674話 コアどうする?
「中々の無理難題をいいますね。」
「預かるのが無理難題ですか?まぁ、それは確かなんですが・・・。」
物を預かる。そう考えたら前は金庫でよかったが今だとそれにも不安が出る。なら指輪となると個人所有でその人の暗殺やら交友関係がネックとなる。そもそも信用出来る人間がどれだけいるのか?人は理想で動くが感情で翻す。
理性的だろうと理想を掲げようと論理的な思考だろうと人の判断と言うものは、その時の状況や世相でいくらでも変わる。例えば戦争しろと国として動いて国民もそれに従ったのに、負けた途端に手の平を返すように。まぁ、勝ち負けがある以上負けたら粛々と事実として受け入れて行くしかない。
そんな中でコアを誰が預かるのがいいのか?そもそもゲート内で得た物を個人の物として接収を拒んだのは官民一体化する為には必要な事で、個人がやった事と国がやった事を分けるためでもある。
「国に預けるよりもこういう時こそ国際機関・・・、国連に投げてみてはどうです?今日本国として預かるよりはその方がいいと考えますが。幸い中露も大人しくなった事ですし。」
「それでいいならいいですけど、大丈夫ですかね?」
「懸念は分かりますが大国と言う屋台骨にもぐらつきはあります。取り込みと言う訳では無いですが、これから先団結すると言う方向に持っていくなら象徴的な物は必要だと考えられます。当初・・・、オフレコで話すならそれは嫌でしょうがクロエさんが担えばよかった。交渉権保有やダブルEXTRAと言う職はそれを担えるだけの価値があり、実績としても申し分ない。しかし、それを個人に持たせたくないと言うのは人の性です。そこで・・・。」
「対抗策になり得るコアを使うと?私としてはそれで肩の荷が一部降りるなら万々歳ですが・・・、荒れませんかね?」
「言い方は悪いですが我々は差し出す立場で相手は受け取る立場です。モノの安全性さえ立証出来れば後の保管管理で面倒が起ころうと知った事ではない。」
松田が悪い政治家ムーブしているが、一国で保管管理するよりも責任を投げ付けて多数の国で管理した方が責任の所在は分散される。それに、盗まれたなら探す目は多い方がいいし、何より国際会議でいいとこなしだった国連としても実績は欲しい。それを宇宙言語と言うか俺への仮対策として持たせる。
まぁ、宇宙言語出来たからと言って俺はなんともないが、それで力を削げると考えるならいいのかな?嫌なのはまた宇宙人を呼び込もうとする事だが、中露ストッパーがここで役に立つ。流石に今回の事で懲りたと思いたいが、実害の無い威嚇はどこまで効力を持っか・・・。まぁ、4カ国がとしてはメッセージ送信にNGを・・・、間違いなく中国だけはどの時点でもNG姿勢だな。
永遠を目指すが故にいらぬゴタゴタは避けるだろうし、モロに奉公する物から威嚇された国でもある。流石に何百年後は分からないがチャンが今の地位を維持してるなら、そこまで大きくスタンスを変えないと思いたい。まぁ、その前に。
「日本政府に任せます。ただ、渡す前に今来てる学者先生達とアルに確認してもらいましょう。鑑定防止装置も試しておきたいですし。」
「鑑定防止処置と言うとアレですか?最近英国で発表された魔法で包む的な。」
「ええ。鑑定師曰く魔法の鑑定は気持ち悪い。それを何重にも重ねれば鑑定は難しく時間がかかる。鑑定師の権利等々の問題で研究していると聞いていましたが、英国でこの方法が発表されてからは色々と進められてるみたいですよ。」
生身で生活しづらい鑑定師。それの権利的なモノをどうにかしたいと言うか、悪い事を考えてモノを隠したいと考えたのか?何にせよ魔法の鑑定が気持ち悪いと言うのは共通の様なので、それを利用して魔法で包み込み先に魔法を見せて揺さぶると言う方法が発表された。
俺はまだ試していないがやるとすればこの方法がベターかな?情報を集めてからと言う話にはなるが幸い神志那と言う鑑定術師もいるので試しはやりやすい。
「あれかぁ〜、元々魔法の鑑定って知らないイメージの取り込みみたいなモノだからかなり気持ち悪いんだよにゃあ。事と次第ではその限りでもないんだけど、私なら突破出来るかにゃあ。」
「ここでキラー発言されると困るんですけどね神志那さん。」
鑑定術師とオカルトなら暴露と鑑定のコンボで確かにやれない事はない。イタチごっこはどこまでも続きそうだが、それもまた研鑽の道だろうな。そのうちルパン的な一味も出てくるのだろうか?出て来たとしてもとっ捕まえておしまいとする。
流石に今の世の中に義賊はいらない。そんな事をしたいなら自分で金稼いで直接施設に寄付とかすればいいよ。よくよく古着やら寄付金やらがまともに使われてないと言う人がいるが、お金はなんとも言えないが古着なんかは海外に持ち出されたら売られる事もある。
それは直接渡すよりも売った方が利益があると判断された場合だが、それでワクチンを買ってたりすると言う。その辺りも詭弁と思うなら直接渡すしかないし、昔とは違い人は地球をある程度自由に歩ける。割と日本はシェンゲン協定に前向きな姿勢を示してるしね。寧ろ、協定がないとスタンピード時の人の往来がかなり面倒になると日本以外の仲の悪い国同士でもどうにかこうにか妥結案を模索していたりするし。
「そう言う職だからとしか言えないにゃあ。でもま、やる価値はあるよ?泥棒は別としてテロリストは声明出してなんぼの集団だしね。」
「そのテロリストもかなり消したがナ。そもそも今のテロリストに勢いはなイ。国防総省の見解ではテロリストに加担する利益がほぼ消失しているとしてあル。」
「えっ!政治的な思想の違いって消失するものですか?」
「違うぞカオリ。政治的な思想の違いは確かに未だにあル。しかシ、人は集まらないし資金力もなイ。それにテロリストが自国ではなく他国に目を向けられると国としても困ル。だからこそどの国も国内の騒乱を避ける為に尽力するシ、煩いフェミニストも死刑は必要だと話ス。今のテロリズムは同一思想の者を政治家にする事だとウィルソンが言っていタ。」
「それって普通に政治活動してるだけなんじゃないですか?」
「違いますね。」
「違いますね松田さん。カオリ、同一思想者が多数当選すると国は麻痺する。それは単純に民主主義が多数決で決まるように国の舵取りはその思想に染まる。そして、その思想が何処かの国を攻撃するものならテロリストとしては目標達成した事になる。テロリズムってなにも人質取って言う事聞け!だけじゃなくて要はその思想を達成すれば目標達成だからね。手段を選ばないならテロリストが政治家になるのが一番早い。」
国を転覆させて政権取るのは確かにテロリズムだが、そのテロリストが数多の人に支持されるなら革命になる。言葉とは難しいものでやってる事は同じでもニュアンスを変えるだけで受け取り方も変わる。まぁ、それよりも高度なメッセージ送信方法があって、それが劇的で且つ特定の誰かしか受け取れないと言うなら選民思想にも繋がる。
特に今は宇宙からの特別メッセージ送信とそれを一部しか受け取れなかったとして、受け取れた人は特別視される傾向もあるだろう。多分インドが動いたのはその辺りもあるんだろうな。
「取り敢えず明日か数日中、アルが捕まったら会談としましょう。それまでの間、コアは保管しておきます。」




