4月19日 その⑬
捕虜救出作戦を考えていた俺達9人の前に現れたのは、一人の快活な少女───竹原美玲。
彼女は、4月1日の自己紹介の時に、まるでデスゲームの主人公のように運営側───マスコット先生達に宣戦布告をした人でもある。彼女の行動は、印象的だったのでよく覚えている。
もっとも、その宣戦布告以降デスゲームの運営に勝負を挑もうとはしていなかったし、今まで積極的な関わりもなかったので、今回の作戦には誘おうとしなかったのだが───
「私も、仲間に入れなさい!デスゲームの運営に天誅を下したいの!」
竹原美玲は、今回の救出作戦に協力的な意見を述べる。彼女が、運営側───言ってしまえば、生徒会で俺達の企みを邪魔しようとしているようにも思えなかった。
「───どうする?」
奏汰が、皆に問う。竹原美玲を仲間に入れるか否かを俺等に問うているようだった。
「別に、人が多ければ多いだけいいんじゃないかしら?」
「あぁ、俺もそう思う」
「つむも!」
美緒・稜・紬の3人は賛成の意向を見せる。
「オレは喧嘩ができれば問題ねぇ」
「僕はレディが増えてくれると嬉しいよ」
「俺も、別に仲間にするのは問題ないと思う」
「わ、私も!」
安土鈴華と雷人・俺に智恵も賛成する。
「わ、私も蓮也が救えれば問題ないかなって思っているし...」
真胡も賛成する。これで、皆に質問した奏汰以外の全員が答えを出した。
「じゃあ、総意で仲間に迎えよう。よろしく頼むよ、竹原さん」
「敬語じゃなくていいわ!仲間に迎え入れてくれるんでしょう?なら、ワタシのことは皆、美玲って呼んで頂戴ね!」
美玲も、こうして仲間に迎え入れられた。
───こうして、「捕虜救出隊」に参加する10人が揃った。
俺・智恵・稜・紬・美緒・雷人・奏汰・真胡・鈴華・美玲の10人だ。
人数は多いが、それをまとめられるだけの技量と頭脳がチーム全体にあった。
───そして、19日の夜になる。
俺達は、森林ゾーンを抜けて遊具ゾーンに移動する。森林ゾーンは暗くて、月光までは差し込まなかったからだ。
飯を食べて、スマホの「ショップ」で無料に購入できたマッチで、森林ゾーンで急遽集めた枝に火をつけて、小さな焚き火を作った。
そして、俺達10人はその火を囲むように眠ることにした。もちろん、地べたに眠るようじゃ体中が痛くなるし安眠できないため、俺達はやはり「ショップ」で期間限定で無料になっていた寝袋を購入した。
美玲が、俺と智恵の為にカップル用の寝袋なんてものも購入したが恥ずかしかったので使うのはやめた。
どこからか、色々批判が飛んできそうだったしね。リア充爆発しろだとか、なんかそんなのが。
一応、無いとは思うが鬼が奇襲してきたときのことを考えて、男が時間ごとに交代して見張ることにした。
「捕虜救出隊」の男は、俺・稜・雷人・奏汰・真胡の5人なので、24時を周ってから朝の5時まで見張りがつけられる。
一人一時間だ。女子は「寝不足はお肌に悪い」という理由で雷人が女子の見張りの参加を断った。
まぁ、30分の見張りのために叩き起こされるのも嫌だしね。
「んじゃ、おやすみ」
そう言って、俺達は眠りについた。隣では、智恵が寝袋に入って寝ている。カップル用の寝袋は使用しなかったが、寝袋は隣に並べたのだ。見張りの時間は少し寝顔でも眺めようかと思っている。
───こうして、俺は眠りについた。
***
第3ゲーム『パートナーガター』が行われている会場のどこか。
「今日、集まれるのはこれだけかしら?」
「どうやら、そうみたいだね」
3人の男女が、密会を行っている。
「僕は殺せそうだったけど...殺しはしなかった。まだまだ利用できそうだったからね」
「そうだ。私、いい情報を手に入れたのよ...って、もう知ってるかしら?智恵達が鬼を殺そうと企んでいるって」
「そうなのか?」
「えぇ、そうよ。私、建物裏で話しているのを聞いていたの。全て、ペラペラ話していたわ。協力しているのが確定しているのは智恵・紬・美緒・奏汰・栄・稜・雷人・鈴華の8人ね。でも、鈴華を説得していたのは女子陣3人だけだったから、他の男衆4人はまた別の人に声をかけているのかもしれないわね」
「ふふふ、名推理だね」
───そんなこんなで、3人の───生徒会メンバーの会議が行われる。
「───それで、作戦のことは鬼に伝えたほうがいいのか?」
「いや、伝えなくていいと思うよ。そっちの方が...ね?」
質問した少年に答えるのも少年。答えた少年は、意味ありげな発言をしてニヤリと笑う。
「おぉ、そうだな。じゃあ、言わないでおくよ」
答えた少年の真意に気付いた質問した少年も、言わないという選択をする。
「そうだ、皆は他の人と行動していないのか?ペアはいるだろ?」
「いるけど、私のペアは行ってしまったわ」
「そうか...そういえば、そうだったな」
少年の質問に、少女は答える。
「今回は、鬼ごっこに乗じて生徒を殺そうと思っていたけど...鬼が動かないんじゃどうしようもないわね。今回は、殺すのは様子見かな?」
「チャンスがあれば、程度だね。殺せればラッキー程度だと思おう」
「「了解だ(よ)」」
───そして、3人は暗闇の中に溶け込む。皆が皆、それぞれの場所に戻ったのだろう。
それとなくヒントを散りばめるのは難しいですね。
鋭い人は、もう生徒会メンバーは全員わかるような気もします。