表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
街中ダンジョン  作者: フィノ
85/838

68話 ゴツい装備品

 ゲートから出るとむせ返るような暑さが肌に纏わり付く。汗は出ないが、暑さも感じれば寒さも感じる。みんなには悪いが何処かでアイスクリームでも買おう。差し入れに全員分に買えば文句もないだろうし、橘に連絡が取れてこちらに来れるなら、待ち時間をカフェで潰してもいい。何はともあれ暑いのだ。指輪からスマホを取り出しコールする。そう言えば、迎えに来てくれと言われたらタクシー移動か。そんな事を考えながら出るのを待っていると、5コール目に繋がった。


 職場の環境改善を千代田にお願いしていたが、今回の件はそれだけでは無く黒岩の息もかかっているだろう。警察にしろ自衛隊にしろ、身柄の所在を争いはしたが大元は政府の機関で間違いはない。その中での権力争いの駒であり王冠にされたが決着は付いた。なら、後は残ったパイの奪い合い。松田の言った大会はいつあるかわからないが、それでも準備し息のかかったものを本部長に据えれるのなら、相手の組織に要請を出しても断られない。


 元々交わることの少ない組織だが、ここに来て互いをライバル視でもし出したのかな?俺はその戦いに交じる気はないが、知らない間に景品にされる事はあるかも知れない。・・・、あまり無茶を言うなら、毒リンゴにでもなってやろうか、魔女だけに。


「もしもし橘さん?私、私ぃ、ちょっちげ〜と行かなぁい?」


「いくいく!職場放棄していく!って、何やらせるんですか。」


「意外と精神は大丈夫なようですね。赤峰さんからかなりまいってると聞きました、キャリーするのでとりあえず15階層まで行きませんか?黒岩さんなら快く承諾するでしょう。」


「その根拠が気になりますが、行けるのであれば行きたいですね・・・。判定機のおかげでかなり仕事が片付きました。政府が押さえたS鋳物師は堅物ですが、仕事はしてくれたようです。」


「それは良かった。これから時間はありますか?あるなら連れていきますよ?」


「それはありがたい!すぐに向かいます、何処で待ち合わせしますか?」


「近くの商業施設のカフェ、モンシャン・モルドにしましょう。暑くて敵わない、アイスでも食べておきますよ。」


 茹だるような暑さを尻目に、商業施設の自動ドアをくぐればそこは楽園。クーラーが効いて涼しいし、行き交う学生に親子連れ、奇妙な格好の集団も今は見慣れた。呼び込みをする店員は声を張る。平和、その言葉が頭を過る。ちょっと前に大規模戦闘が秋葉原であったが、それでも日は昇るし飯は食べなけゃならない。


「そこ行くお嬢ちゃんよっといで!」


「悪いな、店は決まってるんだ。」


「そりゃあ残念、またの機会に!」


 呼び込みの声を躱して目的の店へ。なんだかんだで2ヶ月以上こちらに住めば、ボチボチ店も覚えてくる。今回の店は夏目達と遊びに来た店で、ワッフルコーンにクレープで巻いたアイスクリームを入れるという、ちょっと変わったアイスが美味しかった。店員に3個ばかし注文し、ちょうど席が空いていたので座って食べだす。1つ目を食べ終わり、溶け出す前にもう1つと手を伸ばそうとした時に橘が見えた。仕方ない、1つは奢りとして渡すとしよう。


「橘さん、こっちですよ。はいどうぞ、暑かったでしょう。」


  挿絵(By みてみん)


「これはどうも、怖いくらいすんなりと黒岩さんが送り出してくれたのですが、何かあったんですか?」


 受け取ったアイスに舌を伸ばしながら橘が聞いてくる。黒岩からは何も聞かされてないのか。まぁ、中位である以上何時やるか分からない武道会には出なくていいし、情報を渡していなければ、橘が本部長になるならないの選択権を得る前に、内々に処理できる。流石にそこまで横暴ではないと思うが、会談の時に黒岩が頭を抱えていた姿が思い出される。


