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街中ダンジョン  作者: フィノ
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60話 休暇終了

遅れました、短いです

「お帰りなさいクロエ。楽しめましたか?」


「お疲れ様です千代田さん。ええ、色々と収穫のある休暇でしたよ。あっ、これはお土産です。」


 空港に降り立つと千代田が待ち構えていた。これと言って連絡はなかったので、東京の方で不測の事態はなかったのだろう。買ってきたお土産を渡しながらそれとなく聞いてみたが、東京の方は平常運転で、俺に大きく関わるものはなかったというか。講習会メンバーについては、明日にでも自身で確かめてくれと言われた。なら、こちらから地方の様子を伝えておこう。


 鋳物師がこちらにいれば、色々事がはかどるがS職に該当しているので、居るかはかなり微妙なラインになる。講習の進捗もそうなのだが、そろそろ生産関係にも着手したいので話し合っておこう。現時点で俺の知る限り、政府はモンスター討伐や出土品の管理には煩いが、生産することに関しては割とおざなりだ。


「千代田さん、これから少し時間はありますか?それと遥が正式に装飾師として、講習会メンバーをサポートしてくれる事になりました。戦闘には出さないので、衣類や装備品関係の裏方ポジションです。」


「よろしくお願いします。」


「こちらこそ、よろしくお願いします。どうしても生産職は、なり手が少ないので助かります。遥さんはこれからどうされます?」


「私は先にホテルへ戻ります。仕事の話なら、私がいない方がスムーズな面もあるでしょうし。」


「分かりました、他のSPに送らせましょう。」


 そう言って千代田が視線を送ると、人混みの中から黒服が現れた。前の時はポンコツだったが、今回は大丈夫だと信じたい。ホテルはいつものホテルと言う事で、遥を見送り千代田の運転で近場の喫茶店へ。アイスコーヒーで一息ついて口を開く。


「地方の管理は政府としてどう動いてますか?中々面白い事になっていましたが。」


「政府・・・、この場合警察と言う方が正しいですが、出来るかぎりの鑑定師を配置して鑑定してもらっているのが現状です。データが集まればそれを元に、ビッグデータベースを作成し、ゆくゆくは鑑定師の個別鑑定数を減らす方向ですが、何分品目が多いので手探り感は否めませんね。」


 馬車馬の様に橘達が鑑定しているが、状況は思わしくないようだ。海外の品は仕方ないとしても、国内だけでも地元に帰った感じ出土品に傾向の様なモノがあったし、奥に進めば新しい品も出る。結局の所、鑑定師の仕事は無くならないのだが、それでもビッグデータプロジェクトが進めばネットである程度の個別判断が出来るようになるので、仕事量は減るだろう。


 あまり使わないが、Googleレンズとかで写真撮って調べられれば、ゲート内でもある程度個人で判定ができるようになる。特に薬関係は命に直結するので、早急にある程度のモノを作ってもらいたい。それなら・・・。


「鋳物師は居ませんか?この職の方がいれば仕事がスムーズになります。居ないなら仕方ありませんが。」


 大村の方にはいたが、東京にいるとは限らない。鑑定師は話を聞く感じだいぶ集まってきているようだが、確率は低いと思うが1人に2つのS職が出た場合、どうしてもメジャーな方に流れてしまう。鑑定師については配信でも橘が選んだし、鋳物師は内容的に強いのだが職人としての技量が求められる職というのを感じた。


「あまり聞かない職ですね。データを調べれば0ではないと思いますが、どのようなものなんです?」


「一応、聞いた限りの内容になりますが。S鋳物師:物品の複製を作ることができる。選択した場合、対象への理解が求められる。と言うものらしいです。材料なんかは武器を複製するなら、武器から、薬は今の所作れないようですね。それと、向こうでこれを貰ってきました。」


