721話 それぞれの立ち位置
「あまり本国に話せない事を暴露されても困るのだガ!?」
「秘匿して盗まれる方が困る。多分シェンゲン協定の拡大先の第1候補は米国だと思う。それは今までの行いを加味しても関係性を加味しても必然的だよ。ここで親日国にだけ拡大すると言えばどうなるか?それを分からないほど馬鹿じゃない。」
親日国は多いけど、そこにどう言った思惑があるかは別!国の付き合いは人の付き合いとは別で、完全に利益しかないと思う。その利益を考えるなら米国を先頭にしてそこからと言う話は自然な流れだ。現状を考えるなら大使は復活したが未だに大国として付き合いが深いのは米国と言える。
歴史と言うか過去のいざこざを中国なんかは消しているが、それが実を結ぶのはもう少し先だな。それこそ松田達が・・・、歴史を知らない人が政治に介入し利益を求める頃にならないと緩む気はしない。
そして俺は政治に介入しする気はない。これは不文律と言う面もあるし個人の一言で民主主義を壊す気もないと言うアピールでもある。多数の賛成した意見に対して個人の意見が押し通せると言うなら、それは政府と言う組織が必要ないものと証明した形となる。
陰謀論ではないけど本気で不味いと思う事以外意見を挟む気もなければ、それを危惧して今回グラマスを否定しろと言う話にはならないだろ?権力や発言力と言うのは増せば増すほど個人への重圧が増す。それを考えると最終的に俺をどのポジションに据えるのか?と言えばグラマスは仕方ないにしても、どこかで一度解任騒ぎを起こして民衆の総意で辞めさせたり対抗出来る者としてアピールする必要もあるな。
まぁ、辞める事に忌避感はない。辞めたなら一切の干渉を受けず個人でモンスターを狩ればいい。かなり難しいだろうけど身を隠すならそこそこツテもあるだろうしな。有力候補とするならドール国か?高槻製薬ではなくドール国なら藤が王様で王政を敷く以上、王の発言は絶対である。
「米国と日本が国境撤廃状態になるんですかね?」
「否定は出来ないかな?個人的な発言・・・、統計と言うものを考えると言語が同化して文化を受け入れられるなら、残るのは出身地に寄るアイディンティティ。そして日本の文化は漫画やらアニメで輸出し続けられているよ。聞いた事ない?優れた文化には追従する。それは企業文化にしても社会文化にしても歴史・伝統にしてもね。」
かつてアインシュタインは『世界の文化はアジアに始まってアジアに帰る。』と言う予言めいたメッセージを残した。全文はこんな一言ではなくかなり長いが、言語がバベル化してそこの起点がどこにあると言う予言なら納得も出来る。現に日本語は広まりイメージ糧として文化は学ばれている。
「選民思想が過ぎないカ?確かに漫画もアニメも禅も学んだガ、他の国にもいい文化は多数あル。」
「う〜ん・・・、個人とするなら同一化はクソ喰らえで自分の思う方向に走って欲しいけど、エマも言語の統一化の有用性は認めたし、協定拡大を米国以外に認めないと言えば大多数から批判が出る。その時日本政府はよくも悪くも長期的に見れば協定拡大を拒否出来ない。それに、日本文化って他の文化のいい所はどんどん食べて身にしていくんだよね。」
政治で言えば共産党がある事を外人に言えばビビるし、無宗教と言えばならなんでクリスマスやら盆、正月を祝うと呆れられ、なんでハロウィンまでやりだしたと聞かれると。単純に祭り好きと言うのもあるしなぁ・・・。俺の子供の頃なんてハロウィンとか祝ってなかったし、ゲームのイベントと企業戦略か?
