閑話 来訪者 準備中 12 挿絵有り
オラ、ワクワクしてきたってばよ! 月に代わって無駄無駄無駄無駄・・・! 僕には帰れる場所があるだってえるタソ。奇跡も魔法もあるんだっちゃ! 巫女巫女ナースってなんのナース? 立て! 立つんだ・・・、あっ! ジョーが立った。屁の突っ張りは笑えばいいと思うよ。あまり強い言葉を使うなよ、ボク悪いスライムじゃないよ。
ひとりぼっちは寂しいから、お前の物は俺の物。人がゴミの様だけどボールは友達、愛してくれて……ありがとう! 貧乳はステータスだ。俺は長男だから我慢できたけど次男だったら我慢できなかった。我が生涯に一片の訳がわからないよ。あきらめたらそこでお願いしまーす! あぁ、今夜はこんなにも、月が綺麗だ・・・。
「少佐、睡眠は後10時間は許されない。動画の視聴を行い速やかに身分を隠し、音声チャットによるディスカッションを日本語で行いたまえ。相手はギークだ。生半可な知識と言葉では太刀打ち出来ない。失敗した場合は火垂るの墓を視聴してもらう。」
・・・、ダメポ。・・・、はっ! ウィルソンに缶詰にされて何日だったのだろうか? 日本語という言語を、理解しろと言われて文法を習った。英語と違い日本語は主張が後に来る。例を出すならI like studying English.と私は英語の勉強が好きだと言うふうに。成る程と思い勉強をした。余計分からなくなった。私は英語が好きだよ、勉強するのもね。これでも話が通じるし、何なら英語好きなんだよねでも通じる。
頭が痛い、更に痛めたのは和製英語なる発音の違う英語であり、それはなぜかカタカナと言う形で書かれ、何なら英語でlikeと書けばいいものを何故か、そのカタカナでかく。覚えられるか! その上で漢字である・・・。ジュニアハイスクール、中学だったか。そこを卒業までに約2100文字覚えなれけばならなく、一つ一つに2〜3多ければそれ以上の意味ないし、読み方がある。
この時点で私の頭はパンクした。数日間詰め込まれに詰め込めれた日本語というもので、脳がオーバーヒートしそうだ。流石に文書の書き取りと発音練習ばかりでは無理があると判断され、アニメの鑑賞会マラソンなる、さらなる地獄が始まった。当て字とは何だ? 月と書いてライトとなぜ読んで、ソレを誰もが受け入れる?
I LOVE YOUが何で月が綺麗ですねとなる? 愛も何も出ていない・・・。敬称、謙譲語、尊敬語、古めかしい言葉とかマジサイテー、チョベリバって死語? でも、たまに復活する。兄を呼ぶのに12通り、妹達はお姫様らしい。悩んでも考えても分からない言語をなぜ彼らは理解して話せる? 青信号って緑だろ! そんな状況でも、どうにか彼女の話す配信アーカイブを見たが、余計頭が痛い。取り敢えず、考えるのはやめてハンドルネーム『少佐』で音声チャットをしよう。
少佐が入室しました。
少佐「こんにちは。」
ken「Yaaaaaaa!!!!」
seth「hoooooooo!!!!!」
少佐「えーと、何がありました?」
ken「どっち? メスゴリラ?」
seth「ばか! 姉さんは大尉だ! あるなら葛城だろ。」
ken「葛城は三佐だろ? なら、メスゴリラだ!
女の声で少佐yaaaa!!!」
イヤホンから流れてくる野太い男の声が煩い。音声チャットは政府が、人数の少ないルー厶を選んで指定してくる。よくよくメスゴリラ呼ばわりされて、最初の頃は頭にきていたが調べてみると少佐を名乗るキャラクターの愛称? がメスゴリラだった。それになぞられてメスゴリラと呼ばれている。
私は全身機械ではないし、そのキャラクターのように頭は切れない。それでも、少佐のハンドルネームだけで、そう勘違いされ呼ばれている。理不尽だ。しかし、火垂るの墓は避けたい。アレを見ると胸が締め付けられる。節子はなぜ死んだ! 清太が働かないからさ・・・。
少佐「おいギーク共、私をメスゴリラと呼ぶからには
撃ち殺されても文句無いよな?」
seth「おー怖っ、なりきってるね姉さん。
ここには何の話をしに?」
少佐「不本意ながら日本語の勉強だ。オススメの勉強方は?」
ken「アニメ! マンガ! yaaa!!!魔法少女が1番熱い!!