 テーブルの上に判定機を置く。形としては携帯式のバーコード読み取り機のような形で、対象に向けてボタン1つ押せば判定してくれる。元の形は三面鏡の化粧台くらいの大きさがあったそうだが、鍛冶師に改造を重ねてもらいこの形になったとか。他の判定機とデータ共有されているので、鋳物師がどんどん複製してくれるなら、かなり助かる。ただ、制作コストは秘密にされたので、それ相応にコストのかかるものなのだろう。貰いはしたが、流石にただでは悪いので、金貨と良さそうな薬を数本渡しておいた。


「これは見ないものですが、なんなんです?」


「判定機と言います。私の実家に帰った時に見つけました。向こうではコレを使って鑑定を簡略化して、既にビジネスモデルが確立されつつある。東京と地方では見ているものが違うので、様々な県のゲート運用法を調べるのもありだと思いますよ?」


「そんな事が・・・、どうしても東京では秋葉原の件以降、モンスターに対する戦力強化が頻りに叫ばれて、その辺りは遅れがちになっている。私は政治家ではないですが、いうなればこれは、一極集中からの脱去ですね・・・。」


 東京は首都ではあるし、国内で一番発展はしている。しかし、それが全てというわけではない。仮に、どこかの県が独立なんて叫びだしたら、それを止めるすべがない。戦国時代ではないが、ゲートがあれば食料も武器も果ては資源さえも揃う。そうなってくると、何で国に税を納めなきゃならないんだ?という輩も出てくる訳で、そこに対する切り札は・・・、保険としての戦力しか思いつかない。


 究極的に言ってスタンピードを自分の所で対処出来るなら、国に頼らないと言う選択肢が出てくる。しかし、その選択肢を取りづらくしているのが、あの地で戦った英雄達。誰も内戦なんて望んでいない。誰もあの地の二の舞いなんて望んでいない。その為に俺達は鍛えて手綱を握れるようにしているのだし。うぅむ、なんか考え方が政治家染みてきたような・・・。


「クロエ、この判定機はお借りしても?」


「お土産にあげますよ。橘さんもそろそろフラストレーションが爆発しそうでしょう?S鋳物師。コレに該当する方を早急に見つけて鍛冶師、装飾師達とチームが作れれば、生産関係はかなり潤います。」


「分かりました、早急に手を回しましょう。そうそう、近いうちに4者会談というものが開かれるので、準備しておいてください。」


 コーヒーを飲んでいると、千代田がサラッと言ったが4者会談?取り敢えず、1人は俺として後の3者とは?一応想像はつくが、間違いなく面倒な事になるよな・・・。そもそも何に対しての会談なのか、今までは誰も会ってくれなかったが、それが漸く動き出したと思って間違いないだろう。きっかけは多分、職を開示した事。前に精神乗っ取りやら洗脳何かを疑われたが、休暇前に職が賢者で有る事を開示した為に会う気になったのだろう。


 個人的には政府の1機関ないし省庁とかでいいのだが、そうなると何処までを公務員として認めるのか、保証や福利厚生は?何ていう質問が飛んできそうだ。そして、準備というのは身の振り方を考えておけと言う事だろう。あまり遜るといいように使われるし、要求し過ぎでも連携が取りづらくなる。


 そうなるとある程度の構想は浮かぶが、ただのサラリーマンにそれを決定させるというのは、中々に酷なのではないだろうか?下手をすれば、その場の発言そのまま揚げ足取りのように扱われる可能性もある。一度タヌキとキツネをやった事もあるし・・・。そうなると、そういう方面に長けた味方が欲しいなぁ・・・。


「一応聞きますが、千代田さんはどの立ち位置で、その会談を聞きますか?」


 そう聞くと千代田は掛けていた眼鏡を外して拭きながら、俺の方を見据える。あの眼鏡は伊達か本物か、以前服をねだった時はかなり動揺していたので、本物なら視覚を自ら封じた形だろう。普通に交渉するなら、相手の表情が見えないというのは悪い材料にしかならないが、俺と交渉する場合魔女による魔性の女が有るので、これは有効なのかもしれない。


「私は今回の会談は完全防音個室に一堂に会しての秘密会談。要は、概要決めです。どの方面も貴女の身柄と利権は欲しい。ゲートは言わば金のなる木ですからね。その出土品や扱い、組織としての管理運営権があれば、どこの組織も欲しがる。」


