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4月22日 その①

 

 曇天かつ常闇の3ゲーム会場上空に浮くのは、一人の男性。


 そう、皆もよく知っているふざけた被り物をしたデスゲームの運営であり、皆の担任であるマスコット先生であった。

 彼は体に何個も風船を付けているが、浮いているのは風船ではなく彼が持ちうる不思議な力───超能力とも呼べるようなものだろう。

 実際、彼は第2ゲームで時間を飛ばすという現象もやってのけたので、空が飛べても何らおかしくはない。


 ───マスコット先生は、代わり映えのない第3ゲームに苛立ちを覚えていた。


 もっとも、現在鬼をやっている人物───名前を言ってしまうと廣井(ひろい)大和を臨時教師とし、第3ゲームの鬼に任命したのはマスコット先生であったので、その怒りをぶつけられずにいた。

 マスコット先生は、自分本位に行動することを理解していたので今更その点を責める事もできない。


「しょうがないですねぇ...先代の生徒会の問題は、当代の生徒会に解決させて貰いますか...」

 マスコット先生はニヤリと笑う。そして、すぐに行動に移そうと生徒会であり、フリーで動けそうな一人の少女のもとへ移動した。


 ***


 ───4月22日早朝。


 あっという間に、3日というものは過ぎていった。臨時教師は、ずっと牢屋の前で「待ち」の姿勢でいた。

「作戦開始は明日か...」


 見張りと言う仕事があり、若干寝不足な俺は大きな欠伸をする。

 ここ数日、良くも悪くも大きな動きというものはなかった。美緒は、作戦を勘繰られないように何回か「牢屋」の方に行って梨央を助けようとしたがそれも全て失敗に終わった。


 もちろん、ここで成功してしまえば作戦はおじゃんになり笑い話(laugh tale)に変貌してしまうのだが。


 ルールの10に記載されている「出口」とやらは、まだ一度も登場してはいなかった。もしかしたら、俺達の知らない間に勝手に現れて勝手に消えていたのかもしれないけれどね。


「おっと、栄。起きていたんだね」

 濡れた茶髪を放置して、こちらに歩いてくるのは奏汰であった。


 ここ数日のトイレや風呂などはどうしていたのかと言うと、遊具ゾーンにある建物の中にあった物を使っていた。

 もっとも、風呂ではなくシャワー室にある簡易シャワーなのだが。


 ここの存在は公になっていないので、ここを使っていない人は野糞をしてシャワーも浴びてないと思うとゾッとする。いや、ここを見つけられた俺らのほうがラッキーだから大半は見つけていないことになる。

 そうなると───



 いや、変なことは考えないでおこう。今度から、女子のクラスメイトを見て「こんな可愛い顔してても、第3ゲームでは野糞をしていた」だなんて考えたくはない。幻滅してしまう。

 もっとも、幻滅も何も俺には智恵がいるから問題はないのだが。


 ───てか、牢屋の中にいる人たちはどうしてるんだ?


 木陰も無いから───う...



 牢屋の中に入りたくなくなった。嫌な事に気付いてしまった。そこら一体糞尿だらけ...

「変な質問をしていいか、奏汰?」

「なんだい?」

「牢屋の中にいる人って、トイレとかどうしてるんだろう」

「───」


 奏汰の顔が青ざめる。この不快感をおすそ分けだ。


「栄、嫌なところをついてくるね。考えもしなかったし、考えたくもなかったよ」

 奏汰はそう述べた。シャワー浴びてサッパリしていただろうが、不快にさせてしまった。


「僕以外の誰にもその話をしてやらないでくれ。特に食事中は駄目だよ。いいね?」

「わ、わかった」

 奏汰に念を押してそう言われた。これ以上、この話を追求する気はない。


「───それで、作戦の方は思いついた?」

「それはもう、バッチリだよ。作戦って言っても頭のいいものではなく脳筋なんだけどね」

「殴り合いってことでしょ?」

「うん。シンプルだけど一番強いからね」

「殴り合いについては、俺もしてしまったからとやかく言えないなぁ...」

「僕は柔道をやっていたし、鈴華もいるから問題はないと思うよ。稜は、指がまだ完治してないから手を煩わせる気もないし」

「そうか、それはよかった」

 俺は、奏汰と談笑して朝を迎えた。談笑と言うよりかは、作戦会議の方が近いかもしれないが。



 ───そして、数時間が経つ。


 4月22日10時53分。


『パルクールゾーンに「出口」が出現したよ!パルクールゾーンに「出口」が出現したよ!』

 俺達のスマホからそんな声がする。声の主はコンシェルジュのコンだ。こんなのもいたなぁ、などと思いつつ俺はこの通知を無視する。


「私達には関係ないわね」

「そうね!ワタシ達の目的は、打倒臨時教師だし!」

「梨央達の救出だろ...」

「あ、そうだった!」

 そんな会話が繰り広げられる。鬼ごっこが行われるなら、この「出口」はとても大きな要素だったのだが、今回は鬼が仕事をしていないのでそこまで大きな要素ではない。


 ───ただ、早く学校に戻れると言うものだろう。


「俺達には関係ない。だから、特に詳しく考えなくていいね」

「そうだね」


 ***


「あ、あれが出口じゃない?」

「そうみたいだな」

 純介と健吾は、パルクールゾーンに現れた出口を見つける。駆けつけた数人の生徒が、もうそこに現れていた。



「おぉ、誠!」

 純介達は西村誠・宇佐見蒼ペアと合流していた。


「健吾きゅんに純介きゅんだピョン!」

「おぉ、2人か」

「2人も出口に?」

「そうだピョン!逆に、ここまで来て逃げる奴らを嘲笑しに───なんて言うわけ無いピョン!」

 そう言って、4人は「出口」の中に入っていく。


 一瞬、視界が白く染まり───


「んな...」

 戻ったのは、『3-Α』の教室。目に入ったのは、理路整然と並べてある机。先に「出口」に入ったであろう数人の生徒の姿。そして───












 ───白板に書かれた、人の血で乱雑に書かれた「真の鬼ごっこの開幕だ」という文字であった。

作中に出てきた牢屋内のトイレ問題。

もちろん、野糞ではありません。


臨時教師との戦闘場所がクソまみれとか汚すぎですし、人の糞を踏んだ踏んでないという低俗な論争はしたくないですし(笑)

まぁ、マスコット先生の超パワーで便意尿意は無くなります。


───え、ご都合主義ですって?

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
[良い点] 成る程、トイレ問題か。 と思ったらそこはご都合展開。 でもこれに関してはそれでいいかと。 なろうの多くのハイファン作品も 大半はトイレ問題とか適当ですからね。 そして始まる真の鬼ごっこ、こ…
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