723話 素材フェス迄の道のり
「昨晩はお楽しみでしたか?」
「久々に若い頃を思い出してどんちゃん騒ぎをした気がする。」
若い頃から静かに飲むことの方が多かったが、それでも騒がない訳じゃない。ダーツバーに行っては負けたらショットグラスを飲むなんて事もしたし、仲間内だからと酔って誰かと共にデュエットする事もあった。
青山が上手いと言うか元本職なので気持ちよく飲んだり騒いだりするのに載せられて、昨晩は結構散財もした気がする。それでも薬の販売価格よりは安いのがなんとも。直接差額を渡すと言っても受け取らないだろうし、青山の了承を得てから寄付にでも回すかな?あやつは結構寄付とかもしてるし。
「毎回静かに飲む方だと思っていたが賑やかな場もいいのだナ?」
「基本的に日本人はお祭り好きだからね。近くで祭りやってるって聞いたら顔を出すし、子供達が大きくなってからはあんまりだけど、帰省する予定もお祭り行く?行くならこの日からだけどとか聞いてたよ。まぁ、お店の人じゃない初対面の人とどんちゃん騒ぎする程肝は座ってないけどね。」
そう考えるとくるくる移動しながら色々な人と話を合わせられる人達は凄い。1対1じっくり話すならいいけど毎回違う人と話してその人が喜ぶ話し方やら振り方をするのも技術なんだろうな。
そんな話をしていると松田からメールが届いた。内容的には素材フェス開催に付いて的なものだな。協賛企業が多いと言うか、どの企業も生き残りをかけて仕事しているのでアピールの場には飛びつく。と、言うか国外企業も来てない?
極々少数だけど中国っぽい名前やらロシア、米国の企業やそれ以外もある。前回は本部長選出戦との抱き合わせでやった為日本企業限定だったが、今回は素材を売るのと同時に技術の祭典にでもするつもりなんだろう。自国開催のリスクはあるものの、他国の技術を見られると言うアドバンテージはそこそこデカい。
国境が緩む中で隣国同士でくっついて共同開発と言う話も出やすくなるだろうし、その話が出れば企業は近くなる。そして、国の血である金を生む企業を国は無視出来ない。なにせ今は中国だって企業には気を使うし、大企業が潰れれば文字通り国が傾く。
一時期不動産バブルで大分ヤバかったみたいだが、金貨やら出土品やらでかなり持ち直したんじゃない?共産主義自体は捨ててないし分配云々は揉める所があるとニュースでやっていたが、軍拡やらに置くウェイトは減り技術革新とゲート攻略に力を入れているようだ。多分、共産主義を実現する目処としてロボットやらアンドロイドがいれば!
と、言う面もあるのだろう。アチラでは造形師も若者を中心に人気で藤を目指す!なんて言う人気配信者もいる。割と藤の軌跡なる追っかけ配信は面白かったな。
個人レベルの情報収集なので、大人になってからどんなフィギュア作ったとかが主だったが、選出戦以降の捏造と言う名の推測を交えた話では完全に恋愛ゲームの主人公してたし、BL方面でも斎藤とよくカップリングされているらしい。なんにせよ外観と言うか姿の変わった中位は少ないし、選出戦で至ったのでその点がやはり大きいのかな?