「それは政府をトップとしての組織では駄目なんですかねぇ?」


 言ってみたものの、駄目だよなぁ・・・。話し合う前からそこに決定してしまうと、莫大な権利を持った組織がポッと出て、戦力や人員が足りないと他の組織を顎で使う。これがコンピューターなら、効率を重視するので、前や後、誰と誰が仲がいいとかは加味しない。淡々と仕事をこなしてくれる。


 しかし、人の組織というのは大なり小なり(しがらみ)がある。小さい所で言えば、誰と誰が仲が悪いとか、あの人仕事サボってるんじゃない?とか。面倒この上ないが、しかし、人と人が仕事するなら必ずそういったものは出てくる。人は他人を完全に理解する事は出来ないのだから・・・。


 なら、どう立ち回るのがいいか?賢者に聞いてもゲート関連は教えてくれるが、それ以外の事は興味がないので適当にすれば?とか、面倒なら全部抑えつけて従わせればいいじゃない?しか言わないしな・・・。良くも悪くも職は本人が思えばどこでも使える。それは、意識的、無意識的どちらでも。だからこそ、暴発は怖いし職に慣れなければいけないという側面もある。


 賢者の言い分は確かに全てを否定する事は出来ないが、それをしてしまうとハンニバル将軍まっしぐら。一番いいのは政府機関で、警察組織のような権限があって、自衛隊のサポートを受けられるような組織がいいな・・・。身体の切り売りならぬ利権の切り売りを視野に入れて考えるか。


「分かっているのでしょう?会談無しでは誰も納得しないと。」


「・・・、まぁ。胃がなくとも痛みますよ。」


「まあ、ある程度方向が決まれば、後の法律関係は専門家がどうにかしてくれるでしょう。」


「そう願います。」


 話は終了し千代田にホテルまで送ってもらう。車内でこちらに来る予定のエマさんの事を聞いたら、どうも、語学力が低かった為に向こうで缶詰になっているらしい。どこの政府も人を缶詰にするのが流行っているのだろうか?あまり褒められた事ではないと思うのだが・・・。そんな事を思いながら外を眺めていると、車はホテルに着き千代田と別れる。


「ただいま〜。」


「お帰りなさい。」


「おろ、カオリは?」


「望田さんなら明日の買い出し行くって、入れ替わりに出て行ったよ。」


 部屋に入ると遥が出迎えてくれた。てっきり望田がいるものと思ってお土産を出したが、居ないなら仕方ない。机の上に置いて室内では煙たくなるので、喫煙所へ行って一服。倒れた後は流れで休暇に入ったが、ある程度身体の事を話さないといけない・・・。さて、何処までの範囲で話したものか。


 魔女の事は話さない方向性でいいだろう。俺でもまだ分からない部分があるのだし、本人?が必要な時には話すだろう。賢者に付いては職として開示したので、そこから話をまとめていこう。しかし、何ができるといえば取り敢えず魔法が上手く使える以外の説明しようがない。


 本人曰く魔法を定めた者。確かにゲームと違って快適に魔法は使えている。やれ属性だの魔力値などは言ってこない。代わりにイメージ力は求められるが、それで何かが減ったような感覚はない。仮に魔力なんてものが減るなら、卓や宮藤はバテ上がるだろうし、他の面子も体力面以外の部分で疲れが出る。


 しかし、そんな話は聞いていない。主軸として話すなら魔法が上手く使えて、それなりに頭が良くなったくらいでいいのかな?身体については魔法で常時回復状態で、倒れた原因はガーディアンを縛った魔法が、思った以上に強力で反動を貰って気分が悪くなったとか?幸いな事にあの場面で俺は倒れこそすれ、手足が無くなったりはしていない。心音が無い事については・・・、流石に心停止したでは信じてくれないだろうな・・・。