 さて、あの会談はどこまで開示したものか?講習者には伝えたが、それは彼等が至ってないと言うのも加味している。ただ、橘の場合警察の切札らしいのであまり話すと、黒岩から苦情が飛んで来るかもしれない。政府組織に属して同列になったかも知れないが、年季は天と地ほどの差がある。まぁ、ぼかして伝えるとしよう。


「警察の切り札が何時までも5階層止まりで遊んでいては面子も立たないでしょう?そういう事です。」


「何かしらの動きがあったと・・・。まぁ、いいでしょう。私は気晴らしができればそれでいいですから。」


「了解です、食べたら行きましょうか。夕方までには戻りたい。ほかのメンバーの事もありますから。」


 アイスを食べ終わりゲートへ。さっさと5階層から潜りだして橘と共に飛んでいく。しかし、考えてみれば橘は5階層以降はこれが初めてだ。遅れを取る事はないと思うが大丈夫だろうか?モンスターもそれ相応に強いし・・・、あぁ、鑑定術師なら視えるのか。なってから更に出土品を鑑定しているのだ、ちょっとやそっとのモンスターなら見抜けるのか・・・。なら、もしかして俺も視られてる?


「橘さんは私が鑑定出来ますか?」


「全く見えません。何ならその武器も分かりませんよ。申告されたEXTRA職 賢者。EXTRAとはそれだけ強力なのでしょう?現にこうやって空を飛んでいますが、何が何やらよくわからない。」


 言葉を信じるなら、どうやら見えていないらしい。視られて騒がれても面倒なのでちょうどいい。しかし、中位でみえないのならやはり、上位にならないと見えないのか。申告してない魔女がいるので、そこに至るまでは見抜けないモノと考えよう。


「まぁ、追々見えるようになればいいですよ。ナビゲート出来るならお願いします。無理なら煙を撒きましょう。」


「いえ、出来ますよ。ここから東・・・と、言ってもコンパスもなしじゃ分かりませんね。あちらです。」


 橘の指をさす方向にキセルを吸ってプカリと煙を出し、雑談しながら先を急ぎカッ飛ばす。駄賃の箱を回収し、モンスター退治も忘れずに。そうして15階層、タイムアタックをしている訳では無いが移動を優先すればかなり早い。大村ゲートではサバイバーが忍者しながらアイテム回収に勤しんでいると言っていたが、忍びながらモンスターを躱しているので、彼等も回収速度は早いだろう。


 ダンゴムシ素材なんかも欲しいので、ギルドが稼働仕出したら依頼の管理も視野に入れた、素材回収兼斥候部隊なんかも設立した方が安全管理もしやすいのかもしれない。そう言えば、ゲートに入った後はいつもランダム転移状態だが、なにか法則はないのだろうか?


「橘さん、ゲート内に私達が出現する時、なにかパターンはあると思いますか?」


「ん〜、あるかもしれませんが分かりませんね。私も5階層以降は初めてなので。警察の方に何かデータがあれば知らせますよ。」


「それはありがたい。さて、15階層まで来ましたが小手調べはなにか目星ついてます?」


 辺りを見回すが、近場に何体かいるものの、どのモンスターにしても形状が違う。最も煙を纏わり付かせて調べているので、コチラが気付かれる事はないだろう。幸いどれもそこまで強そうではないが、橘の技量も不明なのであまり無茶をしても仕方ない。


「そうですね、カマキリとダンゴムシですかね?試すにはちょうどいい。」


  挿絵(By みてみん)


  挿絵(By みてみん)


 まぁ、カマキリとダンゴムシと言っても、それっぽいだけで本当にそれかと言われれば疑問は残る。どうせ主観で話しているのだ、違うなら違うで構わないし。何はともあれ、相手は決まったし残りは橘の技量次第。お手並み拝見・・・、拝見・・・!?


