691話 無垢なる・・・
「それは事実上、ダブルEXTRAの目が潰れたと言う話では?」
「・・・、潰れましたね。」
EXTRAはいいとしてダブルは時間をかければいいというものでもない。しかし、そうなると初っ端EXTRAはそれが限界なのか?実体験から考えると、確かに使いこなせさえすればそれだけでも事足りる。例えば俺が魔女か賢者を選択して残りを剣士や魔術師とした場合、それだけでも相当強力だし賢者が話さなくても色々な魔法を使える。
「その話を我々に信じろと?事実上逆らうなと言う勧告ではないか!」
「落ち着いてくださいセルゲイ氏。仮にその逆らうなと言う態度を取るなら、もっと横暴に動いてもおかしくないでしょう?事実としてクロエさんは不死を我々に見せた。このカードはもっとセンセーショナルに使った方が有効になりますよ。例えば暗殺者から爆殺されても何事もなく歩き出す。例えばケネディ大統領の様に狙撃されても何事もなく話し出す。それに、彼女は国を作るのに3年程度と言ったらしいですが、そんな動きは全く持ってない。」
「しかし、その心変わりがいつあるとも分からないだろう?」
「分からないが、ならどうする?真正面から挑んで勝てる算段もなければ、地位を追われる事に怯えて下手に出るか?私としては獣人との関係性・・・、異種族コミュニケーションを実戦するしかないと思うが?」
「確かにハーワード氏が言う様に、どうすると言う話に解決策はありませんね。ゲートに籠もられれば交渉権を使用してもらえるかも分かりませんし、いなくなられても我々としても困ります。」
「そもそも皆さんとしてクロエさんにどうあって欲しいのですか?日本政府としては協力体制を作り本部長と言う地位を持って共に仕事に当たる相手と考えています。ゲート発生当初からの行動を聞けば、東京に来るのも嫌なら家族と離れるのも嫌。講習会に参加するのも好ましくなければ、さっさと家に帰りたい。本人は責任感があるので手放せば勝手にゲートに入りモンスターを倒していたでしょうが、そう言った協力関係がなければ更に不明点は増えたでしょう。」
「確かに松田さん含め色々な人と会議しましたね・・・。官民一体の時とか。逆を言えば政治的な意見はそこしか出してもいませんし、民間側からは公務員だけゲートに入れるなんて話になれば間違いなく打倒政府まで行き着く。」
宝の山やら超常的な力を見れば寄越せと言うのは人の性。それが政府と言う相手であっても他国で民間人が入っている言う情報が入ればウチも入れろとなる。実際秋葉原ゲートに集まった人は多く、その群衆がそのまま反政府勢力として動き出せば国内は荒れる。
政府と国民が意見不一致で荒れるのは仕方ないのだろうが、それが飛び火して俺やら家族の方にまで広がるのは容認出来ないし、何より世界中の人が潜ってもいる中での爪弾きにされれば必ず後から不具合も出る。まぁ、あの時そういった話し合いをしなければ、こんなにも政府と関わる事もなかったのだろうが・・・。
「どうあって欲しい・・・。」
(何もするなは愚策だ。どの国もまだ知らなければならない事は多い。最初の交渉とされる資料は世界中の上層部で共有されているが民間人に開示するには今暫し時間を要する。なら他国とも仲良くして意見交換をして欲しいと申し出ても、今の時点ではこうして快く思っていなかった中国や私の様なロシア人とも普通に話している。批判ではなく明確なビジョンか。)
(ロシアは突っ込みすぎだ。松田の質問にはコチラを探る意図がある。下手に言ってそうすると言う回答が出るかも知れないが、裏を返せば発言を元に拒否される可能性もある。少なくとも今はまとまる時だろう?ようやくクロエと言う個人からここまで情報を引き出すに至ったのに。)
「なら魔女か賢者に会わせてもらえますか?クロエさんにどうあって欲しいと問うなら職も含めてでしょう?」
「それは・・・。」
「別にいいですけど発言に保証は持てません。確かに私の口から出た言葉ですけど、あの時ああ言ったと言われても止める前に話されればどうしようもない。」
「よろしいんですか?」
「別に構いませんよ松田さん。前置きはしましたし不用意な事を言ったとしてもこの場限り、それも部外者の発言として他の方も受け取ってもらえるならね。」
見渡せば皆頷く。さてどちらがいいかと言えば賢者なのだが、コイツはコイツで俺達のゴタゴタには興味がない。かと言って魔女を出すと何を言い出すか分からない。ヤバい事は話すなと言っても何をヤバいと感じるやら。
「さて、出すに辺りどちらがいいですか?話す口は1つしかないのでどちらかが出る事になりますが。」
「ふむ・・・、言い出しっぺの私が聞くのもなんですがどちらがいいとかあります?松田さんも含めて。」
「それは・・・、何か基準は?」
「私は美しい方がいい!クロエも美しいが魔女の方が美しいだろう?なら美しい方がいい。賢者はどうも教えを請うべきと言う話は分かるのだが、勝手に考えろと言われそうでな・・・。」
「職の方がソーツよりも上として、その職の中でも格ってあります?」
「職は1つの宇宙人からの贈り物ではないのか?」
「違いますよ。同族と言うからには種族としてあります。どれくらいいるのかは知りませんが。」
魔女達の同族が無数にいるのも怖いが基本はギャラリーだしな・・・。そもそも暇だから力貸して見ているので何かをすると言う訳ではないだろうが、格と言うなら魔女が1番上になる。なにせ姫とか言われてるし。と、言うか性別的概念はあるのだろうか?王でも王子でもいいわけだが・・・。割とはぐらかす時ははぐらかすんだよね。
「なら2つのうち格上の方で。」
「分かりました。」
(そう言うわけで魔女よろしく。くれぐれも変な事を言うなよ?)
(言わないわよ。つまらない会話しかしていないし私には関係ない話だもの。)
「さて何かしら?聞きたい事は私達の事?それとも愚物であるソーツの事?それとも貴方達が今後どうなるかとかかしら?何でもいいけどギャラリーを壇上に上げるのはつまらないわよ?それは貴方達の世界を別の者へ渡す行為だから。」
「魔女・・・、さん?」
「ただの魔女よ。職に就いているなら分かるでしょう?主様もそこそこ育った、だから私が私と感じられる様になった。まぁ、感じたとしても何があるわけでもない。私も職の1つだから。」
「あ〜・・・、確認を取りたいのだが君達が地球を攻める事は?コレが1番の懸念で先日も地球は危なかった。」
「ないわよ。私達はただの職としてあり見ているだけ。それ以上もなければそれ以下もない。あくまでこうして話し、従うとするならクロエにだけ。興味があるとするなら貸した力がどう使われるか?かしら。」
「それは悪用も含めてですか?私達としては悪用されない方が・・・。」
「それは原生生物基準でしょう?無いから取ってくる、貧しいから欲する、優れているから妬む・・・。その他全てをひっくるめて私達は許容する。だってそれは貴方達の選択でしょう?使う貴方達が悪と断罪しても私達にはそれを止める手立てはない。」
「なっ!?」
「当然と言えば当然か。」
「完全に部外者と言うつもりですか?」
「当然よ。コレ・・・、クロエは対話しなければならないと思った。でも他はそれに値しないし、私は同族の観戦を邪魔しない。原生生物でも分かるでしょう?」




