4月19日 その⑧
第3ゲーム『パートナーガター』のルール
1.このゲームは、ペアで行う。必ず、最初は2人でゲームに参加する。ペアで、自分ではないもう一人の人物を「パートナー」と呼称する。
2.生徒は全員「逃げ」。先生は「鬼」となる。
3.ゲーム開始前に「牢屋」を決め、「鬼」に捕まった「逃げ」は「牢屋」の中で待機する。
4.「牢屋」の中にいる人物は、体及び衣服に触れることで「脱走」させることができる。
5.捕まった人物は、「パートナー」のみしか「脱走」させることはできない。
6.4月23日23時59分59秒に「牢屋」にいた人物は、死亡する。
7.自分と「パートナー」の両方が捕まった場合、先に捕まったほうが「自分を脱走させる」か「パートナーを脱走させる」か選ばせることが可能。
8.自分と「パートナー」が両方捕まった場合に「自分を脱走させる」を選択した場合は、6時間経たないと「パートナー」を「脱走」させることができない。
9.捕まった「逃げ」は、「脱走」できる状態でないのに、「牢屋」の外に出た場合死亡する。
10.ゲームの途中でランダムに2度、「出口」が出現する。
11.「出口」から脱出すると、ゲームクリアとなる。
12.4月22日丁度に、死亡及び「出口」から脱出して「パートナー」がいなくなった人物をかき集めて無作為に再度ペアを設定する。その際、候補者が奇数だった場合は一つだけ3人のトリオになる。トリオの際も、ルールは同じ。
13.優勝賞金は、ペアで捕まった回数が少ないチームに渡される。
***
梨央と美緒は、お互いに「パートナーを脱走させる」を選び鬼である臨時教師に速攻で捕まるといういたちごっこを繰り返していた。
お互いが、お互いを助けようとタッチしようと動くから、鬼である臨時教師が動きを読むのは容易であった。
「梨央、このままじゃ一生終わらないよ!だから、梨央は逃げて!」
「嫌だ!ワタシが逃げてもどうせ、鬼は追ってくる!だから、美緒が逃げてよ!」
「───でも...」
「お願い、美緒」
お互いに捕まった状態である2人は、手を握りあう。お互い捕まっているので触れても、逃げることはできない。
今、「自分を脱走させる」か「パートナーを脱走させる」か選び権利は梨央にある。
「美緒、今じゃなくていい。隙を見つけては必ず、ワタシを助けに来て」
「───うん、約束する!絶対に約束するから!」
美緒は、梨央の手を握って約束する。
「じゃあ...パートナーを脱走させる」
梨央はそう選択する。これで、美緒は「牢屋」から「脱走」することができる。
───そして、梨央にも触れているので梨央も「牢屋」から「脱走」することが可能だ。
「梨央、行こう!」
「逃がしませんよ」
2人は、牢屋から走って逃げる。その後ろを、鬼である臨時教師が追い始めた。
「2人だけだから、誰にも心配かけなくていい!だから───」
「美緒、お願いね」
「───え」
逃げ切れるかもしれないという希望。それを、打ち壊すのは梨央自身だった。梨央は、数メートル走ったらその場に止まる。
そして、後ろから迫る鬼である臨時教師にタッチされた。そして「牢屋」の中にワープする。
「梨央!」
「奥田美緒さん。あなたに興味はありません。それでは」
そう言うと、鬼である臨時教師は「牢屋」の方へ戻っていった。
「私にはまだ力不足、誰かの力を借りないと...」
美緒は自分の手を握りしめる。先程まで、梨央と繋がっていたその手を強く、強く握りしめる。
「梨央!!!!絶対、助けてあげるからぁぁ!諦めずに、待っててねぇぇ!」
美緒は、自分でもこんな声が出るとは思わないほどに大声が出た。梨央からの返事は返ってこない。だが、牢屋の中から手を振っている梨央の姿が見えた。