「えっと・・・、橘さん?何がどうしてそうなったんです?」


 なんだろう、鑑定師は鑑定したモノを使いこなせる。そして、それは多分武器だろうとなんだろうと関係ない。橘はなんというか、現代風甲冑のような物を着ていた。武器は剣ではなく大きなハサミ、俺の胴体くらいなら余裕で裁てそうだ。身体は西洋甲冑の様なモノを装備していて、小手の部分には銃口の様な物が見えている。


  挿絵(By みてみん)


 ここに来て別方向をぶっ込んできやがった。俺達は防具欲しいよー、戦闘するとすぐ服が駄目になっちゃうよー・・・、やった、やっと糸ができて防具の道筋も見えたよ!と、言う時にこれである。空気を鑑定して使いこなしてほしい。メンバーが見たら、さぞ微妙な顔をするだろう・・・。


「武芸者の玉を防具にして、ハサミはスクリプターの武器を改造してもらったモノですね。中位 鑑定術師の戦闘をご覧に入れましょう。」


 そう言いながら橘は悠然と歩き出した。モンスターもその姿に戸惑ったのか、様子見するようにコチラを伺っている。歩き出した橘は左手をかざすと、腕はそのままに手首から先を下に向けるとターンッと銃声がし、モンスターに3つの穴が空いてクリスタルに変換される。そして、肩に担いだハサミを開いて閉じると、更に複数のモンスターに穴が開く。


 ガンナーの武器で攻撃して、スクリプターの能力でダメージを重ねたのだろう。能力を使いこなしてらっしゃる。鑑定術師ならどの武器だろうと、鑑定出来れば使いこなせる。なら、大量の武器も指輪に収納してさえいれば、臨機応変に使い分け出来るし、スクリプターの記憶力ならしまった事を忘れる事もない。


 更に銃声が響きカマキリの様なモンスターを屠り、ダンゴムシに取り掛かったが、こちらは硬く装甲を削りこそすれ貫通しない。どうするのかと見ていると、今度は鎧から細い糸が伸びだし、ダンゴムシの継ぎ目に入り込み中からモンスターを分解しだす。いくら硬くても、下からの攻撃には弱いダンゴムシ。継ぎ目からやられたら一溜まりもないだろう。


 本人が言うだけの事はあり、モンスターはサクサク倒され撃たれるビームも盾師の盾を出したり、ハサミで受け止めたりと難なく処理していく。うぅむ、ここまでされると15階層も橘には物足りないかもしれない。軽く戦うにしても、肩慣らしにもならないような涼しい顔をしている。


「ふむ、軽いですね・・・。ダンゴムシでサッカーでもしたい気分ですよ。鑑定術師の能力を殆ど使ってない・・・。」


「橘さん、これ絶対全部弱点攻撃とかしてますよね?視れば分かるなら、それを狙わない手は無いですから。」


「そりゃしますよ。雑魚でも何されるか分からないんですから。尤もダンゴムシなら糸より、槍でも出した方が処理は早いですが。」


 橘もワンマンアーミー化して戦闘狂染みてきた。薬のストックも多いだろうし、バックアップは警察がしてくれる。なんたって彼は警察の切札、缶詰にされているが事が起これば最前線待ったなし。しかし、これは対峙する相手が可哀想になるな・・・。犯罪者にかける慈悲はないが、それでもなにかする前にちょん切られる。それに、出土品を最多鑑定している彼なら、大抵のモノは使いこなせる。20階層に連れて行ってやりたいが、時間がなぁ・・・。残業すれば5階層潜るだけなら、明日の朝には終わるだろうがそれでも強行軍、15階層に来たばかりだしもう少しこの階層で遊んで貰ってもいいかな?


