4月10日 その⑯
津田信夫の「情報①デスゲームに参加する以前に人を殺したことがある」が真実だと発覚。
それには、ちゃんとした理由があった。
津田信夫の情報
①1票
②0票
③0票
④4票
⑤0票
津田信夫の情報は、「情報①」に1人。「情報④」に4人と1人だけが分かれたのだ。そして、マスコット先生によると「情報④平塚ここあを殺した犯人を知っているは嘘」だそうだから、森宮皇斗が満点を取るには「情報①」しかあり得ない。
マスコット先生が「情報④」を本当だが、嘘だと言い張っている可能性も考えられたが、そしたら俺は満点を取っていることになるのでそれもまた不正解だ。別のところで嘘をついている可能性もあるが、そうするとまた別のところで齟齬が生じる。
「情報①デスゲームに参加する以前に人を殺したことがある」が真実だと発覚した。皆、この事に気付いているのだろうか。言ったら、津田信夫は激昂して暴れ始めるだろう。
それこそ、『スクールダウト』で棄権や辞退ができない───すなわち、椅子から降りれない状況に助かっていたという現実はある。
このまま、津田信夫の「情報①」が真実だと明かされるのはマズい。
「───あれ、もしかして信夫の情報①って真実だったりする?」
「「「───ッ!」」」
全員の視線が、そんな発言をした岩田時尚の方に向く。それは、気付いていない者には驚きの表情で。気付いている者には、何故言ってしまうんだという蔑みの表情で。
俺は、気付いていたが蔑みではなく驚きの表情を向けていたが。
「な、なんやと?!そんな訳ないやろう!トッキーもワイのことを責めるんか?これだから、東京の人は面白う無いねん!」
津田信夫が、そんな事を言っていると俺が座っていた椅子と、机は教室の床に着地する。
「ご、ごめん。なんでもないよ」
岩田時尚が、周りの視線で触れてはいけないと気付いたようだ。これで、一先ずは安心。だけど、津田信夫の残酷な行為は全員に「真実」だと聞かれてしまった。正確には、この場にいない山本慶太を除く全員なのだが。
「それでは、優勝者の森宮皇斗君には5万コインのプレゼントです!」
誰かに拍手されることも、軽蔑されることもなく森宮皇斗は正々堂々戦って満点を獲得し5万コインを手に入れた。
惨敗。惨敗だった。俺には勝てなかった。いや、津田信夫の情報で協力せずに「情報①」に入れておけば俺も同率一位だっただろう。それ以外は、満点だったのだから。
「そして、ゲームに参加した池本栄君・宇佐見蒼君・津田信夫君・村田智恵さん・森愛香さんにはそれぞれ3万コインのプレゼントです!」
俺達5人は3万コインを手に入れた。
でも、俺は美緒に看病してもらってたから半分の1万5000コインは譲渡する予定だけど。
「───なぁ、マスコット先生。コインの譲渡ってのは可能か?」
「はい、まぁ一応は可能ですが...どうしてです?」
「予選の最中、俺は美緒に助けられた。だから、ポイントの半分は譲渡したいんだ」
「へぇ...そうですか...村田智恵さん。あなたの彼氏、他の女にプレゼントしようとしてるみたいですけど、大丈夫ですか?」
「助けてもらった恩を返すのは当たり前じゃないの?」
マスコット先生の嫌味な質問に、智恵はキョトンとした顔で答える。
「うぐ、優しい心の持ち主だった。デスゲームに向いていない...」
マスコット先生は、そんな事を言っている。
「本当は優勝して2万5000コインを渡すつもりだったんだが、生憎優勝はできなかった。だから、半分の1万5000コインを渡すことにする」
「いやいや、そんなにいらないよ。栄が頑張ったんだから、栄が持ってなよ」
美緒は、そんな優しい言葉をかけてくれるも俺は首を振った。
「これは、俺の恩返しだ。だから、受け取ってくれ」
「えぇ...そんな事言われても...」
俺は、美緒に1万5000コイン譲渡した。どうせ、3万コインあっても学校の売店で売っている特殊アイテムは買えそうにないしそれでよかったのだ。
「───では、ゲームも終わりましたし今日はこれで解散にしましょう、解散!」
マスコット先生はそう言うと、教室を出ていく。
もう、外はすっかり暗く───いや、真っ暗だった。ていうか、今は4月10日の夜中の1時13分。暗くないわけが無かった。
ゲームから解放されると、突如として体に疲れがやってきた。
「疲れたぁ...」
智恵が、隣でそう言いながら突っ伏した。俺は、智恵に近づき後ろから抱きしめる。
「───」
智恵の柔らかい体の触り心地が制服越しからでも伝わってきた。ずっと、抱きしめていたい。
「今日はもう遅いし帰ろうか」
「───うん」
そう言うと、俺は智恵から離れる。智恵が立ち上がると手を伸ばしてきた。
「───繋ご」
俺は、差し伸べられた手を掴んでそのまま教室を出た。智恵の頬は少し赤くなっていたが、満足気でもあった。
俺は、手にした幸運を離さないようにこれから毎日努力しなければならない。だが、これほどまでにしていて楽しく嬉しい努力はないだろう。
俺は、智恵をチームFの寮に送り返して自分の宿に戻った。制服から私服に着替えて、風呂に入る順番待ちをしていると眠くなってきたので風呂に入らずにベッドの上に倒れ込んだ。
そして、そのまま眠りの世界に誘われ───、
***
4月10日の午前2時30分。生徒会室に合ったのは、いくつかの人影。
「いやぁ、残念残念。今夜はゼロキルだったな」
「栄君さえいなければ...」
「変なところだけ勘がいいんだから、しょうがないわね...」
「村田智恵さんではないが、俺達も栄を利用すればいい。そうだろう、皆」
「「「あぁ」」」
生徒会のメンバーは、一人の少年の提案に返事をした。
「ふふ、皆さんが楽しそうで何よりです」
その話し合いを聞いて笑みを浮かべるのは、同じく生徒会室にいたマスコット先生であった。
さて、第3ゲームを考えなければ。