美緒は、一先ず智恵達と合流しようと考えて森林ゾーンに移動した。鬼ごっこの行われるフィールドは鬼が徘徊していない実に安全なものであった。
***
俺と稜は、救護室を出た後に遊具ゾーンを歩いてみてまわった。
「指は大丈夫そうか?」
「固定もしてもらったし、大丈夫だよ。全治に時間はかかりそうだけど、鬼ごっこの今回はなんとかなりそう」
「そうか、ならよかった」
「俺の指の心配は良いとして、不安なのは梨央の方なんだよね...」
「あぁ、そうだね。メチャクチャ臨時教師に狙いを付けられていたから...」
稜が、指を折られる原因となった会話を俺は思い出していた。
「とりあえず、皆がどこに逃げたか探しながらこの会場を見て回るか?」
「そうだね、そうしよう」
俺は稜の意見に賛同し、遊具ゾーンから森林ゾーンにへと向かった。
パルクールゾーンは、稜の指が折れているので激しい運動は控えたほうがいいとのことで後回しにした。
そして、森林ゾーンへと進んでいくと───
「あ、栄!」
俺を見つけると、こちらの方に走って近付いてきてくれたのは俺の彼女である智恵だった。
「おぉ、智恵。大丈夫だったか?」
「私は、大丈夫だったんだけど...」
「梨央ちゃんと美緒ちゃんが...」
智恵と共に行動していた紬と、杉田雷人・結城奏汰の3人が少しドンヨリとした空気でやってくる。
「梨央と美緒がどうしたんだ?」
「臨時教師に追われて...梨央さんが捕まってしまった...」
雷人が俺に説明してくれた。キラキラと、輝いていてナルシストな彼だが、今日の彼はどこか暗かった。
「僕のせいなんだ...僕がもっとフォローをしてあげられていたら逃がせたかもしれない...」
「雷人、そんな自分を卑下するなよ」
「わかってる...でも、僕達男子がレディを支えるのはノブレス・オブリージュなのに...」
「まぁ、そりゃあそうだけど...」
「よし、俺も梨央を助けに行く!」
そう志したのは、紛れもない稜であった。稜は、梨央に恋をしているような動作が見られたのだが、本当なのだろう。
「じゃあ、稜君も協力してくれるの!」
紬が、キラキラした目で稜のことを見る。
「もちろんだ!俺も協力してやる!って言っても、指は折れてるし、梨央とペアでもないから救出は難しいんだけどね...」
稜がそう付け加える。
「俺も協力するよ。稜が協力して、俺は知らんぷりだなんて言えないし、俺も誰も死んでほしくないから」
「栄も一緒だ!」
「よろしく、栄───君、かな?」
奏汰が、こちらに手を差し伸べる。
「栄って呼び捨てにしてくれ。その代わり、奏汰って呼び捨てにさせてもらうが」
「わかった、栄。じゃあ、よろしく頼むよ」
俺は、奏汰の手を握る。どういう経緯で、雷人や奏汰がチームFのの4人と合流したのかは知らないが、協力してくれるなら大歓迎だ。
「とりあえず、これまでの経緯を教えてくれないか?」
「あぁ、わかった。それはだな」
「あ、皆。ここにいたのね」
俺らが、経緯を聞こうとした時に草原ゾーン───牢屋のある方向からやって来たのは、美緒であった。
「美緒!」
「ごめん、梨央は助けられなかった...」
「やっぱり」
「だから、私達は梨央を助けるように集まってるの!美緒も協力するのよね!」
智恵の言葉に、美緒は俺達を見回す。そして、笑顔になった。
「勿論!梨央を救うのに、こんなに大人数が集まってくれて嬉しいわ!」
美緒はそう言って、俺達を歓迎してくれた。梨央の救出に、美緒は必要不可欠であった。
そして、梨央を救出するための作戦会議が今、始まる。
『梨央救出隊 (仮)』
栄・稜・智恵・紬・美緒・雷人・奏汰
今回、健吾と純介を絡めようか迷っています。純介の見せ場は、今後用意したいと思っているが、健吾はどうだろう...
いや、一人一人の見せ場はできるだけ容易しようと思っているのですが。