 先に行きたいなら行ってもらってもいいし、駄目だと思うなら立ち止まるだろう。オカンでは無いのだから、俺が橘に何か制約を付けるのも違うし、ここから先は黒岩と橘に任せよう。先に行くから手伝ってくれというお願いならいくらでも受け付けるが。


「とりあえず、今日はここまでにしましょう。物足りないなら退出ゲート付近で掃除すれば安全でしょうし、橘さんの今の状態なら遅れを取ることもないでしょう?」


「慢心する気はないですが、もう少し先に行きたかったですね。まぁ、後は自分でどうにかしますよ。5階層降りるだけなら、最短ルートを辿ればそこまで時間もかからないでしょうし、何より移動速度自体も今は早いんですよ?」


 そう言いながら、走った橘は確かに早い。滑るように進む姿はそれそこ走るというよりは、低空を飛んでいるような・・・。鑑定品を片っ端から買い取るなり、改造して貰うなりしているのだろう、金のかかった装備品である。しかし、防具ができれば鍛冶師に改造してもらって、橘程ではないだろうが、みんなこれくらいの装備は出来るようになるのかな?


 そうなれば、身体能力の高底はある程度カバー出来る。中核にするなら武芸者の玉で、調整は自分でするなり鍛冶師に依頼するなり、どこぞの企業がハブを取り付けれるらしいので、鍛冶師でなくとも調整出来るようになるかもしれない。日進月歩だが、ドンドンファンタジーになっていくな・・・。現代科学と未知の出土品の融合、想像が捗る。


 それに、装備品なら俺も着れるしいいことづくめ。これでゴスロリから卒業出来る?そんな事を考えていると、走っていった橘も帰ってきたので、退出ゲートを目指して最短ルートを辿る。途中のモンスターは橘が処理すると言ったので、任せてしまいメンバーに連絡を取ると既に全員退出しているとの事。さて、うちらも速度を上げるとするか。


「橘さーん、ほかのメンバーは外に出たようなので、少々急ぎましょう!」


「分かりましたー!飛ばしますよ!」


 そう話す橘の速度が更に上がる。あやつは1人でサイバーパンクしてるな・・・。肉壁スーツも下に着込んでいると見た。環境もあるだろうが、流石はSの中位安定感は半端ない。確かに中位なら中層のモンスターでも十分に対応出来るだろう。そうなると、ボチボチ35階層以降も調査しなくちゃいけないかな?


 死なないというアドバンテージを活かして1人で先を見て、安全マージンを考える。その上で、ある程度行ける指標を作ればメンバーも動きやすくなるだろう。何時までも過保護に訓練していては、育つものも育たなくなるし今回は35階層目標なのでいいが、講習会が終わればその後の対応は彼等に任せる事になる。


 その時、35階層以降は知りませんでは無責任になる。どこまで潜って、どこまで指標を作ればいいかは、話し合ってからになるだろうが、スタンピード回避には奥の強力なモンスターを狩る方が効率的だろう。何せ、ゲートから溢れる時の指標は規模なのだから。


 本来なら犬の攻撃を受けて耐えられるかを検証したいが、あれは空間攻撃。下手に受けてもらうと死んでしまうかも知れない。現状耐えれそうなのは卓かな?ほかの中位メンバーもイメージが有ればどうにかなると思うが、今はまだそこまでしなくていいだろう。退出ゲートが見えたのでそのまま退出、物足りないだろうが、多少はガス抜き出来ただろう。


「お疲れ様でした、何かあれば言ってください。黒岩さんも嫌な顔はしないでしょう。」


「話がすんなりと通るのはいいですが、裏がありそうで嫌ですね。まぁ、当面は15階層と缶詰で我慢しますよ。色々試したい出土品もありますからね。」


「あんまり変な実験しないで下さいよ?何があるか分からない。」


 モンスターを倒して回るならいいが、訳の分からない爆弾とかを使われたら何が起こるか分からない。出土品を使いこなせるのだから、やろうと思えばほぼ不可能はないだろう。目録を読んでも胡散臭い品名は数多くあるし、警察があんまり一極集中して橘に出土品を鑑定させるのも不味いような・・・。


「お疲れ様ですクロエさん、そちらの方は?」


 メンバーの最終確認をしていた宮藤が、こちらに気付いて近寄ってきた。橘はフル装備状態で顔も隠れているので気付かれなかったらしい。確かにこの装備なら気付けという方が無理がある。ほかのメンバーも遠巻きにコチラを見ている。