「結構色々な企業が来るんですね。」
「会場のキャパ広げたら警備がキツイけど、海外協賛企業出来るならウチも!って所は多いみたいだね。まぁ、商品作っても売れないとマズイし、アピールの場は限られてるし。」
「当日はウィルソンも顔を出すと言っていたナ。まァ、大半は政府との会談目的だろうがいいように使われていル。」
「ウィルソンさんかぁ・・・、多分あの話かなぁ・・・。」
「心当たりがあるのカ?」
「心当たりと言うか16歳未満でスィーパーになる子の話じゃないかなと。」
「どんなものダ?」
「仮に次に最初からEXTRAと言うスィーパーが誕生するならその世代なんじゃないかって話があってね。」
「16歳未満でスィーパーになるのがEXTRAの鍵なんですか?かなりハードルが高いと言うか、夢モノ語たり的と言うか・・・。」
「う〜ん・・・。私もそれはどうか分からないけど、仮にそれしかない人は他とはなにか違うと思うんだよね。EXTRAの名前が分かれば推測も立ちやすいんだろうけどそれもない。そこで魔女や賢者から推測すると・・・。」
「推測すると?」
「仮に最初から賢者だとすると好奇心旺盛で止まらない人とか?」
「今時の人はそんな感じじゃないですかね?動画もゲートも旅行も、職へのアプローチも含めてかなりアクティブですよ?」
「そうだけど、そこには大人としての歯止めや倫理観があるでしょう?多分、最初から賢者である人は無知に嘆く暇なく自らのルールで動き、結果が見えたからと言って止まらず、思いついた事は試さずにはいられない。多分そんな子だよ。」
「なんと言うカ・・・、クソガキだナ。」
「今時は大人しい子が喜ばれるんですけどね・・・、アパートで暮らすと騒げば隣の部屋から煩いとか苦情も来ますし。」
「それは分かるけど、それで止まるなら賢者足り得ないよ。黙って部屋に閉じ籠もって実戦もしないのに知ったか振りするのは賢者じゃない。」
「EXTRA賢者であるクロエが言うと重さが・・・。」
「さっきの話を元に米国で子供を探すト・・・。」
「ストップストップ、コレは私の所感であって本当にそうかは判断がつかない。」
「なら魔女はどうなのダ?」
「魔女・・・、番外とか?」
「番外?」
「そう多分番外。いいものであり、悪いものであり、鍵であっても、主役でない者。」
魔女には悪いが魔女の立ち位置を考えると部外者以外ないんだよな。まぁ、最初の選択以外出ないと言うし、選ばれないなら番外として本当の部外者になる。
「EXTRAの話はいいよ。目指すとすれば最初からそれを引くよりも、自分で育った方が多分より使いやすくなる。まぁ、なんにしても色々と試みはしてるみたいだよ?特に飛び級制度と言うか飛び職制度を日本に入れる入れないで米国に話を聞きたいって言ってたし。エマ的に飛び級ってどう?」
「どう?と言われても困ル。若くして大学を出てそれがどれだけ有利かと聞かれれバ、箔が付く以外には感じんゾ?まァ、私がそう言う場所で働いていたとも言えるガ、ホワイトワーカーとブルーワーカーが米国では別れていタ。その中でホワイトワーカーは学歴に拘るガ、本質的にはどれだけ仕事が出来るかになル。それを嫌うなら研究者だガ、そこでも権力争いに入っていク。」
「日本人よりよっぽど闘争してるなぁ・・・。実力主義だから仕方ないんだろうけどさ。」
「そうだガ、職があるせいでかなり変わっタ。例えば刑務所で読書に目覚めていた囚人が出所してやり手のスィーパーになったリ、医者顔負けの治癒をしたりナ。笑える話ならゴミ拾いのホームレスが鑑定師になったと言う話もあル。」
「確かにその人的には拾った物が判別出来ないと困りますもんね。」
「本人も困るが我々も困ル。学のないホームレスをどう教育したものかとウィルソン達も頭を抱えたいたサ。まァ、記憶力も上がりスルスル知識入って本人は喜んでいた様だがナ。」
「素材フェスで来る人の事考えると更に混沌としそうだな・・・、ブローカーがメインだろうけど、そのブローカーを指示するのは大使館だろうし、それがダメならゲートに入れろって話もあるだろうけど、松田さんはどこまで話を練ってるのやら。」
サイラスにも折り行ってと言う形で非公式にゲート誘われてるし、素材フェスも近づくし奥にも行かないといけないしで忙しい。でも、1つ1つクリアしていくしかないんだろうな。




