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4月19日 その⑩

 

 俺達は、森林ゾーンから散り散りになり「捕虜救出隊」に参加してくれる人を探す旅に出る。

 俺が協力を要請するのは、森宮皇斗だ。彼なら、聡明だし運動でもできる。真っ先に仲間にしたい人材であった。


「───どこにいるのかなぁ...」

 俺は、スマホで連絡を取ってみると「パルクールゾーンだ」と言われたので、俺は今パルクールゾーンを移動している。


 パルクールゾーンは、しっかりパルクールができるようになっている。柵や大きめの壁。そして、段差などがあった。パルクールができなくてもちゃんと逃げられるように柵が無い部分があったり壁には梯子がかかったりしている。


 だが、パルクールができれば時短なのは見ればわかるだろう。

「皇斗はどこに...」

「ここだ」

 声がした方を向く。その方向は、斜め上。電灯の上で、ポケットに手をツッコミながらこちらを見ている。


「どうやって、そこまで登ったんだ?」

 俺が見るに、そこまで登る方法は見当たらない。電灯は、壁にから出っ張って付いているタイプなのでパイプを登って───といった方法もできないはずだった。


「ジャンプをして、壁をキックして登った。単純作業よ」

「いやいや、一般人はジャンプして壁を蹴ってそこまで登れないのよ。前世はマリオか」

「面白い冗談だな」

「目が笑ってないぞ」

「それで、話とはなんだ?」

 皇斗は電灯から降りて、地面に見事に着地する。落下して、足を折るなんて心配はなかった。俺の後ろの席の時尚なら、足を挫いてしまうかもしれないが皇斗なら安心だった。まぁ、彼は超人だからね。


「今、鬼は牢屋に粘着して逃げれないようにしてる。だから、救出に助けてくれ!」

「なんだ?パートナーの稜でも捕まったのか?」

「いや、違う。捕まったのは梨央だ」

「そうか、まぁ余は手伝おうとは思わん」

「え、なんで!」

「余が助ける義理がないからだ」

「でも...」

「すまないな、栄。余の思想と栄の思想は合わないようだ」

 皇斗と、愛香はどこか同じような部分がある。だが、2人の違いとしては愛香の方が操りやすいところであった。


 愛香は、平等を重んじるためにそこを突っ付けばある程度は言うことを聞いてくれる。だが、皇斗は何を基準として動いているのか未だにわかっていない。『スクールダウト』で過去の話を聞いても、そこに何かヒントになることもなかった。


 彼は、孤高の天才なのだ。彼は、誰かにわざわざ貸しを作っていつかのために取っておくなどという必要もないのだ。何せ、彼は一人でなんとかできるのだから。


 きっと、常人なら腕が4本───すなわち、2人で行わないといけないような作業も器用に一人で行ってしまうのだろう。

「助けはしない。だが、アドバイスだ。微細な変化に気付け。不可解な点の解は追求し続けろ」

 そう言うと、皇斗はどこかに歩いていってしまった。俺は、追うことができなかった。


 ───きっと、しつこく追っても承諾はしてくれないとわかっていたから。


「微細な変化に気付け?不可解な点の解は追求し続けろ?」

 俺は、皇斗の放ったアドバイスの反芻を行う。だが、そのアドバイスの意味はわからなかった。


「どういう意味だろう...」

 皇斗は仲間に入ってくれない。梨央を助ける利がないと判断したのだ。


 ***


 栄が、森宮皇斗と話している頃、東堂真胡を探していた稜は───


「うーん、川ゾーンにいるらしいんだけど...」

 稜は、河原をゆっくりと歩く。開けていて、背水の陣になっている川ゾーンに人は少ない。


 辺りには、誰もいなかった。稜は、対岸に渡ろうと靴と靴下を脱いで、川の中に入ろうとする。すると───


「あ、いたいた」

 稜の姿に気付き、声をかけてくれたのは探し求めていた相手である東堂真胡であった。


「それで、私になにか用?」

「俺達に協力してくれ。梨央を───牢屋に捕まった皆を救いたいんだ」

「そ、それは私も賛成するよ。でも...鬼がずっと牢屋前で待機してるから...」

「そこで、協力してほしいんだ。鬼の討伐に」

「お、鬼の討伐?」

 真胡は驚いたような顔をする。その姿は、本当に女の子のようだった。


「鬼を倒すんだよ。殺しはしないから、大丈夫」

「そ、そうなのか...じゃあ、頑張ってみようかな」

「協力してくれるのか?」

「う、うん。私も捕まってる蓮也君を救いたいから」

「よし!真胡が仲間になってくれた!これで、戦力にも蓮也救出の糸口にもなる!」

 稜は純粋に、心から喜んだ。きっと、真胡が「捕虜救出隊」に参加しようと思ったのは、人を思うその純情さもあっただろう。


「んじゃ、皆のところに行こう!」

「う、うん!」

 2人は、再集合を約束した森林ゾーンに向かう。


 ***


 一方その頃、智恵・紬・美緒の3人は安土鈴華を探して遊具ゾーンを彷徨っていた。

 美緒が安土鈴華にアポを取り、会いに行く約束をしたのだ。


「ここら変なはず...」

 安土鈴華が指定したのは、遊具ゾーンにある建物の裏。ヤンキーに呼び出されたようで3人はドキドキしながらその場に向かった。そして───


「よぉ、遅いじゃねぇか。オレを待たせるとか、大罪だろ?」

 3人が、遊具ゾーンにある建物の裏に辿り着くと、室外機の上にあぐらをかいていた安土鈴華が、3人に睨みを聞かせた。

森宮皇斗、裏話。

栄と智恵のカップリングを密かに推してます。2人の恋路を、バレない程度に応援してるいい奴。

声に出して応援したりはしないけどね。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
[良い点] 皇斗は孤高の天才感が満載ですね。 ダンガ○ロンパの十神の上位互換っぽい。 栄と智恵のカップリングを密かに推している所も 地味に良い人っぽくて、好感持てます。
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