「久しぶりです宮藤君、私ですよ。」


 そう言って装備を解除した橘の顔が見えると、宮藤は納得したような顔で表情を崩す。組織は離れたが昔の上司、良好な関係だったようだ。思えば2人が会うのは武器配布以降では初ではなかろうか。方や缶詰、方や講師。会おうにも中々時間を作るのが厳しいだろう。


「お久しぶりです橘さん、至った末にその装備ですか?中々ゴツくなりましたね。」


「私は出土品を使いこなすのも仕事だからね。指輪の中はビックリ箱状態だよ。久々にゲートに入って15階層でモンスターを相手にしたが、もう少し奥に行かないと歯ごたえがね・・・。」


 橘の顔は暗に宮藤も、物足りないんじゃないかという顔をしている。それに宮藤も苦笑で返す辺り、彼も・・・、中位のメンバーはやはり何処か物足りなさを感じているのかもしれない。うぅむ、本当に計画の練り直しが必要な時期なのか?何事も話し合いからだな。もう数週間もすれば米国からエマ少佐も来る事だし・・・。


「自分達も20階層を越えたくらいなので、そこから以降は探り探りですね。幸い先行者がいてモンスターの把握もしやすですから、そこまで危ないとは思いませんが・・・、追い付いたら一緒に先へ行きましょう。」


「ええ、その際はよろしく。」


 そう言って2人で握手する。橘を発見した赤峰もこちらに歩いて来ているので、このまま解散して警察メンバーで話してもらうのも有りか。どうせこのまま駐屯地に帰って解散するだけだしね。点呼まで終わっているなら、それこそ後は事故なく変えるだけ。


「宮藤さん、赤峰さんこのまま解散していいですよ。私がメンバーを連れて駐屯地に戻りましょう。明日の連絡事項は何がありますか?無いなら今日と同じメニューで進めますが。」


「無いですね。強いて言うなら、20階層以降を潜っているメンバーが、そろそろ25ゲートに着きそうなので、そこから以降を潜るか一度その辺りで後続を待つか話すくらいです。」


「了解しました。では、今日はお疲れ様でした〜。」


 橘達と別れて講習会メンバーを連れて駐屯地へ。途中、さっきのイケメンは誰だと質問が飛んできたが、配信の橘さんと話すと納得。遠巻きで見てもイケメンと言われるとは、あやつやりおるな。これだけイケメンと言われるからには、イケメンなのだろう。そのうち芸能界とか入らんかね?


 講習会メンバーを連れて駐屯地へ帰り、インナーの整備依頼を聞きながら風呂で洗われてホテルへ。前よりは服の破損は格段に減り、破損した服も修復機能で修復するので、大きく問題はない。ただ、洗い替えが複数欲しいと近接組から要請が来ているので、糸は更に出さないといけない。元々無料なのでそこまで苦にはならなくなった。なので、どんどんホテルで出しては遥に加工してもらっている。そして、今もその糸を出している最中。


 しかし、橘の装備を見ると鍛冶師に改造してもらえば、更に糸の精製も加工も、何ならインナーを作るのも楽になるのではなかろうか?本部長として、警察に正式依頼を出して装備品の充実を図りたいな・・・。脱ゴスロリ服!そろそろ俺にも防弾チョッキ風ベストとか、格好良さげな鎧とか・・・。