「おっ!ツカサ、ここにいたんですか。」


「どうやら行き違いになったらしいね。帰ってきてからの一服だよ。休暇はどうだった?」


 喫煙所で望田と会ったので、考えるのは一旦保留して部屋に戻る。途中で遥の事を話すと喜んでくれた。やはり刻印と衣類は大事で、休暇中何度かゲートに入ったがインナーの洗い替えと、刻印による守りが欲しいとの事。両方とも遥頼みになるので、親としては心苦しいが娘の決断には助けられた。


 そのうち糸も大量に紡いでインナーだけではなく、服にもしたいな。休暇前に全員20階層に到達出来たので、ここいらで資源採取方面を鍛えてもいいかも知れない。20階層を超えるとミミックみたいなモンスターや、空から強襲してくるヤツも居るので見分け方や、やり過ごし方なんてのも勉強してもらおう。


 個人的には空からのモンスターが嫌いだが、普通にやるならファンネル。地形の方が厄介だろうな。追跡者辺りなら発見で対応できそうだが、感知系の能力が無いと初見殺しも良いところだ。20階層以降はパーティー力が試されるのだろう。


「そう言えば、浴衣って持ってきました?こっちでもお祭りあるんですけど。」


「あれは家に置いてきたよ。元々は遥のだしね。しかし、こっちのお祭りって何かあったかな?」


「駐屯地祭りがあるそうです。無いなら浴衣買いましょう。莉菜さんからの写真は宝物にします。」


 駐屯地祭りかぁ、所属してた時は焼きそばとか作ったな。後は戦車の試乗体験とか?向こうとこっちでは規模が違うだろうし、見て回れるなら行きたいな。隠れるのはだいぶ上手くなったし。浴衣は買うか遥に言えばどうにかなるかも。


「宝物は別として、浴衣は一度遥に話してみるよ。」


「遥さんは浴衣も作れるんですね。流石ファッションデザイナー志望。試される服ですが、あると無いとじゃ大違いですからね。そう言えば、いいシューズショップ見つけましたよ。」


「ほう、どんな?」


 部屋について遥と合流して、ルー厶サービスで適当に腹拵えしながらシューズショップの話を聞く。どうやら企業に属した鍛冶師と装飾師がタッグを組んで作ったシューズらしく、デザインよりも実戦に重点を置いたものらしい。望田が持っていたチラシを見ると、普通の靴に見えるが鍛冶師が改造し、装飾師が刻印と固定処理を施した一品らしい。買う前に鍛冶師が最終調整した後固定処理するので、ほぼオーダーメイドになるらしい。


 しかし、足元が悪い所を歩くので靴は欲しいな。明日は休暇明けなのでぼちぼち身体を慣らすのと、20階層以降の知識をおさらいする時間にあてようかと思っているので、帰る時間はある程度予測が出来る。刻印と固定処理は遥が出来るので、最悪改造だけしてもらっても構わない。買う靴を考えると・・・、編み上げブーツかな。


「お父さん、そのお店行ってみたい。」


「明日帰りにでも行こうか。カオリは大丈夫?予定があるなら2人で行くけど。」


「私も試しで一足買って使い心地が良かったので、もう一足買おうかと思ってたんで行きますよ。場所は世田谷ゲート付近ですね。」


 そんな話をしながら休暇中の話に花を咲かせ、チビチビお酒を飲んで就寝。明くる日、目黒駐屯地に受講者が一堂に会して、話に花を咲かせている。


「赤峰さん、井口さんとは?」


「おう!楽しかったぜ、飲んで食べて遊んでよ。」


「雄二くん、この前はありがとう。」


「清水さんいいっすよ。またお願いします。」


「宮藤さん、やっぱり灰の扱いはわからないですよ。」


「方向性ですね、一緒に試しましたがこれから先交わることはないでしょう。」


 欠けたメンバーはいない。さて、何から話そうかな。


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[気になる点] 「一応聞きますが、千代田さんはどの立ち位置で、その会談を聞きますか?」 〜中略〜 「【私は】今回の会談は完全防音個室に一同に介しての秘密会談。要は、概要決めです。どの方面も貴女の身…
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