なんたってファーストがいるんだぜ!?
本物の魔法少女! 彼女の為なら心臓を捧げる!」
seth「落ち着け、教材かネイティブを目指すかで変わるが
ネイティブなら、日本人と話せ。俺たちゃ猿真似だ。」
ken「イエローモンキーならぬホワイトモンキーだ!」
少佐「日本人とは話したが、どうも違う。
独特の言い回しが知りたいんだ。」
我が国の言語学者が、彼女の言い回しを検証している。それは、魔法を使う時のモノも含めて。あるだけの音声データを彼女の配信チャンネルから拾い上げ、検証し私達に転用出来ないかと検証しているが、そもそも職の成り立ちからして無理だろう。イマジナリーリアル、空想の現実化が魔法の使用方法だが、説明も日本語なので、そこに行き着くまでに多大な労力が必要だった。
そして、行き着いてからも更に困難はありファイアで火が出ればいい物を、様々な解釈で火を出さなければならないのか・・・。配信の中位2人組は元が同じ魔術師:火なのに、なんでこうも結果が変わるのか・・・。結果として、研究はされるものの、私達は格闘家等の分かりやすい職を選ぶ傾向になった。ガンナーなどいい。銃を撃てばモンスターが死ぬのだ・・・。
ken「なら、小説読め。ラノベとかいいぞ!」
少佐「ラノベ? 何だそれは?」
seth「ライトノベル。平たく言えばティーン向けの
小説だな。文書を読む系のゲームでもいい。」
少佐「それが言い回しに直結すると?」
ken「日本語ってのは生きもんなんだよ少佐殿。
例えば、貴様って言葉は今は、喧嘩する時に
使うけど、昔は貴方様って尊敬言だったんだぜ!」
seth「そうそう、更に知りたきゃ方言・・・
訛を勉強しないとな。地方の言葉だぜ。
昔日本を旅行した時、東京と東北で
言葉が通じなかった・・・。」
ken「あんときゃ楽しかったな! 飯は旨いし命の危険は
ないし人は優しいしよ。取り敢えず、話せば何と
かなるし。」
少佐「・・・、通じるものなのか? 解釈が違ったり
意味が違っても。」
seth「向こうは単語メインで勉強してるから、ゆっくり
単語言えば割と。日本語で話すのも
何となく通じる。」
ken「あれは忍者だぜ・・・。駅って言っただけで
時刻まで教えてくれるし、歩いてて誰にも
ぶつからない。気付いたら避けられてる。」
少佐「分かった、ありがとう。次どこか出会ったら
よろしく頼む。」
ken「おうよ!」
seth「俺はゲートに半分住んでるから、通信出来ればな。」
チャットを終了し一息。ギークと言ったが中々話に収穫はあった。終始日本語での会話だったが、どうにか話している事は理解できた。しかし、ライトノベルか・・・。ファーストはティーンだ。妻はと言っていたが、こちらの解釈では俺の嫁というスラングを使ったモノと思われる。同盟国ながらファースト情報は封鎖され、国防省を通じてからの依頼も蹴られ、一切のプロフィールは伏せられている。
我々が見られるのは配信チャンネルでの彼女だけ。スパイ天国の様な国だが、彼女の周りの情報はほぼ消されている。それは、米軍が調べても同様で接触はおろか正式な依頼にも明確にNOを出した。これについては秋葉原の件が尾を引いている。退避勧告を受けた後、我が国の大使が日本の政治家及び、他の国の大使と連名で警護依頼を出した事に激怒した彼女が、一切の要請を受け付けないと明言した。
そのせいでその場にいた大使達は軒並み職を奪われ、扇動した日本の政治家は辞職したという。しかし、思えばこれは日本の策略だったのではないだろうか? 1人の辞任で彼女という秘密兵器の一切を他国へ漏らさずに済ませるという。無論、その場にいなかった大使達もいるが、ウィルソンの話では下手に突付いて彼女の逆鱗に触れればゲート関連について大きく遅れを取ると、どの国も交渉し倦ねているし、自国のゲートで手一杯なのでファーストの所まで話を持っていけないというのが現状らしい。