『美しくないから、却下ね?』


『おい待て!美しさと俺の痛みと、どっちが大事なんだ!』


『ゴテゴテして、品のない鎧。そんなもの私に相応しくない。着飾りなさい?美しければ美しいほど、綺麗なら綺麗なほど、私の力は増していく。』


『・・・、本当なのか?』


『やる気のイメージがあるなら、分かるでしょう?貴方は私の上だけど、下働きのやる気は貴方次第。賢者は協力を確約したけれど、私は何も約束してない。』


 うぅ・・・、賢者も言ったが魔女は醜くするのだけは許さないらしい。何が美しくて、何が醜いのか?醜美という言葉もあるし、九相図なんて美術品?もある。あれは中々に衝撃的な作品だが、言わんとしている事は理解できる。まぁ、自己解釈だが。しかし、ここで魔女にボイコットされても困る。恥安でここまできたが、本当に腹を括る時なのか・・・。ゴツい鎧とか、シャープなヒーローデザインとか、個人的には流線型の方が好きだが、そんなメカニカル鎧とかとか・・・。どうやら、俺は着れなくなったらしい・・・、呪いでも受けたのかな・・・。女装、いや女性なのだから正装の呪いとか?


『問うが、ゴスロリ服。ヒラヒラフリフリの戦闘時に今着ているような服を着れば、助けてくれるのか?強制ではなく、自発的に。』


『そうねぇ・・・、いいわよ?貴方が美しくしている限り、助けてあげる。美しい姿で、先に立ち、魅力的に奥へ誘う。数多のゴミはひれ伏し、クリスタルへ変わり仄暗い煌めきを放つ。素敵ねぇ・・・。どうして貴方は戒めるの?娯楽ではなく、快楽に身を委ね、永劫の時を喜悦の声を出しながら、1人慰め咽び泣く。奥さんの時も良い声だった、なら、構わないんじゃなくて?』


『・・・、それは少なくとも今は拒否する。そんな怠惰な者が立つ先など程度が(・・・)知れている。着飾りはしよう。しかし、快楽はなしだ。あくまで娯楽、この一線は変わらんよ。』


『そう・・・、まぁ、いい。力を貸すわ。』


 ゴスロリは確定してしまったが、力は貸してくれるらしい。何時もゴスロリでいる訳でもないし、戦う時だけ着るとしよう。それ以外は賢者も補助してくれるし、よほどの事がない限りは大丈夫。俺自身も遊んでいる訳では無い。ちゃんと魔法を使いイメージを固めているのだ。コードに付いては全くだが、ソレはそれコレはこれ。超絶パワーアップは無いらしいので、コツコツ積み上げるしかない。


 しかし、魔女よ。妻との情事を持ち出すのは卑怯じゃないか?そりゃあね、うん。体を重ねれば声も出るし、敏感な所で触れ合えば気持ちも良くなる・・・。うわぁっ、なんだ、顔が熱い!中にいるから見られも聞かれもしてるのは知ってるけど、面と向かって?言われるとは恥ずかしい。


「お父さん顔真っ赤だけど大丈夫?熱とかでるの?」


「な、何でもない!ちょっと気はずかしい事を、思い出しただけだから!」


「そう?ならいいけど・・・。」


「ツカサの気はずかしい事って何でしょうね?なんだかんだて、女風呂とかも遠慮はするけど、恥ずかしいとは感じてないような・・・。はっ!私女と・・・、いいえ!講習会女性陣が女と見られてない?」


 望田が何やら頭を抱え出した。何を言い出すのやら・・・。変に意識して恥ずかしがれば、おもちゃにされるか、相手が遠慮する。それはこちらとしても、本意ではない。ゲートに入る以上何時死んでもおかしくないのだ、なら、引っ張る人間はできるだけみんなにのびのびと過ごしてもらいたいのだよ、後悔のないように。


「大丈夫、大丈夫。カオリは魅力的で綺麗な女性だよ。」


「聞きました遥さん。私口説かれてます?」


「お父さんの逃げの常套句です。本気ならお母さんに連絡するよ?」


「待て!色々板挟みだろ、それ!」


 そこまで言って誰からともなく笑いが出る。さて、色々考える事はあるが協力関係を強固にする為、色々動かないとな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
評価、感想、ブックマークお願いします
― 新着の感想 ―
[気になる点] モンスターを倒すとクリスタルに変換される でも ダンゴムシなどから素材が取れる この辺りがどうにも想像できません これまでの文章から想像すると ゲーム的に表現するなら モンスターを倒…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