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閑話 小寺真由美の過去

久々の閑話。

 

 小寺真由美───私は、生まれてから一度も家族以外から愛を貰ったことがなかった。

 家族と言うものは、血筋で繋がっているからかお互いを愛し合う生物だ。


 そこには、水と魚のように切って離すことのできないような契があった。

 きっと、私が愛されなかった理由には「怠惰だったから」と言う理由があっただろう。


 自らは「怠惰」で努力をしてきていないのに、自分は優れていると勘違いをしていたからだろう。

 それに、自分の容姿に納得がいっていなかったこの顔に生まれたので、天を憎んでいた。


 私の人生が悪い方に転じたのは高校1年生の頃であっただろう。

 暗い性格であり、かつ運動もできない私には取り柄と言うものがほとんど無かった。


 もちろん、世間一般で言う「陰キャ」と言う地位を確立してしまった私はクラスのギャル達にパシリにされる。


「ねぇ、ブーちゃん。クリームパン買ってきてよ」

「え...」

「ほら、早く行った!時間は有限だよ!ダッシュダッシュ!」

「えっと、お金...」

「あ?んなもんねぇよ。体に贅肉溜め込んでんだから、お前に金が無い訳無いだろ。痩せてる私達にもご飯を分け与えろよ。デブスが」

「───はい」


 私は、クラスのギャル達にパシリにされた。一応、情報サイトでは偏差値65を超えるような高校に行っていたが、どこに行ってもクズというものは存在する。それどころか、天才と呼ばれるような人物が人格者である場合の方が少なかった。


 それこそ、私をパシリに使っていたギャル達は、認めたくないが容姿端麗でスラッとしつつも出るべきところは出ている豊かなボディ。そして、ギャルのくせに成績優秀であった。


 もっとも、性格は下の下の下。自分より下のやつは見下し、気に入らないやつはいじめるタイプの人間だった。先生には良い面をしているので訴えても信用してもらえはしなかった。


 私は、ギャルや先生に怒りと恨みを募らせながらも高校1年生は乗り越えた。


 だが、問題が起こったのは高校2年生の春頃だった。2年連続で、ギャル集団と同じクラスになってしまった私は、塾の帰りに若いサラリーマンと夜の街を歩くギャルのリーダー的存在の人物を発見した。


「───」

「───」


 私も、相手もお互いに気付いていた。だが、話しかけるのは憚られたので、私はスルーをした。


 ───だが、私が見たのは決定的すぎる「パパ活」の証拠であった。




 ───次の日、私が自分の教室に入ると陽キャの男子にこう尋ねられた。


「なぁ、お前っておっさんと街を徘徊してるってマジ?」

「───は?」

 私は、思わず驚いてしまった。教室の奥にいるのはこちらを見てニヤリと笑うギャル集団。


 ハメられた。私は、そう思った。


 ギャルは、自分の真実(ゴシップ)が話される前に、私の(ゴシップ)を流したのであった。もちろん、私はパパ活なんてしていないし、こんな顔なのだからできっこない。


「えぇ、そうよ!昨日ワタシは見たの!知らないサラリーマンと真由美さんが歩いているところを!」

 昨日、パパ活をしていたギャルがそう述べた。立場が全くの逆。逆であった。


「ち、違う!私はそんな事してない!」

 私は迷った。だが、ここで言い返さなければ私にチャンスは一生やってこないだろう。




 ───私は、憧れていたのだ。ざまぁ系だとかそんな、悲劇のヒロインが報われる話を。


 だが、現実というものはとても非情であった。ざまぁもチートも存在しない。弱き者は、強き者になんか勝てない。下剋上なんて言葉は、令和の今には通用しなかった。


「パパ活してるのは、アナタの方でしょ!バレたからって、人に罪を押し付けないで!」

「───パパ活?」


 クラス全員が、私の方を怪訝そうな目で見る。そして、自分の過ちに気が付いた。




 ───()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「えぇ、パパ活なんてどういう事?誰もそんな事言ってないわよ?ただ、私は夜の街を知らないサラリーマンと歩いてたって言ったの。アナタのお父さんじゃ無かったの?じゃあ───」

 パパ活をしていたギャルは、そう言ってニヤリと笑う。そして、こう続けた。


「アナタがパパ活してることの証明になるんじゃないかしら?だって、そうじゃないと一瞬でパパ活だとは判断しないもの」

「───ちが」


 負け。私の負けは明白だった。いや、もとから勝負にすらなっていなかった。


 ───もう、察せられる通りその後の人生は最悪一色であった。


「パパ活デブス」として、ギャルに吊るされて晒された。私は、抵抗なんてできずにそのまま折れた。


 ただ、毎日苦でしかない学校を送った。だが、11月の中旬にこんな手紙が届いた。


 Dear小寺真由美

 素晴らしき才能を持つ皆様、お元気にしていますでしょうか?今から

 言及致しますのは、あなた達の18歳の過ごし方でございます。

 1年間、私達の運営する「帝国大学附属高校」で活動するというプログラ

 ムです。このプログラムに参加して卒業すると、大学には「帝国大学」

 に通うことが可能です。高大の一貫というわけです。是非とも、

 参加していただけないでしょうか。拒否するのであれば、断ってもかまいませ

 ん。ですが、勧誘のチャンスは一度きりとなります。是非とも、参

 加して頂きたいのです。プログラムの内容は、参加者にのみ、後日詳

 しく伝える旨のメールを送ります。プログラムの参加者は、以下の電話番号

 または、メールアドレスにまでご連絡ください。なお、参加しない方はメッ

 セージ等は不要です。他にも、ご質問等ございましたら、メールに連絡をな

 んなりとしてください。皆様のご連絡を、私達はお待ちしております。これ

 からの学生生活に幸あれ。

  電話番号 0○0ー○○○○ー××××

  Gmail ??????????????.com



 これに応募すれば、高校3年は別の学校に転入できる。そうすれば、私は「パパ活デブス」では無くなる。

 だから、私は両親に頼み込みこれに応募した。


 もちろん、「学校でいじめられてる」だなんて言えなかったから「頭のいい勉強がしたい」と頼み込んだ。

 両親は、納得してくれたので入学することができた。



 ───だが、転校してやってきたこの学校はデスゲームが行われていた。そこで、私は自分で自分の首を絞めて───禁止行為を犯してしまい死んだ。


 死んだ時に、痛いや苦しいなどそんな負の感情は無かった。


 ふと気付くと、涙が流れていた時のような、そんな感覚であった。



 ───これが、決して綺麗だとは言えない私の決して綺麗だとは言えない生涯であった。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
[良い点] 真由美の独白的に語られているけど、 死んだ後という点が気になりますね。 もしかしてデスゲームで死んでもその後がある? しかしギャルの虐めが陰険で妙に生々しい(苦笑)
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