なら何故私が講習会に参加しなければならないかというと、同盟国という立場のゴリ押しと、配信に出た中位の存在。秋葉原戦以降、どの国もモンスターに対する危機感をもち、そうでなくとも職に就いた者・・・、日本国命名のスィーパー達は力を持った、世界の警察と呼ばれるからには、それへの対応力も求められる。
「エマ、先程の会話を聞いていたが会話量が少ない。もっと積極的に話すように。」
「黙れウィルソン、これでも話した方だ。ファーストはお喋りなのか!?」
「女性、それも10代なら恋にバイトに男の話をするだろう? ランチでもスイーツでも、何なら彼女はレズビアンの可能性さえある! その方面の話でもいい、なんでもいいから話せ。我々には情報がない。同盟国でさえ、彼女の扱いは正式に決めかねているんだ。」
「はっ! 腰抜け国が。小娘1人抑えつけられないのか。」
「バカか君は・・・。彼女をどうやって抑えつける?」
言われて言葉が返せない。仮に、彼女がモンスターではなく国を攻撃し出したら? 講習会に講師として参加しているのなら、頭のおかしな人物・・・、ではないと思いたい。少なくとも、教育を受けた国の人間が人格破綻者・・・、じゃないといいな。しかし、中位と言う結果は出している。そして、私はそれになる事を求められている。
方法は知らないが、彼女はそれになる為の方法を知っているのだろう。なら、その方法で中位を量産して、世界を相手取ったとしたら・・・? 勝てる要素がない。有るとすれば暗殺だろうが、ファイアーマン、スグルだったか? に銃弾が効くとは思えない。そして、彼女が同じ事が出来たなら・・・?
「軽率だった。姫のようにもてなそう。そもそも、日本側の訓練とは何をしている? 言語もそうだが、なんの下準備もしてない。」
事実としてこれまで、ひたすら日本語を覚えさせられて来たが、それ以外の訓練はしていない。訓練は内容次第では嫌な話だが、置いていかれる可能性もある。それを考えるなら、身体を使った訓練もなにか行わなければならないだろう。ウィルソンはこの話に微妙な顔をしているが、おかしな事は言っていない。
「彼女が最初に指示したのはランニングだ・・・。」
「ランニング? あの姫さんが一緒に走るのか? 少女の足だ、キロ30分とかだろ? 何なら途中で、音を上げたかもな。」
見るからにあの少女に体力はない。白く細く小さくて、病弱そうに見える。おおよそ身体を鍛えているようにも、ましてや荒事をするようにも見えない。そもそもが魔法使い、配信では空を飛び歩いている姿も少ない。なら、そのあたりが関の山。何なら指示だけして、本人は優雅にお茶でもしているのかもしれない。
「先に聞くが、君はゲートを何処まで進んだ?」
「・・・、死にものぐるいで20だ。多くの仲間が死んだ・・・。」
逃げて隠れて、倒せそうなものは倒して・・・。血反吐を吐く仲間を置いて進んでの20階。配信を見るなら彼女は更に1人で15先にいる。何を思ってそこに赴いたのかは知らないが、そこまで今の我が国の戦力で、モンスターを相手にしながら行くとなると、それ相応の犠牲が出る。『退出』この文字がどれだけ救いで、どれだけ希望に満ちたものか・・・。あぁ、成る程退出こう言う事か当て字とは。
「なら、多分問題ない。彼の国の主訓練場は20階だそうだ。」
どれだけの護衛を付けたか、或いは犠牲を出してのそこか・・・。過去に戦い眠った国は、目覚めつつあるのか・・・。私も行けばゲートの肥やしとして使い潰されるのかもしれない。最終的には彼女の出した条件には、身寄りのない者の項目があった。つまりそれは死んでも責任は取らないと言う事だろう・・・。そもそも、私は私自身で応募したわけではなく、大佐が私を選考に載せた。そして、誰も受かると思っていなかった私が受かったからおかしくなった。
