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4月10日 その⑪

 

 場が支配するのは、お通夜のような重く暗い雰囲気。マスコット先生の口で行われた人間宣言。


 きっと、この言葉の意味の説明は不要だろう。

 だから、いちいち説明はしない。


 今、問題なのはマスコット先生がゲームの続行を選択したところだった。マスコット先生は、最初からゲームを辞める気なんて無かったのだ。


 そして、まるでそう予想していたかのように「情報② 生徒会に所属している」を公開した。


 村田智恵の情報

 ①自殺しようとしたが、失敗した

 ②生徒会に所属している

 ③???

 ④???

 ⑤???


 智恵が「生徒会だって言われたほうが...まだ、マシだよ...」という発言を行い、その次に発表された情報が生徒会に所属している(それ)であった。


 俺の時の情報⑤「細田歌穂と付き合っている」であったり、クラス内で起こった問題をもとに制作している気がする。


 チームのメンバーが決まるのは、4月9日になった瞬間だった。それまでは、いつポイントが変動してもおかしくない状況であった。

 もし、あらかじめ35人分の情報を製作していたとするならば話は早いだろう。


 だが、本当にそうしていたのだろうか。


 35人分の情報を作るには、かなりの時間が必要だろう。その人物の過去を読み解き、言われたら嫌な情報を選別し───と、一人だけでも時間がかかるはずなのにそれを35人分とは到底考えづらい。


 もし、未来が見えたりするのであれば本戦に勝ち進む人はわかるだろうけど、未来を見るなんてことは不可能だ。


 ───故に、俺はその場で情報を作っているのではないかと判断する。


「あ!もしかして、そういうこと?」

 声を出した瞬間に全員から睨まれるのは、裕翔であった。毎度、俺の情報が出るたびに首を突っ込みとやかく言ってきたのだから当然であろう。


「栄と智恵さんって、両方とも生徒会なんでしょ?」

「───は?」

「え?」


 思わず、俺と智恵は驚きの声が出る。先程まで吐いており、少しゲッソリした智恵の顔が少し歪む。

 だが、醜いとは全く思わなかった。


「栄と智恵さんがカップルになれば、2人でいてもなんらおかしくはないでしょ?それに、2人で部屋に籠もってイチャコラしていたって体のアリバイにもできるわけだしよ」

「んな...」


 言い返すことができない。「俺も智恵も生徒会じゃない」は理由にはならない。


「どうして、俺をそんなに生徒会にしたがるんだよ」

「嫌悪感と懐疑心からだな」

「主観じゃねぇかよ!」

「デスゲームに主観も客観もねぇだろ。信じるのは自分自身。それ以外は皆、敵。違うか?」


 俺は、反論できない。


「でも、ワイは裕翔の言うことも少しわかるんやけどな...あ、裕翔に肩入れする意味やちゃうで?ワイは正義感の強い栄のことやからちゃうとは思うんやが、ワンチャンあるかもしれへんやん?」

「見苦しいぞ、津田信夫。疑うならしっかり疑うと言え」

「ワイは、思ったことを言っただけや。そんなことより愛香はどうなんや?」

「妾の名前を気安く呼ぶな。たたっ斬るぞカス」

「ワイの質問にも答えんか!」


「栄が生徒会であろうが、智恵が生徒会であろうが妾には関係ないことよ。生徒会なのであれば、間者として殺せばいいだけだし、生徒会じゃなければ注目の的として利用させてもらうだけよ」

「愛香もわりかし注目の的だけどな...」

 俺は、ツッコミを入れる。


「ふん、そんなのはどうでもいい。それでだ。栄、お前は生徒会なのか?」

「違うよ。でも、違うと言っても信じないだろう?」


「ここにいるひねくれ者どもは皆、信じないだろうな。こんな正義厨が自己保身の為に大勢を裏切るなんて信じ難いのにもかかわらず。正義を語る(騙る)者は、マジョリティに所属するからこその正義だ。マイノリティならば、それは正義ではなく世間一般での悪になろうよ」

 森愛香の、遠回しに俺を庇う発言。


「私も生徒会じゃない...です...」

「遅刻する小娘に生徒会なんて大役はダメそうだしな。同い年とは思えんほどにドジでノロマでバカだ」

「おい、愛香。言い過ぎでは?」


 俺は、そんな会話をする。何はともあれ、愛香が俺たち2人を庇ってくれているのは確かだ。


「───んで、それでもまだ裕翔。貴様はちょっかいを出すのか?」

「もちろんだ。正直、栄のことは嫌いだからな。破滅してくれれば万々歳だ」

「最低だな」


「はぁ?お前が聞いてきたんだろ!殺すぞ!」

「女を返り血に染めるのが貴様の性癖なのか?」

「───ッ!」


 裕翔は愛香の間髪入れない煽りに苛立ちを隠せていない。

「裕翔、今回()お前の負けだ」

 康太にそんな事を言われながら、裕翔は肩を叩かれている。裕翔にも優しくしてしまう康太は、きっと俺よりも寛容だろう。


「それで、マスコット。智恵のことを生徒会だと言ったって疑う者は皆無だぞ?さぁ次は、どんな小賢しい嘘を教えてくれる?」

 森愛香がマスコット先生にそう述べる。


「そうですねぇ...とびっきりの情報を用意していますのでこんなのはどうでしょうか?情報③───」


 マスコット先生が「とびっきりの情報」だと言った。智恵が唾をゴクリと飲み込んだ音が聞こえた。もし、これで「情報①」を超えるような内容が来たらどうしようか。


 智恵は、本当に壊れてしまうのではないか。

 そんな心配をしつつ、俺ができるのは智恵の手を握りぶつかってくる情報に耐えるだけだった。






「───皆より1歳年上だ」



 村田智恵の情報

 ①自殺しようとしたが、失敗した

 ②生徒会に所属している

 ③皆より1歳年上だ

 ④???

 ⑤???

『スクールダウト』

情報の公開される順番 津田信夫・森宮皇斗・宇佐見蒼・森愛香・池本栄・村田智恵

現在 村田智恵 情報③の開示

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
[良い点] ああ~、予想通り荒れる展開。 そして公開される③。 これは知られたくないよなあ。 智恵、強く生きろよ!!!
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