鬼」に捕まった「逃げ」は「牢屋」の中で待機する。
4.「牢屋」の中にいる人物は、体及び衣服に触れることで「脱走」させることができる。
5.捕まった人物は、「パートナー」のみしか「脱走」させることはできない。
6.4月23日23時59分59秒に「牢屋」にいた人物は、死亡する。
7.自分と「パートナー」の両方が捕まった場合、先に捕まったほうが「自分を脱走させる」か「パートナーを脱走させる」か選ばせることが可能。
8.自分と「パートナー」が両方捕まった場合に「自分を脱走させる」を選択した場合は、6時間経たないと「パートナー」を「脱走」させることができない。
9.捕まった「逃げ」は、「脱走」できる状態でないのに、「牢屋」の外に出た場合死亡する。
10.ゲームの途中でランダムに2度、「出口」が出現する。
11.「出口」から脱出すると、ゲームクリアとなる。
12.4月22日丁度に、死亡及び「出口」から脱出して「パートナー」がいなくなった人物をかき集めて無作為に再度ペアを設定する。その際、候補者が奇数だった場合は一つだけ3人のトリオになる。トリオの際も、ルールは同じ。
13.優勝賞金は、ペアで捕まった回数が少ないチームに渡される。
「なんだよ...これ...」
白板に血で書かれていた「真の鬼ごっこの開幕だ」と言う文字。白板の下にばら撒かれていたのは、誰かの肉塊であった。
皆、書かれていたものに驚きが隠せていない。健吾と純介も、顔を少し青くしながらその惨状を見ていた。
「どうやら、学校の方が危険みたいだピョンね!鬼が鬼として機能していない第3ゲーム会場の方が安全って、飛んだジョークだピョン!」
「それで、どうするんだ?もし仮に、真の鬼ごっこが始まるとして鬼は誰がやるんだ?」
こんな状況でも無表情を保っている誠に健吾は若干驚く。
「多分、これはマスコット先生が主催───言うならば、第3ゲームの続きとして用意されたものじゃ無いと思う」
「なら、これは他の人物───予想するならば、生徒会が企んでいると思うってことか?」
「うん、マスコット先生が生徒会に鬼を委託したか、生徒会が所望したかはわからないけどね」
「うーん、急に生徒会が絡んできたピョンねぇ...」
「だけど、第2ゲームの裏でも暗躍しようとしてたんだろ?失敗に終わったようだけど」
蒼と健吾もすぐに純介と誠の会話の内容を理解し合流する。
「ちょ、ちょっと!これどういうこと?え、何?え、えぇ?」
白板に書かれた内容に、驚きを隠せていないのは健吾や純介達だけではなかった。
「なにこれぇ!ミサ、こわーい!」
「出口」から教室に戻ってきたのは秋元梨花と佐倉美沙であった。
「あ、おーい!とりあえず、その部屋から出なよ!どんどん人が来るよ!」
そう言って、健吾達6人に声をかけたのは彼らより先に「出口」に入り教室の景色を見た柏木拓人であった。
健吾達6人は拓人に連れられて教室を出る。そして、隣の空き教室に入る。
そこには、数人の生徒が座っていた。
教室の廊下側───健吾達から見た手前側にいる人から順番に、綿野沙紀・細田歌穂・園田茉裕・中村康太・渡邊裕翔・山本慶太の6人であった。
「お、6人来たのか」
「オレらと考えることは同じだよな。まぁ、デスゲームから早めに逃げられるって思ったらこんなハメになってるんだけど」
「僕らの中に『真の鬼ごっこ』の鬼がいるのでしょうか。それとも、僕達以外の誰かが鬼になるのでしょうか」
「さぁね。でも、捕まったら私達は殺されるのだろうね」
「茉裕ちゃん、冗談でも笑えないよ...」
「鬼が誰でもいいわ。新たな臨時教師だろうと、アタシ達の中にいるのだろうとアタシは悲鳴を聞ければそれで満足だもの」
これらの発言をしたのは、上から順に康太・裕翔・慶太・茉裕・沙紀・歌穂だ。
そして、次の発言をするのは上から順に誠・健吾・美沙・拓人・梨花・純介・蒼だ。
「『真の鬼ごっこ』の鬼は多分生徒会のメンバーか愉快犯だろう」
「白板にあんな準備をするってことは、誰か死んだってことじゃないか?本物の血っぽかったし」
「いやぁ!ミサ、こわーい!拓人君助けてー!」
「わ、わかった。できる限り頑張るよ」