今でもたまに嫌味を言われる。忘れたいセカンドと呼ばれ、なぜそのスカーフェイスで受かったのかと罵られ、酷い者は誰と寝て、誰に股を開いたとさえ・・・。殴って黙らせるが、多分これは、これからも付きまとうだろう。私は私の顔が嫌いだ。面倒なのは陰口を叩くものだけではなく、政治に携わるものも面倒で、彼女と寝て連れてこいとも言う始末。そんな事誰が望むのか・・・。
「中位を出すのに捧げた命は如何程か? 私は肥やしになりたくない。死ぬならせめて母国だ。」
「講習会参加者の死亡者は0、最初のランニングに戻るがキロ3分で走って汗1つかかない。他のメンバーはそれより速く走るものもいる。外務省子飼いの人間からの情報らしいが、間違いないそうだ。」
「・・・、魔法少女かな?」
愛と勇気で仲間を助けてスーパーパワーで事を成す。カトゥーンでよく見るそれ。着ている服もそれに近しいものがある。私には愛もスーパーパワーも無いが、そんな頭の痛くなる場所に送られるのか・・・。
「聞いたからには走ってもらう。それと、ライトノベルだったか? それも読んでもらう。マンガもアニメも見てもらう。」
「待てウィルソン! そんな事したら時間が、いくらあっても足りない! いつ休めばいい!?」
「アニメやマンガ、ライトノベルを読む時は動いていない。それが休憩だ。エマ少佐、先に言うが誰もが君を羨んでいる。国外人で初の彼女との邂逅者、大統領ですら成し得なかった事をして訓練に参加出来るんだ。喜ぶといい。」
「彼女は教皇か何かか? いや、彼にはまだ会えるが・・・。そこまでの人物なのか?」
美しいとは思う。庇護欲もそそられる。戦力としても申し分ない。しかし、それまでだ。それ以上のものは彼女から感じない。何故これまで彼女の事を国が気にかけるのか? それがわからない。何処にでもいそう・・・、とは言わないが、それでも元は1人の少女。ほぼ経歴は伏せられているので知らないが、同じ人間で有る事は間違いない。
「・・・、非公式の情報だが彼女はゲートをイジれる。」
「・・・、はぁ!? 何だそれは! そんな事が出来るなら、秋葉原の事なぞ自作自演のペテン師ではないか! それだけじゃ無い! ゲートに散った同胞はただの無駄死にじゃないか! クソビッチめ! 会ったら殴る! 徹底的に殴り倒す! それだけじゃすまん! 八つ裂きだ!」
ウィルソンの言葉が真実ならただの毒婦! 何だ何だ! 子供の遊びじゃ済まされないぞこれは! ゲートをどうやって設定したかじゃない、モンスターが何なのかも関係ない! 何故悪戯に人を攻撃するものを作ったかだ! イジれるなら攻撃性を排除してテーマパークにでもして、そこの城で踏ん反り返ればいいじゃないか! 一体何がしたいんだ! あのビッチは! インカムのコードを引きちぎり、キーボードをスクラップにするが腹の虫はおさまらない! ウィルソンも知っていたなら、何故国防総省として抗議しない!
「落ち着け! 正確には交渉権を有しているだ。日本の外務省内でまことしやかに囁かれている事で、ゲート設置者と彼女は交渉を行って今の形でゲート運用しだした。その設置相手が交渉する人物を彼女と定めた。彼女に当たっても意味はない。寧ろ、彼女に下手に当たれば、交渉そのものを行わない可能性もある。人類として、より良い結果を引き出せるのは、良くも悪くも彼女しかいないんだ。」
未来を小娘に・・・、カートゥーンじゃないか・・・。私は何時から現実からアニメの世界に入ったのだろうか? はっ! 休みなくアニメを見せられたせいで、現実と空想の区別が付かなくなっている? ありえない話ではない。大本を辿れば、私が選ばれるはずのないものに選ばれた事から始まる。なら、これはもしかして夢なのか?
