4月1日 その⑧
15番の謎の言語を交えた自己紹介を、終えて次の自己紹介は16番に。
「ワタシの名前は、竹原美玲!年齢はピチピチの17歳よ!誕生日は12月13日で、秋田から来ました!趣味は料理です!一年間、よろしくお願いします!」
黒髪ロングのその少女。大きな二重な彼女。目には闘志のような何かが宿っている。
「そして、先生!ワタシはあなたに宣戦布告をする!ゲームの運営ごととっちめてやるんだから!」
「───ッ!」
そんな、宣戦布告。デスゲームの漫画の主人公が行うような挑発が行われた。
「そうですか...面白いですね。その戦争、受けて立ちましょう」
マスコット先生も、その言葉に受けて立った。
「で、気は済みましたか?次の自己紹介にしたいのですが...」
「なッ、ワタシの宣戦布告は軽く流されていいものじゃないわよ!」
「とっちめたいならとっちめてくださいよ。あなたなんかに潰されるような運営でもないので」
「クッ!覚えておきなさい!」
そして、竹原美玲は椅子に座る。次に立ち上がったのは、一人の少年だった。
「僕の名前は、橘川陽斗です。誕生日は8月28日で東京から来ました。趣味はアニメを見ることです」
その少年は、これといった特徴がなかった。イケメンだとも、ブサイクだとも区別が付かない顔。
背だって、高いほうじゃないし太ってるわけでもない。黒目黒髪のその少年の特徴があげられない。
すぐに、橘川陽斗の自己紹介は終わる。次は───
「よろしくお願いしまぁぁぁぁぁぁす!」
教室に、大きすぎる声が響く。その声を出したのは、橘川の後ろに座っている出席番号18番の少年だった。
「ワイの名前は津田信夫やで!誕生日は7月19日で大阪から来たんや!好きなもんは、野球や!ここで、皆になぞなぞや。火曜日と金曜日は確実にホームランが打てるで。なんでだ!」
坊主頭の少年。その声のデカい少年は、津田信夫と名乗った。そして、唐突に披露されたなぞなぞ。
答えは、もちろんわかっている。「カキーン」というホームランの打たれる音が、火曜と金曜だからだろう。
「なんや、皆こんな簡単ななぞなぞさえもわからへんのかいな。ほな、ワイが答えを教えたる。ホームランを打つときって、カキーンいう音がなるやろ?火曜と金曜も繋げるとカ・キーンやろ?だから、火曜日と金曜日とはホームランが打てるんや。まぁ、ワイは毎日ホームラン三昧やけど」
教室は、沈黙に包まれる。つまらないダジャレのような一発ギャグ。
「なんや、皆。ここは笑うところやで?あー、やっぱあれよのう。関東の人とかは、皆お笑いのセンスがないからわからへんのや。だから、東京03もサンドイッチマンも面白うないのや」
おいおい、失礼だぞ。だなんて、頭の中で突っ込むも話に入ろうとはしない。関わっても、ろくな結果にはならなそうだったから。
津田はなぞなぞを出して満足したのか、満面の笑みで席に座る。そして、立ち上がったのは津田と同じように背が高い一人の少女───いや、少年だった。
「私の名前は東堂真胡です。兵庫から来ました。誕生日は、4月9日です。好きな物は、テディベアです。えっと、よろしくお願いします...」
東堂真胡と名乗った少年。でも、パッと外見を見るだけではボーイッシュな女子に見えてもおかしくはない。
少女のような容姿をした少年。彼は、女々しいお辞儀をすると、席に座った。
これにて、窓際から3列目の自己紹介も終える。残りは、半分だ。
「んじゃ、俺だな。俺の名前は中村康太。京都から来たぜ。誕生日は2月20日だ。好きなもの───ってか、趣味はサッカーだな。よろしく」
出席番号20番の黒髪の少年。彼は、皆の方へ向き、微笑んだ。
若干ボサッとした髪を触り、そして椅子に座った。
次に立ち上がったのは、小柄な少年だった。
「僕も、中村君と一緒で京都から来ました。誕生日は7月24日で、名前は成瀬蓮也です。趣味は...ゲームです。よろしくお願いします」
どこか、陰鬱とした小柄な少年。その髪は、少し紫がかった色をしていた。前髪は長く、目までかかっていた。自己紹介を終えると、すぐに椅子に座ってしまった。
「俺の名前は西村誠。千葉から来た。誕生日は1月5日だ。趣味と言えるような趣味は持ち合わせていない。よろしく」
痩せ細ったその少年は、挨拶を終えると席に座った。落ち着いた印象を持つ西村誠は自らの髪をかきあげて、一つ大きな欠伸をした。
そして、立ち上がったのは23番の少年。
「ぼ...僕の名前は西森純介です。栃木から、来ました。誕生日は9月15日...です。趣味は...ボカロ曲を聞くこと。よ、よろしくお願いします...」
挨拶を行い、すぐに座ってしまう少年。その動作一つ一つに恐れや慄きなんてものが感じられた。
そう、今俺らはデスゲームを行っている真っ最中なのだ。だから、恐れているのも仕方がないだろう。
きっと、彼は気が弱くてビビりなのだろう。そう、捉えた。
そして、次に立ち上がったのは一人の少女だった。
「わ...私の名前は橋本遥です。どこから来たとか、誕生日はいつだとかは言いたくないです...趣味は...うーん、なんでしょう...」
そのオドオドとした少女は、自らの情報を名前以外公開しなかった。自己紹介の意味があるのかわからないが、初対面の俺らが信用できてないことだけは理解できた。
───そうだよな。俺らは信じあっていいのか、わからないな。
そんなことを、思ってしまう。折角、新しい学校でこれから頑張っていこうと思っていたのに。
まだ、自己紹介は続く。
早く、話を進めたいというのに!