4月1日 その⑦
続いて、出席番号10番の自己紹介だ。左隣に座っている、世間一般ではブスと認識される顔をした少女だ。
あまり言ってはいけないのであろうが、太ってると言えばいいのだろうか。大人しめの黒髪がどこか異彩を放っている。
俺だって、付き合いたい人は選り好みする。だからといって、仲良くしないって訳でもない。
「わ...私は...小寺真由美です。誕生日は、11月22日で、北海道から来ました。好きな物...は飛翔少年です...」
飛翔少年。はてさて、聞いたことがない言葉が出てきた。
「なぁ、健吾。飛翔少年ってなんだ?」
「さぁ?オレも知らないよ...」
「お前ら、飛翔少年を知らないのか?」
話しかけてきたのは、健吾の前の席に座っているスケバン風の女───安土鈴華だ。
「え、あ、うん。知らないよ」
「最近流行りのK-POPアイドルだよ」
「へぇ、そうなんだ...勉強になる」
「オレだって、あんま詳しい訳じゃねぇけどよ。日本でもドームでライブするくらいには有名らしいぜ」
安土鈴華さんからの解説。流行りのK-POPアイドルらしい。難しいね、アイドル事情は。
そんな会話をしていると、いつの間にか挨拶は11番に。
「名前は、斉藤紬です!新潟から来ました!誕生日は9月24日で、好きなものは可愛いものです!つむって呼んでください!」
少し茶色くなったような髪を頭の後ろでポニーテールにしている彼女。どこか、真面目そうな雰囲気を醸し出しているが、いざ中を開けてみれば子供のおもちゃ箱のような独創的な世界が広がっていそうな彼女。
───彼女を例えるならば、びっくり箱の中のピエロだろうか。
いかにも真面目なプレゼントだと思わせ、開けてみると道化師が現れる。そんなサプライズ性を持った性格をしていることが理解できた。
「つむちゃんか...可愛いな...」
そんなことを、健吾は呟いている。だけど、無視だ。無視。
続いて、12番の挨拶に繋がれる。
「どうもー、佐倉美沙でーす。佐賀から来ましたー。誕生日はー、8月20日でーす。好きなものはイソスタでぇ...あ、イソスタやってる人いるー?やってる人いたら、フォローし合おうねー」
そんな、どこか既視感のある挨拶。どこで見たかは全く思い出せないのだが、既視感だけがある自己紹介内容であった。
佐倉美沙を名乗ったその少女は、クリーム色の髪を持ち、綺麗な顔をしたどこかユルい少女。手の方を見ると、萌え袖をしているし、スカート丈が短くされおり、膝が出ている。制服のシャツの第一ボタンは止められていなかった。
そして、廊下側から2列目までの自己紹介が終わる。3列目の自己紹介がスタートした。
「エブリバディ、ご機嫌麗しゅう、マドモアゼル。僕の名前は、杉田雷人さ」
そして、クルリと半回転し皆の方を見る。そして、右手を一回転させて、左胸の方に持ってきてお辞儀をした。
「僕は煌めく東の都からやってきたよ。誕生日は愛する者に甘味をプレゼントする日にちと一緒さ。好きな物はこの世界。1年間、仲良くしてくれよ」
そして、虚空にウインクする。
───いや、皆に届くようにウインクしたのであろう。
アレだけカッコつけているのに、黒髪なのはきっと生まれた本来の自分自身の姿に相当な魅力があるからだろう。その努力からか、彼の顔からは一切にニキビ跡が見つからない。メイクした跡というのも、俺からは見れない。
誕生日の愛する者に甘味をプレゼントする日にちは、きっとあの日だろう。男子諸君がソワソワしてしまう日。何度も靴箱の中や教室の机の中を確認してしまう日。そう、岡田以蔵の誕生日だ。
最も、俺は彼の誕生日の日には、毎年確実に数個本命であろうチョコを貰っているから恒例行事としてソワソワしなかったのだが。
そして、13番から14番へ。
立ち上がったのは、黒髪で左右両方のこめかみのところでピンを止めている少女。
「その...私の名前は、園田茉裕です。岡山から来ました。誕生日は8月24日です。好きなものは...アニメです。あの、園田って呼ばれると{その...園田?}って少し駄洒落みたいになって恥ずかしいので、できれば茉裕って呼んでくれると嬉しいです」
「陰」の部類に入るであろう彼女は、容姿端麗だった。陰キャ美女と表現したらいいだろうか。
そして、15番に。
「私の名前は、田口真紀です...三重県生まれの三重県育ちです。誕生日は5月15日で、好きな物は物語です。मैं तुगी मौत दा गाली देगा」
「───ッ!」
「ほう、面白い」
最後、よくわからない言語で話した彼女。髪は青とピンクのメッシュで黒マスクを付けている。手には、よくわからない洋書を持っておりミステリアスな存在だ。
「質問でーす。最後、なんて言ったんですかー?」
佐倉美沙さんが田口真紀さんに質問する。
「उस सवाल दा जवाब देने दा कोई फायदा नेईं। मरना.」
「え、だから何?何語?」
「日本語ではないことは確かだね」
田口真紀は、そう答えて席に座る。
「よく、そんなマイナーな言語を学ぼうと思ったな。面白い」
稜の目の前に座っている背の高い少年がそう呟いた。彼には、解読できているのだろうか。
「माकी तगुची, अफसोस करो उन शब्दों को मेरे पर फेंकने।」
「笑わせてくれる」
稜の目の前に座っている背の高い少年も、田口真紀と同じ言語であろう言葉で喋り、田口真紀に鼻で笑われる。彼らはどんな会話をしているのか皆目検討もつかない。
謎の言語で対話がされる中、自己紹介は次なる16番へ。
グーグル翻訳を使用。再翻訳すると、意味が変わってしまう...
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