「ちょ、美沙!拓人君の腕に絡みつくのはやめなよ!」
「話が進まない...」
「そうだピョン!役に立たなくてもいいから、足手まといにはならないで欲しいピョン!」
各々が1度ずつ発言をし終えると───
「うお、なんやこれ!ひっどい落書きやなぁ!ええと...真の鬼ごっこの開幕だ?なんや!また、鬼ごっこなんかせなあかんのか?いや、第3ゲームで鬼ごっこをしたかって言われるとしてないと思うんやが...」
「うるさい。静かにしろ。ペラペラと喋らんでもわかっている」
隣の教室から、そんな声が聞こえてくる。声の主は、確認しなくてもわかる。津田信夫と森宮皇斗だろう。
「とりあえず、皆中に入っちゃえば?」
「んじゃオレ、2人を呼んでくるよ!」
康太に言われて、中に入る健吾達6人。そして、2人を呼んでこようと隣の教室に顔をのぞかせる拓人。
健吾達は、開いている席に座った。
「そうだ、茉裕さんのパートナーは誰なの?姿が見えないけど...」
「美玲は、なんか...{ワタシもGMと勝負がしたい!}とか言って、捕まってる人達を助けるチームのところに行ってしまったわ」
園田茉裕は康太からの質問に答える。
「捕まってる人を助けるチームなんてあったのか?」
「えぇ、良くも悪くも注目の的である栄智恵カップルも参加しているようね。まぁ、捕まってる梨央の救出のためでしょうけど」
「あぁ...栄なら有り得そうだ...」
「僕達も参加すればよかったかもね」
「でも、声がかけられなかった...栄に嫌われてるのかな、オレ...」
「足手まといだと思われたんじゃねぇか?」
「ちょ、それは酷くない?!」
裕翔が笑いながら、健吾に酷いことを言う。それも、悪意のある笑みを浮かべながらだから更にイラッと来る。
「おぉ!ぎょうさん集まっとんなぁ!こんだけおったら鬼ごっこも楽しそうやわ」
教室に入った途端、そんなふざけた発言をする津田信夫に白い目が向けられる。
「───それでだ。皆は知っているかわからないが、余がやってきたのは2回目の出口出現のタイミングだ」
「2回目?!」
「あぁ、全く同じところに連続で出現した。マスコット先生達は、仕組んでいる。第3ゲームの方は、鬼が牢屋前でガン待ちしているから楽しくなかったのであろう」
「出口を2回連続で同じ場所にすれば、遠くから向かってる人も間に合うってことか!それに、連続にしちゃえば、真の鬼ごっこの途中参加者も出てこない!そういうことだろ?」
「あぁ、そうだ」
皇斗の話を聞き、康太もすぐに話を理解する。彼の言葉で、理解した人も多かったであろう。
現在、第3ゲーム『パートナーガター』の行われている会場から「出口」を通って学校に戻ってきているのは
秋元梨花・安倍健吾・宇佐美蒼・柏木拓人・佐倉美沙・園田茉裕・津田信夫・中村康太・西村誠・西森純介・細田歌穂・森宮皇斗・山本慶太・渡邊裕翔・綿野沙紀の総勢15名だ。
そして、第3ゲーム『パートナーガター』の会場に残っているのは安土鈴華・池本栄・岩田時尚・奥田美緒・菊池梨央・斉藤紬・杉田雷人・田口真紀・竹原美玲・橘川陽斗・東堂真胡・成瀬蓮也・橋本遥・三橋明里・睦月奈緒・村田智恵・森愛香・山田稜・結城奏汰の19人だ。
その内の3人───菊池梨央・成瀬蓮也・三橋明里は鬼に捕まり「牢屋」の中にいる。
その捕まった3人を救出するために「捕虜救出隊」として作戦を練っているのが安土鈴華・池本栄・奥田美緒・斉藤紬・杉田雷人・竹原美玲・東堂真胡・村田智恵・山田稜・結城奏汰の10人だ。
橋本遥・睦月奈緒のペアは、橋本遥の「このまま教室に戻った時に殺されたらどうしよう」と言う心配を睦月奈緒が理解して、居残ることを選択。
岩田時尚・橘川陽斗ペアは、時尚がふざけながら「出口」に向かっていたら、時間に間に合わずに出口からの脱出はできなくなった。
最後の一ペアである田口真紀・森愛香は「臨時教師がボコボコにされるところを見たい」と言う愛香のワガママから残ることを選択した。
───こうして、鬼ごっこは2地点で行われることとなった。
演者は揃った。勝利を掴むのは、誰だ。
教室に固まられると、鬼が暴れられない...