秋って紅葉を見に行こうよ!くらいしかすることなかったしさ。それが今ではコスプレして練り歩く百鬼夜行状態になってるし。基盤となる本人達の文化を残しつつそこにスルリと入り込む。結局誰かが楽しそうにしていたら取り敢えずやってみて、後は勝手にカスタムしてそれっぽい事をしてるだけ。格式云々よりも楽しさ優先だしな。
「確かにニンジャに侍、着物に憧れる米国人は多いナ。クロエが国際会議で着物を着ていた時もそれを真似するセレブは多かっタ。作法を気にしないと言うなら浴衣は割と私も好きだシ。」
「浴衣の場合身体を包む様に着るから体型的な制約って身長くらいだしねぇ。しかし、海外配信者がゲートから外に出る時たまに浴衣着てたけど着やすいからか。」
「早着替えするなら浴衣やらは簡単ですからね。帯締め直せばそれで整いますし。と、素材フェスって話はどれくらい詰まって来てるんですか?必要数に達したとは増田さんから聞きましたけど。」
「エマ達のチームが集めた分はそのまま米国に行くとして、先ずは政府が価格を決めてからって話だね。断続的に潜った分、先に渡した分についてはある程度決まってきてるだろうし、具体的には明言されてないけど多分8月くらいじゃないかと思うよ。まぁ、予想だから価格設定が難航すれば延びるだろうけど、長引かせれば長引かせるほど価格設定は難しくなるし。」
「ふ厶・・・、確かに私のと言うか米国チームで回収した物は米国に持っていってもらうとしテ、増田も受け取らないと言っていたナ。なにか裏があるのカ?」
「そこそこの裏があるよ。ただまぁ、その裏を重要視するのは政治家やらだから私達にはあんまり関係ないかな?」
慎重な舵取りはいつも必要だろうけど、今回は今までと毛色が違ってかなり今後を左右するものになる。なにせ四カ国で価格決めて、その四カ国は購入に動かないとしているのだ。回り回って自国に回すと考える事もあるだろうが、それが明るみに出ると今後の立場はかなり悪い。
なにせ先に分前渡してそれを受け取ってしまってるはずだしな。既にロシアが何かを隠すと言う面で途方もなく神経すり減らしてるだろうし、それを見て隠し通せるからコソコソやろうなんて言う、豪胆と言う名の蛮勇的な愚行をすればどうなるかは目に見えている。
寧ろ松田がごった煮国家思想に乗るなら、今回の素材フェスはそれの下準備としてとことん使い倒す。それこそ米国も中国もロシアも絡まない市場が数日とは言え日本に産まれ、何をどう欲しがるかのリサーチも出来る。
技術を売るにしても物を売るにしても素材を売るにしても、どこでも同じ価格で同じ様な物が作れるなら、工場建設やら人の移動やらの計画も立てやすくなるし、企業が絡めば政府は見ているだけで勝手に動いてくれる手駒が合法的に手に入る。
言葉の壁が消えつつある中で、主導権を握りながら批判も浴びずに動くと考えるならこの機会は見逃せない。まぁ、そこにどれだけ追従してくる国があるのかやら、個人単位であの国嫌いと言う話はどうしても出てくるんだろうけどさ。
「そう言われるとパシリ感はありますね。お金と言う面ではかなり優遇してもらってる気もしますけど。」
「私達は半分公務員だからね。エマの場合は軍人だし、国からの指示には文句は言ってもある程度従うしかないよ。寧ろそこで反旗を翻せば今はかなり不味い状況になるし。」
「確かにギルドマスターが政府に不満を持っていると表立って言われると不味いナ。米国は米国式でギルドを作りはしたガ、管理者はペンタゴンだ。それを考えるとギルドマスターの不満はスィーパーの不満と受け取れるだろうシ、そこから燻った火種が燃え上がれば打倒政府と言う流れも出て来ル。・・・、一対一構想とかもしかして政府は作ろうとしているのカ?」
「さぁ?ギルドはスィーパーをサポートしてモンスターを倒しつつスタンピードに備える。政府は国や世界を安定化させて安心して生活出来る環境を作る。どちらかが欠けても、どちらかに不満が出ても立ち行かなくなるのが現状だよ。」