「少佐、悪いが現実逃避はよしてくれ。時間がないんだ。これからアニメを、視聴して走って本を読んでもらう。追加で向こうのティーンに人気の話題も覚えてもらう。」
「・・・、なぁウィルソン。そもそもファーストはティーンなのか?あの国は未成年でタバコが吸える国なのか?」
これで相手がティーンでないなら、多少は話題が変えられる。見た目は10歳くらいだが、あの国の人間は歳を取っても容姿があまり変わらない。美魔女なるものもいると言うし、これで彼女が20代ならティーンの話題を覚えなくて済む。何が悲しくて30代後半の私が、子供の話にあわせなくてはいけないんだ。日米合同演習では、あちらがこちらに合わせていたではないか・・・。
「未成年の喫煙は法律で禁止されている。彼女は国として許可されている。」
「なら、ティーンの話題は覚えなくていいな。寧ろ、酒の銘柄かタバコの銘柄でも覚えた方がマシだ!何ならゲート関連用語でもいい、ソレの方が有効だろう?このクソ野郎!」
ふん!未成年でなければ仕事の話だ。ヘタに下手に出て舐められても困る。相手は小娘で何なら、早く子を儲けていれば私とは子と親程度には離れているだろう。どれだけ偉かろうと会うのが困難な相手だろうと、その事実は変わらない。私は仕事に行くのだ、少女とお茶しながらおしゃべりする訳では無い。
「よろしい、ならコレを暗記してもらおう。仕事の資料だ。」
「し、しげ、・・・しはら?なんと書いてある?」
「資源等目録。彼の国からもたらされた、ファーストが所有するインデックスだ。内容は全て日本語、漢字込みで書かれている。これがゲートから出るものの品目集だ。いちいち現場で開くわけにもいかん。暗記するか、せめて読める様になってくれ。」
差し出されたのは辞書より分厚い紙の束。開いて見れば、目眩のするような量の品目数。コレを暗記ないし読める様になれと?無理だ・・・、表紙で躓いたんだぞ?それの内容を暗記しろと?
「・・・、絶対条件か?」
「いや?君が仕事の話がいいというから提示した。お茶会の話題より君はこちらの方がいいのだろ?」
ウィルソンがニヤニヤしながら私を見ている。イラッとしたので一発殴る。漢字は少しは覚えたが、これは専門書の類だろ!これなら、まだお茶会の話題を覚えた方が楽だ。
「痛いじゃないかマッド・ドッグ。」
「痛くしたんだボーイスカウト。アニメでも漫画でもティーンの話題でもいい、これ以外のモノをだせ。」
「あぁ、いいとも。さしあたって、彼女の着ている服に関する雑誌から持ってこよう。君も着るかい?ゴシックロリータの服を。アチラは君のスリーサイズも知りたいそうだ、何でも服を作るためだとね。」
絶望した!30代後半なのにレースタップリでヒラヒラの服を着て、モンスターと戦わせられる事に絶望した!暗い未来しかないじゃないか・・・。前に見たプリティでキュアキュアなアニメの衣装でも着せられるのか?いや、人形が戦う方か!?それならまだメスゴリラの方がマシじゃないか!?
「服を断る事は?」
「ロリータ少佐、それは無理だ。好意で用意してくれるんだぞ?無理に決まっている。諦めてくれロリータ少佐。・・・、プフッ。」
笑うウィルソンを更に殴る。ロリータ少佐・・・、部下にこんなものが知られれば私は軍を辞める。間違いなく辞めて・・・、帰る場所はない・・・。私の価値はとうの昔にあのトレーラーハウスで傷付き無くなった・・・。他に帰る場所もなく、ここをやめたら・・・、何をしよう?嫌で考えないようにしていたが、この場でそれが頭を過る。逃げ場はなく、逃げた先の軍でまた追い詰められる。私は私の顔が嫌いだ。敵兵ではなく、降って湧いたような天災に私は今も翻弄されている。
「国からの支給品という形で、この薬が君に支給された。飲みたまえ。」
半ば茫然自失のまま渡された薬を呷る。何時もの回復薬とは違う見た目だが、何を支給されたのだろうか?身体は軽くなったような気はするが・・・。
「ふむ、効果は確かか。高い金が払われただけはある。」
「・・・、なんの薬だ?」
「ダインコープに依頼して探させた若返りの薬。約10年は若返るらしい。今の君は確かに20代後半と言っていい。今回参加する講習会のメンバーは一番上でも30代前半。体力面で遅れも取れない、それで頑張って欲しい。」
ウィルソンから鏡を渡されて覗き込むと、確かに皺やシミが消えて肌に張りがある。なんの慰めにもならないが、これで衣装を着ろということか・・・。憂鬱でどこにも行けない私は、老衰さえ遠ざけられた。私は一体これから先、日本で何をさせられるのだろうか・・・。